◯✕の「スイッチ」ではなく「ツマミ」で考える
かん:でもそうやっていちいち相手の意見を聞いたり、いろんな情報を「まだわからない」と思って見ていたら、結局どっちが正解か決められないような気がしてきた……。それだと一生「まだわからない」ままになっちゃいませんか?
あんな:ファイナルアンサー、永遠に決められない……。
しもむら:それでいいじゃないですか。目にするニュースは全て「to be continued」がついているつもりで、ずっと「まだわからないぞ」と思っていることが大事なんです。ニュースは永遠の中間報告ですから。
かん:そっか、現実は物語みたいに終わりがあるわけじゃないもんなあ。
しもむら:「とりあえずいまの見方」は、暫定的に決めてもいいんですよ。特に、大雨の特別警報とか原子力発電所の爆発とか、緊急時には「まだわからないぞ」って言っているうちに逃げ遅れてしまったりしますから。
だから、「まだわからない」というのは、「見方を決めない」ことではなくて、「今日の見方で明日の見方を縛らない」ことです。
かん:過去の自分の考えを更新していけるかってすごく大事ですね。間違いを認めたくなくてずっと最初の見方に執着してしまうこと、めっちゃあると思う。でも選挙の時なんかは、バッチリこの人だって思える候補者がいなくて「今日の見方」を決めることすら難しかったりします。調べれば調べるほど揺らぐ。
しもむら:意見は「ON/OFF」のスイッチのように◯か✕かでカチカチと切り替えるものではなく、音量の「ツマミ」のようにMAXとMINの間をスーッと滑らせて、グラデーションで調節するものだとイメージしてみて。誰にとってもパーフェクトな候補者なんてものは存在しませんから、政策とか人間性とか、そういう情報を判断材料にした上で、投票日がきた時点でいちばんマシ=自分のツマミがMAX側に近い政党や人に、票を入れたらいいんです。
かん:「誰もいい人いない」でも「絶対この人がいい」でもなくて、この人がマシかな……で選ぶのか。投票ってほとんどの人にとってはそういうものなのかもしれない。
しもむら:選挙は「ヒーローの自動販売機」じゃないから、難しいんですよね。
かん:といいますと……?
しもむら:この人だって決めて、ボタンを押すと、理想の政治家がポーンと出てくる、そういう仕組みではないってことです。
あんな:耳が痛いな。「選んでやったぞ。さぁお手並み拝見といこうかフフ」って感じで見ちゃってたかも。
かん:投票日がゴールではないってことか。
しもむら:そう。むしろ、投票日がスタートライン。自分が選んだ政治家が嘘ついてないかなーとか、悪いことしてないかなーと監視して育てていくのは、投票した側の責任でもあります。投票日に◯✕固めてあとはお任せ、ではなく、育てていく、ずっと追いかけることの方が重要だと思います。
あんな:ついつい「あちら側」の存在として、意思決定のあとは放置プレイしてしまってたな。
しもむら:具体名をあげると、たとえば「れいわ新撰組」がこれから育っていくかどうかは支援者にかかっていると思います。先の選挙で山本太郎さんは熱烈な支持を集めましたが、本当に大変なのはこれからで、政治の世界に入ると、思い通りにいかないことがたくさん出てきます。そこで支持者たちが、ヒーローを求める目で減点ばかりしていくと、きっとすぐに幻滅され見捨てられてしまう。
かん:確かに、すでに「山本太郎には期待してたがガッカリだ」みたいなツイートとか目にした。
しもむら:叩くのは、政治家の「頭」じゃなくて「お尻」! もちろん批判もしていいんですが、叱咤激励や提案もできるんだよということ。それって、政治だけでなくて、メディアに関しても言えることなんですけどね。
あんな:メディアのお尻って、どうやって叩けば良いんですか?
しもむら:これは以前メディアに在籍していた人間としてのお願いですが、よくない報道の批判と同じくらい、良い番組、報道を褒めてあげてください。メールでも良いですし、Twitterへの投稿でも良い。実は、批判の声に比べて、「この報道がよかった」という声はすくないんです。僕も今日のレポートよかったと手紙が来ると、ボロボロになるまで持ち歩いていました。
かん:そうなんだ! いい記事もよくない記事も、両方覚えとこう!
あんな:話を戻して、政治家のお尻を叩く方法はどうでしょう? 最近私の周囲では、意見をメールする人が増えていて、いいことだなって思ってます。
しもむら:必ず、公式HPにお問い合わせフォームなんかがあるはずです。「当選さえしちゃったら、もう有権者の声なんか聞かないでしょ」なんてことはありません。だって、また次の選挙があるんだから。「今度は投票しないよ」という人事権は、こっちが持ってるんですから。
あんな:推しが納得できない行動をしたら、「失望した」と応援をやめるのではなく、なんでそうするんですか? って問いかけた方が健全。長い目で見て建設的に関わった方が、お互いに育つ、前に進めるってことですね。
かん:ガチャでSSR(*4)のカードを引いて一発逆転! ではなく、N(ノーマル)カードを地道に合成して育てていくのが民主主義なんだなあ……。手がかかるけど、真面目に取り組めば愛着がわきそう。育成ゲームみたいでちょっと面白いかも。
*4=ソーシャルゲームなどでカードやキャラクターのレアリティをしめすランク「スーパースペシャルレア」の略。
あんな:そのたとえ、ちょっとついて行けてないから後でググるね。みんなのメディアを育てる姿勢と政治を育てる姿勢、どちらも成熟したらいいな。リアル育成ゲーム頑張ります。
<ポイント>
Q.「ファイナルアンサーが決められない!」(かん)
A.「意見はスイッチではなくて、音量調節のツマミのようなもの。常にチューニングし続けることが大事」(しもむら)
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