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ヨーロッパのバカンスから北欧のフィーカまで。世界のやすみ方を学ぶ

ヨーロッパのバカンスから北欧のフィーカまで。世界のやすみ方を学ぶ

バカンス法、つながらない権利、フィーカ、ネウボラって?

2019年7・8月 特集:やすみやすみ、やろう
テキスト・撮影:羽佐田瑶子 編集:竹中万季
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運動したり、お茶をしたり。普段の仕事の合間にも、積極的なやすみ時間を

普段の仕事の合間も積極的にやすみをとって、日々たおやかに生きたい。ヨーロッパ一の経済大国であり、有給消化率が100%に近いドイツでは労働時間法により勤務時間が1日最長10時間まで(残業込み)という決まりがある(※4)。しかも、10時間を超えると「退社しなさい」とPCに警告が出てシャットダウンまでされる会社もあるそう。制限時間があると仕事がはかどるのは、自分自身も夜にライブの予定が入っている日に経験済みなのでぜひ実践したい。

オランダでは「フレキシブル・ワーク法」という法律があり、勤務時間や勤務場所を自由に選べる、柔軟なワークスタイルが認められている(※5)。多くの企業が「週休3日制」を取り入れており、在宅ワークをする人も多く、テレビ会議も積極的に行われている。また、残業や休日出勤など所定外の時間を貯蓄して有給休暇に変更できる「労働時間貯蓄制度」なるものもあるため、働きたい時にガツンと働き、まとめてやすみをとれればインプットの時間も確保できそうだ(※6)

働き方のルールのひとつとして取り入れたいのが、スウェーデンの有名な休息時間「フィーカ」。就業中にお菓子とコーヒーで、おしゃべりをしながらひと息つく時間のことで、スウェーデンでは10時と15時に設定されることが多い。最近おもしろかったもの、わくわくしたことについておしゃべりしながら、甘いお菓子と美味しい飲み物でお腹を満たせば、新たなときめくアイディアがうまれそうだ。また、スウェーデンでは「定期的な休憩と定期的な運動」が推奨され、約70%の社会人が日常的な運動を心がけている(※7)。運動に関する制度が整っている会社も多く、ある企業は「たくさんの時間を自然の中で過ごせれば、より強く、幸せになれる」と提唱し、週3時間以上ジムに通うと有給が1週間延びる制度を設けているそう(※8)

『歓びを歌にのせて』(監督:ケイ・ポラック)
天才指揮者として活躍した主人公が病をきっかけに故郷スウェーデンへ。地元のコーラス隊の指導はうまくいかないこともあるけれど、練習場に並べられた手作りの焼き菓子とフィーカの時間で心を落ち着かせるシーンが印象的。映画を題材にお菓子を創作するcinecaさんに教えてもらいました。

お母さんにやさしい国、フィンランドの子どもだけでなく家族全体の健康をサポートする「ネウボラ」って?

いま、わたしが一番気になるのは子育てに関するやすみ方だ。本当は産後1か月で仕事に復帰する予定だったが、育児に忙しく、子どもがあまりにも可愛いこともあり、緩やかに仕事をし始めることにした。育児は想像を絶する忙しさで、自分の時間なんてほぼ確保できない。子どもが寝ている間に紅茶片手に本を読み、共にうとうと昼寝をする麗しい日々を想像していたが、全くもって違う。実際は、子どもが寝ている間には料理・掃除をはじめとしたすべての家事を終え、保活をし、離乳食をつくり、睡眠不足と抱っこと授乳で奪われた体力をチャージしたいのに、泣くわが子をまた抱っこ。貧血が悪化し、夜は3時間ごとに起こされるため慢性的な睡眠不足。子どもが可愛い、という事実だけがわたしを救ってくれる。こんなにも時間が足りないからこそ、夫にも育児をしてほしい気持ちが募る。日本でも男性の育休について叫ばれているが、どんなに夫に理解があっても会社に制度がないため、結局わたしの夫は育休がとれなかった。あの時ほど悲しいことはなかった。

「お母さんにやさしい国」として有名なフィンランドでは、育児制度が大充実。女性は産休に入った日から合計約4か月分の「母親手当」が支給されて、54日間手当が支給される「父親休業」取得率は約80%! また、「ネウボラ」という、子どもが妊娠から就学までのあいだ担当の保健師が家族全体の健康を支える施設があり、検診も非常に丁寧。未知のことばかりの出産・育児で心も体も助けてくれる存在は偉大だ。また、今すぐ引っ越したくなってしまうほど精神的ストレスである保活も不要。フィンランドでは保育の場所を24時間確保する義務が法律で定められているため、保育園が充実しているのだ(※9)

『サウナのあるところ』(監督:ヨーナス・バリヘル)
フィンランドは人口約550万人に対して約300万個のサウナがあり、痩せるためでなく、心も清める憩いの場として愛されているそう。裸の付き合いだからこそ話せることがあるのかも? 子育てに悩む母親たちも、サウナで不安や悩みを吐露し、日常的に井戸端会議を行っている様子が垣間見える。

大事なものを履き違えないように、積極的にやすむ意志を持とう

わたしも育休を通してやすむよろこびを知った。朝6時に起きて、光が射し込むレースのカーテンに子どもと一緒に身を包み風と遊び、ゆっくり散歩をしてお茶を飲み、子どもと遊び、リセットするために眠る前に日記を書き、22時にはベッドに入って本を読んだりボーッとする。産前とは真逆の生活。

育児は大変ではあるが、赤ちゃんのペースに合わせるとゆっくりとした時間の流れや、太陽の光と夜の静けさを身体中で感じる。そうすると日常にはこんなにも美しいものが溢れていて、立ち止まらなければ知らなかったことの多さに驚く。そして、この余白のある日々を忘れたくないと思う。リセットする時間があることで、母でもライターでもない、わたしに戻してくれるように思うのだ。

「less is more」という言葉がある。もっと知りたい、もっとやりたいと思うけれど、多くを求めすぎることで身体や精神は限界を迎えてしまう。壊れてからでは、もう遅い。大事なものを履き違えないように、積極的にやすむ意志を持とう。そしてまた、笑いながら働こう。心を癒やす暮らし方は、自由と豊かさを与えてくれるはずだから。

※1:フランスのバカンス法について
※2:年間休暇予定について
※3:つながらない権利について
※4:ドイツの勤務時間のルールについて
※5:オランダのフレキシブル・ワーク法について
※6:労働時間貯蓄制度について
※7:スウェーデンの定期的な休憩と定期的な運動について
※8:ジムに通うと有給が1時間延びる制度について
※9:フィンランドのネウボラ、保育の場所を24時間確保する義務について

PROFILE

羽佐田瑶子
羽佐田瑶子

1987年生まれのライター。女性アイドルや映画などガールズカルチャーを中心に、インタビュー、コラムを執筆。主な媒体はShe is、Quick Japan、テレビブロスなど。映画『21世紀の女の子』パンフレット編集。岡崎京子とグザヴィエ・ドラン、ハロープロジェクトなどロマンティックで力強いカルチャーや人が好きです。2019年、2月に出産。「親」についてのZINEを目論み中。

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