政治1年生のためのメディアリテラシー。長田杏奈&かん(劇団雌猫)がジャーナリストに取材

政治1年生のためのメディアリテラシー。長田杏奈&かん(劇団雌猫)がジャーナリストに取材

情報が溢れる時代の、メディアとの付き合い方

インタビュー・テキスト:かん 撮影:飯本貴子 イラスト:鈴木衣津子(かん似顔絵) 編集:守屋佳奈子、野村由芽 
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No but ではなく、Yes and で話す練習を

あんな:ちょっと話が戻っちゃうんですけど。窓を広げていろいろな意見に触れるのは素敵なことだと思うのですが、こと政治テーマとなると意見の違う人から急な攻撃をされるのが怖くて。私は普段、美容やインタビューの記事を書くことが多いんですけど、「ファンデーションはこれがオススメ」とか「人気モデルがこう言っていた」みたいなツイートするぶんには、平和なんです。

でも、「この政策はどうかと思う」「あの政治家がこう言ってた」なんてつぶやこうものなら、意見のちがう人からいきなり暴言吐かれる可能性がある。政治ネタって、見ず知らずの人が「同じ意見じゃないとけしからん!」と潰しにくるようなところありません? 

かん:それが辛くて、政治の話を見ないようにしている人も多いと思う。昔バイト先で、お客さんの前で「政治と宗教と野球の話はするな」と教えられたんですが、世の中には「政治的なことは発言しないのが無難」という風潮がある気がする。

あんな:前に政治家のパーティってどんな感じだろうと興味本位で行って、そのレポートをnote(*3)にしたためたんですよ。わりと勉強しているテーマについて政治家の人がいい加減なことを言っていた件について、ほんのちょっと書いただけで、コメント欄に「そんなことも知らないのか、もっと勉強するべきだ」って、トンデモ系のリンクを貼りつつ罵倒されて。それが嫌すぎて、noteの記事を全部閲覧不可にしたんです。いきなり暴言吐く人に自分の存在を知られたくない……。

*3=アカウントを登録すれば誰でも文章、写真、イラスト、音楽、映像などの作品を投稿できるウェブサービス。

しもむら:まともな反論はいいんだけど、「こんなこともわからないんですか?」とか、最後にわざわざ余計な罵詈雑言が入っていたりして。僕は、個人的にはあまり気にしないようにしてますね。胸の悪くなる部分は、ただのドットの列と思えばいい。

かん:ドット列(笑)。

しもむら:でも、ただ馬鹿にしたいだけ・優越感を持ちたいだけの人は無視していいと思うんですが、反論している人の意見を見ると参考になることもいっぱいありますからね。慣れてくると、していい無視と、してはいけない無視の判断もついてきますよ。メーカーだってクレーマーが最高の先生っていうでしょ。

あんな:強い心! でも、私は具合が悪くなっちゃうタイプだからなぁ……。素性の明らかな人と面と向かってならまだしも、聞く耳も話し合う準備もできていない匿名の人と向き合うのはリスクが高いし、消耗してしまう。暴言耐性がない人も、安心して自分の意見を発信できるようになったらいいのに。ちなみに先生は、お仕事を通してその境地に至ったんですか?

しもむら:僕はもともと、自分を含めて、そんな完璧な人間がいるとはどうしても思えないんです。だから反論してくる相手も否定しないってのが基本なんですよね。我以外、皆我が師。そして我以外、皆我が反面教師。25年くらい取材をしてきて、いろんな考えの人を本当にたくさん見てきたので。なんでこの人はこの情報を信じているんだろう、ってことにすごく興味があります。

かん:反論してくる人にとっても、その情報を強く信じたり、反対意見の人を攻撃するまでになった経緯があるはずですよね。俄然興味がわいてきた。ミステリー小説みたい。

しもむら:それに、自分を守るために、実は誤りだと薄々気づいた主張を頑固に繰り返すうち、自分の意見に洗脳されていって、本当にそれが正しいんだという錯覚に陥る人っているんです。その人にとっては、ちがう考えを受け入れてしまうと、それまでの自分を壊してしまうことになるから議論ができなくなる。

かん:なんでも断定的に言う人ってそういう状態になってしまってるのかもなー。前に親がネトウヨだったという記事(デイリー新潮/亡き父は晩年なぜ「ネット右翼」になってしまったのか)が話題になってたけど、全然他人事じゃないなと感じました。身近な人が偏向報道や差別思想に染まったとき、どうすればいいんでしょう?

