「年齢を重ねて、キャリアを積んで、人生の味がプラスされた造形の中には必ず影というものがある」(小田切ヒロ)
最近は海外でも活躍され、世界的に注目されている小田切さん。毎日忙しくされている小田切さんが、余裕のある状態をキープするためのとっておきの方法とは?
長田:小田切さんはどうやって余裕のある状態を保っているの?
小田切:深呼吸と香りですね。仕事を詰め込んでいるときは、特にその時々のリセットが大事になってくるから、これがあればリセットできるというお守りアイテムを持っておくことがとても大切だと思う。僕の場合は精油で、塗るタイプのものを持ち歩いています。深呼吸で香りを吸い込むのに加えて、経皮吸収もさせてさらに癒しを得ています。
長田:香りは理性を超えて、脳まで直接届くと言われているから、そのスイッチの仕方はすごくいいね。しかも呼吸は自律神経を唯一自分でコントロールできるものだと言われていて、すごく理にかなっていると思う。
野村:先ほど内面を外見で表現するというお話もありましたが、生き方や余裕を外見で表現するためのヒントのようなものは何かありますか?
小田切:僕は「くすみ」だと思います。そもそも人間は光と影でできている造形物。広告や美容雑誌に載せられた影の一切ない真っ白な肌って、やっぱりアート作品なんですよね。実際に肉眼で見たときにそれが魅力的かと言われたら、僕は魅力的だとは思えない。年齢を重ねて、キャリアを積んで、人生の味がプラスされた造形の中には必ず影というものがありますから、その影、つまりくすみを消さずに生かすメイクが好きですね。
長田:最近くすみカラーが流行っていたり、くすみが注目されつつあるけれど、小田切さんは結構早い段階で「くすみを消さずに生かす」っていうことを言っていたよね。「くすみ=色気」というのが小田切説。
「大切なのは、自分を美しいものとして捉えているか、ということ」(小田切ヒロ)
「2019年はまさに『美容の年』だった」と小田切さん。多くのコスメブランドが日本に上陸したり、国内でも話題のアイテムが発売され、ビューティ界が盛り上がりました。
長田:2019年はさまざまな美のあり方にスポットが当たって、世界的にも美の価値観に変化があったように思うけれど、日本ではまだ同質性みたいなものが求められたりしちゃう。小田切さんはアジアをはじめ海外でも活躍されているけれど、日本との違いを感じたりした?
小田切:まず大きな違いは、海外に行くと、もう自分の個性を見つけている人が多いんですよ。それをよりよく見せるためにはどうしたらいいのかというところがフィーチャーされている印象を受けますね。日本人はまだ個性を探している人が多いと思うので、個性を見つけるための第一歩をもうちょっと強化させることが大事だと思う。
長田:どうすればいいのかな?
小田切:日本人って謙虚な人がとっても多いんですよ。「自分なんか」って一線を引いてしまう。でもそこでもっと前に出て、自分のよさを追求した方がいいと思う。「私を見て!」とまでは言わないけれど(笑)、例えば恋人や友達の前だけでもいいので、きちんと自分を見てもらえる機会を作って、自分のよさを自分で知るということが大切。それからもっと大切なのは、自分を美しいものとして捉えているか、ということ。
長田:それってなかなか難しかったりするよね。
小田切:でも、そういう自分への扱いってとても大切。それがメイクのディテールや、ファッション、人当たりにも出てくるんです。その意識を変えていくと、日本人のよさがアップデートするんじゃないかな。
野村:なかなか自分に自信が持てないという方も多いですよね。
小田切:個性と魅力がない方っていないんですよ。絶対に。若い頃は僕もそうだったけれど、他人と比べちゃうと必ず悲観的になりますよね。だから、他人なんかどうでもいいと思っていた方がいい。自分として生まれてきちゃったんだから、コンプレックスは個性として受け入れた方がずっといいですよ。もがいていいのは20代まで。30歳超えたら……いや25超えたら受け入れましょう。
長田:厳しくない?(笑)
小田切:25歳は立派な大人ですから。ある程度自分を受け入れて、じゃあその自分がどう素敵に見えるかというステージに上がった方がいいと思います。