日本で生きることを8名の女性が作品に「わたしと日本、再発見。」

日本で生きることを8名の女性が作品に
「わたしと日本、再発見。」

ひとりひとりが日本で生きることに向き合った作品たち

テキスト:野村由芽 展示企画・進行:竹中万季、野村由芽、柏木良介
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はらだ有彩「動きつづける私たち」

食べる

私は本を大切にしない。こんなことを言うと怒られそうだけど、マーカーを引き、ドッグイヤーを折り、思ったことを書きつけてしまう。この知識は私が手に入れたのだ! もう私のものだ! 誰にも触らせない! 私が食べるのだ!
新しいものを口に入れるのが好きだ。肉汁を啜る。パンに歯を立てる。砂糖を入れてかき回す。香りのついた空気を深く吸い込む。見たことのないものを見るためには、新しい熱量が必要なのだ。

踊る

体育の授業は、特に退屈だった。私が通っていた由緒正しき学校には、由緒正しき伝統のダンスがあって、「あなた方のお祖母様たちも、ひいお祖母様たちも踊っていた踊りですよ」と言われるたびに「いや、知らんし」などと思っていた。体育だけではなくて、学校生活まるごと退屈していたのかもしれない。だってあの頃は知らなかった。好きな格好をして、好きな場所に行ける喜びに打ち震えるとき、足が勝手にステップを踏んでしまうなんて。

奏でる

ナンシー・シナトラの“These Boots Are Made for Walkin'”をかけたら、「すごく年上の男と付き合ってそうでいいね」だって。「にくい貴方」なんてロマンチックに聞こえる邦題の方じゃなくて、「あんたをこのブーツで踏み越える」って歌詞の方に注目してほしいんだけど、と言ったけど、あんまり分かってないみたいだった。好きな曲をかけて、好きな楽器を搔き鳴らして、私はもう踏み越えている。

色を塗る

銀色がいちばん好きだったのは、色のようで色ではないからだ。子供の頃、将来はお金持ちになって、お店の端から端まで口紅ぜんぶ下さい! って言うんだ、と妙にリアルな夢を語っては大人たちを何とも言えない笑顔にさせていた。成長して、私の欲しい口紅はどこにも売っていないのだと知り、ひどく落胆したものだ。私の唇を強調しているように見せかけて、きらきらと煙に巻くような色を渇望していたのに。それからさらに成長して、欲しいものは案外手に入れられるのだと知り、私は楽しい大人になった。

贈る

いつからか「ヘッドホンをしているときは話しかけない」というルールができた。そうしているときには仕事に集中しているから、というのが理由なんだけど、実は私が頼んだわけじゃない。いつの間にか、気づかないくらい控えめに、あの人は実行してくれていたのだ。愛だ。これを愛と呼ばずして何と呼ぼう。私は愛を知っている! 知っていることを噛みしめるたび、新しく見つけるたび、その形を書き留めたくて包装紙を探しに出かける。

躍動する

かわいいスコートが履きたいって言う理由で部活を選んだっていいじゃん、と思った。そうすれば足というものを外に出す勇気が出るかもしれない、とも思った。そしてすぐに、かわいいスコートが履きたいって言う理由で部活を選んでも別にいいけど、かわいいスコートを履き続けるためには中々ハードな練習を続けなければならないということに気づいた。身体が跳ねるのが面白くて、しんどくて、眩しくて、楽しい。夏のショートパンツを買った。

手紙を書く

送信ボタンのないメッセージアプリを開発したら、売れるのではないかと目論んでいる。誰にも送れないけれど、書いた手紙は下書きフォルダに保存して、いつでも読み返せるシステムにしよう。これは流行っちゃうんじゃない!? と、友達に話したら笑われてしまった。結構いいアイデアだと思ったんだけど。だって、書いていなくても書いている。届かなくても書いている。返事が来なくても書いている。結局のところ、あなたのことを思い出したいだけだから。

作品に寄せて(はらだ有彩)
時々、200年後くらいに自分の写っている写真なんかが発掘されて、歴史的資料になるところを想像してみます。
「時代を超える」というと何だか遠いことのようだけど、「時代を超えてやるぞ!」と思いながら日々を生きているわけではない私と同じように、いつかの女の子たちも普通の毎日を生きていて、その時間が今に繋がっていると思うと無性に心強いのです。

