ヨーロッパのバカンスから北欧のフィーカまで。世界のやすみ方を学ぶ

ヨーロッパのバカンスから北欧のフィーカまで。世界のやすみ方を学ぶ

バカンス法、つながらない権利、フィーカ、ネウボラって?

2019年7・8月 特集:やすみやすみ、やろう
テキスト・撮影:羽佐田瑶子 編集:竹中万季
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やすむことを忘れてしまうことが、よくある。感受性を擦り切れるまで使うと、身体と頭がどうなってしまうかわかっているはずなのに、野心なのか、恐怖心なのか、To doリストに書き連ねた現実と、やりたいことリストに書かれた夢との狭間でタスクの呪縛にしばられて、自分を限界まで追い込んでしまう。

かつて、わたしは「1日36時間生きている」と友人に言われていた。取材をし、アイドルライブに行き、映画を観て、原稿を書き、美味しいごはんを食べる。朝は遅く、深夜0時を過ぎてもPCの前にかぶりついていた。仕事と趣味の境目が曖昧だから余計にやすみなく過ごせてしまい、土日やすみもほぼなかった。精神的には、やすみを必要と感じていなかったのかもしれない。だが、働き過ぎたツケが回ってきたのだろう。出産の2か月前に「切迫早産」(お腹の子どもが早めに生まれてくる可能性がある状態のこと)という診断を受け、急遽安静を強いられた。トイレと食事以外起き上がってはダメ。当然仕事にも行けなくなり、突然強制的に休暇があたえられた。

当時は出産への不安で泣いてばかりだったが、今思えば後にも先にもないあんなに長いおやすみは、お腹の子がくれたプレゼントだったと思う。読みたかった本を枕元に積み上げ、動画配信で映画を観まくり、子どものおもちゃを編み、ボーッとする毎日。身体は資本だと言うが、まさにそうだと痛感した。そして、やすめたことでやりたかったことを思い出し、心と身体が整い、そうして自分の中に余白が生まれ、子どものことやこれからの自分、家族のことを明るく考えられた。かつて、「何もしない時間=悪」ととらえていたが、やすむことでわたしがリセットされ、心身ともに明るく豊かになることを知った。

しかし、今は日々の育児やら保活やらに追われ、仕事もスタートし、パンパンの毎日が始まる予感がしている。育児と仕事の両立なんてできるのだろうか、と復職にも不安が募る。日本は世界の中でも有給取得率最下位で、年間の平均労働時間も長く、育児休業制度も他の国と比べると手厚いわけではない。勤勉な日本人は、やすむ意志を持たない限りリセットする時間が得られないように思うのだ。

人間らしく生きるために、世界各国ではどのようなやすみ方があるのだろうかと、今回調べる機会をもらったので紹介したい。

「バカンス法」と「つながらない権利」で、長いやすみを謳歌する

産休・育休での大きな気づきは「空っぽになる幸福」だ。赤ちゃんと一緒にお昼寝をする。ゆっくりお散歩をする。休息を挟むことで自分に余白ができ、心と身体に元気を取り戻すことができる。

長期バカンスをとることで知られるヨーロッパの人たち。フランスでは「バカンス法」というやすみに関する法律があり、1年で5週間の有給が付与され、多くの人が夏に2週間以上まとまったやすみをとるそうだ(※1)。バカンスではリゾート地へ旅行する人もいれば、自宅で過ごす人も。ベランダで本を読む、クーラーではなくプールで涼をとる、海沿いで瞑想やランニング、食べることが好きな国民性から何を食べるかを基準にやすみを楽しむ人も多いそう。お手製のコース料理で、昼間からワインで乾杯する家族も多いそうで、想像するだけで幸福が満たされる。

『海辺のポーリーヌ』(監督:エリック・ロメール)
南仏の避暑地・ノルマンディーで過ごすひと夏を描いた物語。太陽、海、ナンパな恋にモンサンミッシェルと仏のバカンスを詰め込んだ映画。人も恋もほどよくダラけていて、お昼寝したくなる。

イタリアではお金をかけずにやすみを謳歌する人が多く、ランチは海にお弁当を持参、夜はお散歩を楽しむ人が多いと聞いた。わたしも、子どもが生まれてから散歩が好きになった。目的なく街を散策し花や草を眺めて、家から持ってきたお茶をベンチで飲む。天気がいい日はお弁当でピクニックをしたり、子どもに話しかけるフリをして歌を歌って歩いたり。自然の光を浴びると、身体中に安らぎが充満し、正常な人間に戻っていく心地がするから自分に「余白」をつくるには最適なやすみ方かもしれない。

『君の名前で僕を呼んで』(監督:ルカ・グァダニーノ)
北イタリアの避暑地で家族と過ごす夏を描いた作品。自転車で街を散策し、湖で泳ぎ、お庭で食事をし、なんでもない時間がこれほど贅沢で美しいものかと気づく。余白たっぷりで、音楽も心地よい。

バカンスをとるためには、仕事の調整も必要だ。フランスやオランダ、イギリスなどのバカンス大国では、一年のはじまりに部署内で「年間休暇予定」を決めることが多いそう(※2)。同僚とやすみを被らないように調整し、休暇中は互いに仕事を補い合う。やすみを早めに決めれば、直前になって「結局上司と希望が被ってやすみがとれなかった……」なんていう悲しいことは起きないし、早めの旅行予約でお得なプランも狙える。

懸念事項は、携帯電話という文明が生んだやすめない恐怖。フランスやイタリアでは、勤務時間以外の仕事のメールや電話などへの対応を拒否できる「つながらない権利」というものが法律で定められているほか、ドイツではやすみ中に受診したメールが自動削除されるシステムを導入する企業が増えているそう(!)(※3)うっかりメールを見てしまうこともなく、またメールを見なかった責任感を背負うこともなく、この時代に生まれなきゃよかったなんて思うこともなさそうだ。

PROFILE

羽佐田瑶子
羽佐田瑶子

1987年生まれのライター。女性アイドルや映画などガールズカルチャーを中心に、インタビュー、コラムを執筆。主な媒体はShe is、Quick Japan、テレビブロスなど。映画『21世紀の女の子』パンフレット編集。岡崎京子とグザヴィエ・ドラン、ハロープロジェクトなどロマンティックで力強いカルチャーや人が好きです。2019年、2月に出産。「親」についてのZINEを目論み中。

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