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ルールを壊しながら時事問題や日々の関心を描き出す、矢入幸一

絵を描くときはいろんなルールを壊したくなるんです

2020年1・2月 特集:これからのルール
テキスト:ときとう藤花 編集:竹中万季
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目に見えるものから見えないものまでわたしたちは、ルールに囲まれて生きています。ルールという概念にはどこかかたくるしさを感じてしまうけれど、ほんとうのルールは、心を縛るものではなく新しい日々をよりよくするものであるはずです。まずは知って、そうすれば問いが生まれる。わたしたちのこれからのルールをほのあかるいほうへと探しにいきましょう。

今回は「ルール」を連想させる絵を描くイラストレーターと、その作品をご紹介します。こりかたまったルールを追い抜き、身近なきまりごとや秩序があなたを解放する未来をおもうきっかけになれば幸いです。

『HB Gallery File Competition』Vol.29仲條正義賞などの経歴を持ち、展示や装画などで活躍するグラフィックアーティスト、矢入幸一さん。時事問題を背景としたものなど、時代に着目した作品を多数制作しています。今回紹介する『未来の目』というタイトルを冠する瞳の中に群衆が描かれたイラストや、新紙幣発行に基づき描かれたイラストは、日頃の関心を的確かつポップに落とし込んだ作品だといえるでしょう。

世相から感じたことを表現するスタイルも、またノイズの混じったタッチや鮮やかな色合いを組み合わせて描きあげるその作風は、彼独自のやりかたでルールを見つめ構築している印象を受けます。ただかたくるしくルールを受け止めるのではなく、いちど自分自身で噛みくだき、自由に思考するという行為はとても豊か。こんな姿勢で「これから」をまなざすことができたら、より良い未来への手掛かりを発見することができそうです。

そんな矢入さんに「絵の創作、もしくは社会制度のこれからのルールについて、理想や感じていること」という質問をしたところ、こんなお返事をいただきました。

僕って自分でも嫌になるくらいルールに細かい男なんです。朝起きて最初にシャワー。歯を磨いて、髪を乾かす。前髪は必ず左ながし。黒、白、紺しかないクローゼットから今日の服を選ぶ。天気が良い日は少し歩く中央線で、天気が悪い日は近くの丸ノ内線で会社に向かう。

そんな凝り固まった自分が嫌だからなのか、絵を描くときはいろんなルールを壊したくなるんです。一枚の絵の中で違うタッチがあっちゃダメなの? 言いたい文字を絵の中に入れてもいいよね?? 深刻なことほど明るいトーンで伝えた方がいいのかも!! みたいな。

ルールって自分を縛ることもできるし、逆に抜け出すきっかけにもなってくれる。どうしてそういう決まりになったのか、一番根っこにあるのは何なのか、それを知った上で自分が正しいと思うことは何なのか。そこを考えていくことが、絵を描く上でも、より良い生活を送る上でも、一番大切なとこなんじゃないかなと思ってます。

こだわりはこだわりとして楽しみ、その上で縛られるということだけじゃなくルールの意味自体に目を向ける。可能なことの幅はあくまでも自身で選択する余地があり、発見した方法や在り方にチャレンジすることも自分次第。ルールとは、あなたのリズムを作り、思考させ、成長させる、あらゆる可能性を秘めたシステムなのかもしれません。遵守することでルールがあなたを守ってくれることもあれば、理解することで何かをさらに楽しむことができるようになる場合も。ときには積極的にルールと付き合い、あかるい未来へと近づいていけたら素敵ですね。

PROFILE

矢入幸一

グラフィックアーティスト。1992年生まれ。2016年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。

ときとう藤花

町歩きと買い物が趣味の編集アシスタント

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