政治1年生のための社会運動。長田杏奈&かん(劇団雌猫)が社会学者に取材

政治1年生のための社会運動。長田杏奈&かん(劇団雌猫)が社会学者に取材

香港、気候変動、#KuToo。デモと自分の距離を考える

2020年1・2月 特集:これからのルール
インタビュー・テキスト:かん 撮影:疋田千里 イラスト:鈴木衣津子 編集:守屋佳奈子、野村由芽 撮影協力:トラットリア アマルフィターナ
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社会運動ってちょっと怖い? 社会学者に声を上げるコツを聞きました

趣味とか仕事とか忙しいし、できれば政治はプロにお任せしたい。でも、税や法に不満や不安が募ったり、日々の暮らしの雲行きまで怪しくなったときはどうすればいいの? 前回の取材で、「黙っていてもエライ人の思うツボ。社会を変えるには、騒ぐことが大事」と学んだあんな&かん。これまで大人しく生きてきた私たちが、危険な目に合わずに効率よく主張を聞き入れてもらうにはどうすればいいの? 騒ぎ方のプロ……すなわち「社会運動」の研究者である富永京子先生に、教えてもらいました。

<前回までのおさらいはこちら>
政治音痴のための7.21参院選 長田杏奈&かん(劇団雌猫)が緊急取材
政治1年生のための消費税。長田杏奈&かん(劇団雌猫)が経済学者に取材

教えてくれるのは

「社会運動、研究するけど参加はしない」
富永京子(とみなが きょうこ)

富永京子
1986年生まれ。日本学術振興会特別研究員などを経て、現在、立命館大学産業社会学部准教授。社会学的視角から、人々の生活における政治的側面、社会運動・政治活動の文化的側面を捉える。著書に『社会運動のサブカルチャー化』(せりか書房)、『みんなの「わがまま」入門』(左右社)など。

教わったのは

「とにかく痛いこと危ないこと怖いことを避けて生きたい」
かん

かん
1989年、兵庫県生まれ。書籍『浪費図鑑』等を制作するオタク女子4人組「劇団雌猫」メンバー。新刊は『誰になんと言われようと、これが私の恋愛です』(双葉社)。K-POPアイドルSEVENTEENのジョシュアと宝塚歌劇団の芹香斗亜を応援中。デモには怖いイメージがあるが、署名やクラウドファンディングにはあまり抵抗がない。現地に赴かずに出来ることがあるならたくさん協力したいと思っている。

「去年初めてデモに参加した社会運動1年生」
長田杏奈(おさだ あんな)

長田杏奈
1977年、神奈川県生まれ。ライター。昨年の3月に性暴力に反対する「フラワーデモ」に参加して以来、手帳にデモの日を書き込むのが習慣に。「このままじゃイヤ!」と思ったことに対して声をあげれば、仲間が見つかり現実を変えるためのヒントが見つかると学んだ。著書に『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)。

<もくじ>
p1.自分の主張は通したいけど、騒ぐのは危ないんじゃ……?
p2.社会運動の「危険度」と「効果」は比例するの?
p3.そもそもデモって意味あるの?
p4.社会運動、どうなったら成功?
p5.いちばん気楽な騒ぎ方を知りたい!

自分の主張は通したいけど、騒ぐのは危ないんじゃ……?

あんな:前回まつお先生に「消費税増税を止めるには騒ぐのが大事」と教えてもらったよね。でも、実際問題、どうやって騒げばいいのか教えてもらいたい! 税に限らず、私は騒いで変えたいことたくさんあるよ~! かんちゃんは?

かん:まだひよっこで「これが私の一番騒ぎたいこと!」というのはないんですけど、同性婚なんかはさっさと認めろよって思いますね。

あんな:わかるわ~。そんなわけで今日は、社会運動の研究者のとみなが先生に、主張を通すための「騒ぎ方」を教えてもらうよ。先生は、どんなきっかけで社会運動に興味を持ったんですか?

とみなが:いちばん古い記憶は小学生のころ。ゲームでよく遊んでいたんですけど、新品のゲームソフトは子どもからすると値段が高いから中古ソフト屋さんで買っていたんです。

私みたいな消費者が多かったためか、当時から中古ゲームソフトマーケットは相当大きかったのですが、それではメーカーに利益が入らないということで、ある日メーカーから中古ソフト販売に圧力がかかり、メーカー側と販売店側で裁判になったのです。

でもお金がない小学生は中古ソフトを買えないと困るので……。「何かしよう」と署名を集めたり、裁判の何が争点なのかを調べて夏休みの自由研究にしたんです(笑)。無論、その時はそれが「社会運動」だなんて思ってなかったですが。

かん:すごい子ども時代……!

とみなが:ちゃんと関心をもったのは、2008年ごろ。大学時代に北海道洞爺湖でG8(2019年時点ではG7)サミットが開催されることになって、それに反対する抗議行動が活発に行われていたのを見たんです。中古ゲームの販売ならともかく、世界的なサミットの開催を中止させるなんてできないだろ!と思ったんですが、それでも一見、実現が難しそうなことに多大なリソースを費やす人たちにすごく関心を持ちました。

かん:専門家の前で言うのがはばかられるのですが、私はG8サミット反対運動の時もニュースを見て漠然と「怖いなあ」と思ったりしていて……。社会運動は危ない、怖いものという刷り込みがすごくあるんです。

とみなが:おとなしくやってると主張を聞いてもらえないし、行き過ぎると外からは入りづらくて、どこか「カルト」っぽく思われることもあるし、加減がすごく難しいんですよね。

あんな:デモへの参加に抵抗感があるという声はよく聞くね~。

とみなが:実際日本のデモ参加率はとても低くて、デモに行ったことがある人は人口のわずか8.3%と言われています(朝岡誠著「誰がデモに参加するのか?」)。でも先日ドイツの大学で講義したときに「これまでにデモに参加したことがある人~」と質問をしてみたら、なんと半分くらいが手をあげたんです。デモを怖いものだとは思っていないし、社会運動に参加していることを隠したほうがいいという認識もない。

かん:そんなに感覚が違うんだ。教育の問題?

