世界各国のCOVID-19への向き合い方。混沌した世界を生き抜くために/菅原万有

世界各国のCOVID-19への向き合い方。
混沌した世界を生き抜くために/菅原万有

韓国、台湾、ニュージーランド、ドイツの共通点

テキスト:菅原万有 編集:竹中万季
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それでも、まだ十分ではない。カナダ緊急対応給付金の「支給条件」

政府は個人を支えるカナダ緊急対応給付金(CERB)と呼ばれる緊急対応給付金を運用し始め、私を含めた、緊急給付金を申請した多くの人々に振り込まれています。この現金の給付は後日政府に返金する必要はなく、最大で16週間続き、支給額は1週間あたり500カナダドル(約38,800円)とされています。つまり、約4か月の間、合算すると8,000カナダドル(約620,800円)が個人に支給されることになります。

その支給条件は、

・15歳以上のカナダ在住者
・2019年もしくは申請日からさかのぼって12か月以内に少なくとも5000カナダドルの収入があった人
・4週間の期間で連続14日間において雇用または自営業の収入がない人、雇用または自営業の収入がないと予想される人、上記に当てはまり、それ以降の給付について、雇用所得・収入がないと予想される人
・現在カナダ在住で、SINナンバー(Social Insurance Number、社会保険番号)を所持している人
・月収1000ドル未満の者

が対象者になるというものです。対象者にとってはありがたい援助ですが、このカナダ政府のパンデミックへの対策は十分だとは言えません。これはリベラルな先進国対応に見られる傾向ですが、この対策は中流階級に程よく十分なお金を落とし黙らせるというもので、対象者に当てはまらない人々や貧困層に能動的に手を差し伸べるものではありません。今どこに助けを求めたらいいのかわからない人や、社会的にぎりぎりの線で生きている人、ネットにアクセスできない人、そして対象者に当てはまらない人はどうすればいいのでしょうか。

情報にアクセスできない人や貧困層、家庭内で立場の弱い人を救えている? 『わたしは、ダニエル・ブレイク』を見て

この状況で思い出すのは、第69回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した、ケン・ローチ監督の映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』です。本作が焦点を置くのは、妻に先立たれ身寄りのない59歳のダニエル・ブレイクと2人の子供を抱えたシングルマザーのケイティが適切な援助を求め、複雑な福祉制度と理不尽な職員による対応に翻弄されながらも支え合って懸命に生きる姿です。

『わたしは、ダニエル・ブレイク』

ダニエルは心臓病を患い医者から労働を止められていますが、国から援助を受けるためには求職活動をしなくてなりません。重要な情報は全てネット上にありますが、ネットに疎いダニエルにとってその申請手続きは煩雑で非人道的なものです。援助を受けようとして何度トライしても、手続き上の問題を指摘されてはじかれます。困窮に喘ぐ彼の尊厳を踏みにじるシステムは際限なく彼を消耗させ、追い込んでいきます。彼にとってその社会システムは出口の見えない迷宮であり、情報にアクセスできない情弱者を見捨て、排除するものです。

このイギリスの福祉制度と貧困の実情は、イギリスに限られた物語ではありません。カナダだけではなく、今世界多くの国は直接現金を渡すことを検討しています。アメリカでは総額1兆ドル(107兆円)を現金給付を含んだ経済対策に使うことを検討され、香港では香港の永住権を持つ18歳以上の市民一人当たり1万香港ドル(14万円)の現金給付を盛り込んだ予算案が提出されています。それには人々が困窮しないためという目的もありますが、中級階級にお金を落とすことで、経済を無理矢理にでも動かそうという心臓マッサージ的な手法でもあり、貧困層を救うものではありません。

PROFILE

菅原万有
菅原万有

トロント在住のアーティスト。1994年東京生まれ。10代を英国で過ごし、早稲田大学国際学部卒業後、カナダに移住。現在オンタリオカレッジオブアートアンドデザイン美術学修士課程に在籍し、アジア系ディアスポラとトランスナショナリズムに関する作品制作と研究を行う。同大学で教員助手を務める傍ら、翻訳者、雑誌『Japan In Canada』の編集長兼ライター、レポーター、写真家、ビデオグラファーとして多義に渡り活動している。

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