しもむら:「立場をカエル」で言ったように、「A or B」の対立と考えないで、「A and B」で考えること。反対説や違う意見を述べる時に、No but(ちがうよ、しかし) じゃなくて、Yes and(そうだね、それと)と言ってつなげれば、その人の見ている景色を否定することなく、窓を広げられるんじゃないかな。

例えば、飲み会なんかで、「あいつ絶対仕事サボってるよね」という話が出てきたときに、「それはちがうでしょ」と真っ向から否定せず、「だよね~。それか、まだ言えない大きいプロジェクトでも仕込んでるのかな」とか、「うん……。もしや、ご家族が具合悪かったりとか?」と付け足してみる。日常会話の中でつぶやいていくことが、相手の人のフィルターバブルを破る手助けになるかもしれませんよ。

あんな:無理に相手を変えようとせず、でも諦めなくてもいいよということですね。「こんな見方もあるらしいよ」と、気楽に言ってみよう。

<ポイント>
Q.「政治的発信をすると攻撃されそうで怖い」(あんな)
A.「議論する時は、No butではなくYes andで話す。」(しもむら)

PROFILE

長田杏奈
長田杏奈

1977年、神奈川県生まれ。ライター。テロップや口調で煽るテレビが苦手で、ニュースはネットやラジオでチェック。新聞は電子版派。センセーショナルな見出しやコメント欄、ニュースの並び順がワイドショーっぽいサイトは避けて通る派。著書に『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)、『あなたは美しい。その証拠を今からぼくたちが見せよう。』(大和書房/6月発売)。『エトセトラ VOL.3 特集: 私の 私による 私のための身体』(エトセトラブックス/5月18日発売)責任編集。

かん

1989年、兵庫県生まれ。書籍『浪費図鑑』等を制作するオタク女子4人組「劇団雌猫」メンバー。何が正しい情報か分からないときは、一回スマホを閉じて、みんなの議論が活性化するのを待つ。新刊はコミック『だから私はメイクする』(祥伝社)。K-POPアイドルSEVENTEENのジョシュアと宝塚歌劇団の芹香斗亜を応援中。

下村健一

1960年、東京都生まれ。令和メディア研究所主宰。東京大学法学部卒業後、TBS入社。報道アナウンサー、現場リポーター、企画ディレクターとして活躍。2000年以降、フリーとして取材キャスターを続ける一方、市民グループや学生、子どもたちのメディア制作を支援する「市民メディア・アドバイザー」として活動。2010年秋から約2年半、内閣広報室の中枢で首相官邸(民主党政権も自民党政権も)の情報発信を担当。東京大学客員助教授、慶應義塾大学特別招聘教授などを経て、現在は白鴎大学特任教授。小学教科書(国語5年/光村図書)の執筆から経営者研修まで、幅広い年代のメディア・情報教育に携わる。ネットメディアの創造性&信頼確立を目指して40団体以上が加盟する「インターネットメディア協会」(JIMA)に、設立理事として参画し、メディアリテラシー部門を担う。著書に『窓をひろげて考えよう』(かもがわ出版)、『10代からの情報キャッチボール入門――使えるメディア・リテラシー』(岩波書店)、『マスコミは何を伝えないか』(岩波書店)ほか。

INFORMATION

書籍情報
『窓をひろげて考えよう』
著者:下村健一

2017年7月20日(木)発売
価格:3,080円(税込)
発行:かもがわ出版
Amazon
※Amazonが在庫切れの場合、各出版社や書店系サイトからお申込みください。

『10代からの情報キャッチボール入門――使えるメディア・リテラシー』
著者:下村健一

2015年4月25日(土)発売
価格:1,760円(税込)
発行:岩波書店
Amazon
※Amazonが在庫切れの場合、各出版社や書店系サイトからお申込みください。

『マスコミは何を伝えないか――メディア社会の賢い生き方』
著者:下村健一

2010年9月23日(木)発売
価格:2,090円(税込)
発行:岩波書店
Amazon
※Amazonが在庫切れの場合、各出版社や書店系サイトからお申込みください。

『想像力のスイッチを入れよう』
著者:下村健一

2017年1月31日(火)発売
価格:1,320円(税込)
発行:講談社
Amazon
※Amazonが在庫切れの場合、各出版社や書店系サイトからお申込みください。

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