とみなが:自分の意見を言うのは自然なことだ、という前提が共有されているんだと思います。一方、日本で以前行った調査によると、13.5%の人々が「デモや座り込みが違法だ」と考えていました。(*1)
*1……シノドス国際社会動向研究所「生活と意識に関する調査」N=1000、インターネット経由でのリサーチパネル調査、年齢・性別・居住地域による割当法によるサンプリング。年齢は20-69歳

あんな:犯罪だと思ってる人がいるのか……。大切な権利なのにね。最近世界的に話題になっている香港のデモ(*2)の報道を見ていると、日本だったらあそこまで抵抗できないかもしれないな、と思う。
*2……2019年の香港政府による逃亡犯条例改正案の提出を受け、改正案に対する反対運動が勃発。現在も香港政府や香港警察を相手にとった市民によるデモ活動が継続して行われている

とみなが:それは政治課題の切迫感の問題もありますね。たとえば私が今住んでいるオーストリアだと、スウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリさんの活躍で話題になった「Fridays for Future」(*3)に参加している若い人も大勢いて、彼らに聞いてみるとやっぱり体感として夏が暑かったり、冬に雪が降らないという点から、気候変動を実感して参加したという人が少なくない。飛行機になるべく乗らないなど、環境問題への取り組みにも熱心なことに驚きました。
*3……気候変動対策を訴える学生たちによるストライキ

あんな:環境系のNGOが「気候変動で最悪の被害を受けたのは日本」って発表していた(NHK NEWS WEB/異常気象 豪雨や猛暑の日本が世界で最悪の被害 独の環境NGO)けど、あんまりニュースになってなかったよね。去年の台風の被害とか見ると、オーストリアよりヤバいかもしれないのに。

かん:切迫感かあ。それでいうと、私だって毎日考えちゃうくらい不安なことや、どうにかして欲しいことはあるんですよ。育休を取った後の復職が不安すぎて子ども産む気になれないとか、年金もらえるの? とか言いはじめればキリがないくらい! でも怖いってイメージが先行しちゃってどうも社会運動やるぞ~みたいなテンションにはなれず、ここまで来ちゃったんですよね。

あんな:社会運動という「放っておくとヤバそうな問題について騒ぐ権利」、上手に活用したいよね。怖くないよ~、権利だよ~。

かん:ぼんやり持ってる恐怖感、今日払拭して帰るぞ!

<ポイント>
Q.「困ってることや不安なことはたくさんあるけど、社会運動ってなんか怖くて踏み出せない」(かん)
A.「社会運動は権利。声をあげなきゃ世の中は変わらない」(あんな)
日本は"社会運動に怖いイメージを持つ人"が特に多い国。他国と比べても、デモ参加率が低い」(とみなが)

PROFILE

長田杏奈
長田杏奈

1977年、神奈川県生まれ。ライター。昨年の3月に性暴力に反対する「フラワーデモ」に参加して以来、手帳にデモの日を書き込むのが習慣に。「このままじゃイヤ!」と思ったことに対して声をあげれば、仲間が見つかり現実を変えるためのヒントが見つかると学んだ。著書に『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)。

かん

1989年、兵庫県生まれ。書籍『浪費図鑑』等を制作するオタク女子4人組「劇団雌猫」メンバー。新刊は『誰になんと言われようと、これが私の恋愛です』(双葉社)。K-POPアイドルSEVENTEENのジョシュアと宝塚歌劇団の芹香斗亜を応援中。デモには怖いイメージがあるが、署名やクラウドファンディングにはあまり抵抗がない。現地に赴かずに出来ることがあるならたくさん協力したいと思っている。

富永京子

1986年生まれ。日本学術振興会特別研究員などを経て、現在、立命館大学産業社会学部准教授。社会学的視角から、人々の生活における政治的側面、社会運動・政治活動の文化的側面を捉える。著書に『社会運動のサブカルチャー化』(せりか書房)、『みんなの「わがまま」入門』(左右社)など。

INFORMATION

書籍情報
『社会運動のサブカルチャー化』

著者:富永京子
2016年10月発売
価格:5,170円(税込)
発行:せりか書房
Amazon

書籍情報
『みんなの「わがまま」入門』

著者:富永京子
2019年4月30日(火)発売
価格:1,925円(税込)
発行:左右社
Amazon

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  • ゆりちゃん
    とっても勉強になりました!

    私自身最近は生理用品の非課税や環境問題に関心を持ち始め、水筒を使い始めたり、繰り返し使えるタンポンのアプリケーターを取り寄せたりしていたのですが、他にどんなことをすればいいのかわからず、でもデモや社会運動は怖いしな...ともやもやしていました。

    自分の身近な生活の中に社会活動できる機会を見つけ、少しずつ自分のペースで参加していきたいと思います!

    クラウドファンディングやオンライン署名などたくさん情報が得られるもの、記事の中にも出ていましたが自分の関心とそれらのマッチングアプリみたいなもの、あるといいなあ!
    Feb 27.2020

    No.2

  • glico
    最近はChange.orgなどでネット上で署名をしたりすることもできるので、わたしも生理用品の非課税や聖マリアンナ医科大学の点数操作の件などで署名しましたが、それが社会運動と言えるとは…。
    もっとフラットに考えてもいいのかもしれませんね。

    このシリーズ、とても勉強になるのでぜひ他の話題でも見てみたいです…!
    Jan 30.2020

    No.1

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