【作品一覧を見る】池田澄子・佐藤文香、石田真澄、片岡メリヤス、最果タヒ、たなかみさき、はらだ有彩、和田彩花による「わたしと日本、再発見。」

PROFILE

池田澄子
池田澄子

1936年3月25日鎌倉市生まれ。戦時中、父の故郷の村上へ転居。1944年、父が戦病死。のち結婚まで新潟市で暮らす。言葉を書くことが好きだったが俳句には全く関心がなかった。1975年頃、偶然に目にした阿部完市の俳句に驚き俳句に関心を持ち、俳句を作り始め堀井鶏の「群島」に入会、堀井鶏逝去。三橋敏雄の俳句を知り私淑、のち師事。2001年、三橋敏雄逝去。
句集・『空の庭』『いつしか人に生まれて』『現代俳句文庫29・池田澄子句集』『ゆく船』『たましいの話』『拝復』『思ってます』。
評論集・『休むに似たり』。エッセー集・『あさがや草紙』『自句自解Ⅰ ベスト100・池田澄子』。対談集『金子兜太×池田澄子 兜太百句を読む』。

石田真澄
石田真澄

1998年生まれ。
2017年5月自身初の個展「GINGER ALE」を開催。2018年2月、初作品集「light years -光年-」をTISSUE PAPERSより刊行。雑誌や広告などでも活躍の幅を広げる。

片岡メリヤス
片岡メリヤス

東京出身。2011年から片岡メリヤスとして活動を開始。
主にぬいぐるみ•動くおもちゃ•光るおもちゃ•などを制作。
飾るだけではなく、遊べて愛のあるぬいぐるみを作る。
オリジナルの人形劇を各地で上演。
全国の個人商店を応援する漫画「片岡おへんろ」執筆。

最果タヒ
最果タヒ

詩人。中原中也賞・現代詩花椿賞。
最新詩集『愛の縫い目はここ』がリトルモアより発売中。その他、詩集に『死んでしまう系のぼくらに』『空が分裂する』『グッドモーニング』などがあり、2017年5月に詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が映画化された。また、小説に『十代に共感する奴はみんな嘘つき』『少女ABCDEFGHIJKLMN』、エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』、対談集に『ことばの恐竜』などがある。この秋に、食べ物エッセイ集『もぐ∞』が刊行予定。

佐藤文香
佐藤文香

1985年兵庫県生まれ。中学1年生のとき、夏井いつきの俳句の授業に衝撃を受け、俳句を始める。第2回芝不器男俳句新人賞にて対馬康子奨励賞受賞。池田澄子に師事。
句集『海藻標本』(宗左近俳句大賞)、『君に目があり見開かれ』。俳句甲子園の漫画『ぼくらの17-ON!』①〜④(アキヤマ香著)の俳句協力。共著『新撰21』、編著『俳句を遊べ!』、『大人になるまでに読みたい15歳の短歌・俳句・川柳②生と夢』、『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』。2018年12月、恋愛掌編小説集『そんなことよりキスだった』(左右社)刊行。

たなかみさき
たなかみさき

1992年11月14日生まれ。埼玉県出身日本大学芸術学部を卒業後、熊本に移り住みフリーランスのイラストレーターとして活動。2017年春からは東京に拠点を移し主にグッズ制作、出版物に関わりながら活動中。お酒、歌謡、哀愁をこよなく愛し、それらは作品の中で色気を匂わせている、誰もが感じた事のある、あの青春を追い求めて。

はらだ有彩
はらだ有彩

テキストレーター(テキスト/テキスタイル/イラストレーション)。2014年 テキストとイラストレーションをテキスタイルにして身につけるブランド《mon.you.moyo》を開始。強い女の子をモチーフに、自分も一緒に強くなるためのイラストレーションを展開しています。monはフランス語で「私の」、youは英語で「あなた」、moyoはスワヒリ語で「たましい」。私のあなた、そのたましいを必ず手に入れる。

和田彩花
和田彩花

アイドル。群馬県出身。2019年6月アンジュルム・Hello! Projectを卒業。アイドル活動と平行し大学院で美術を学ぶ。特技は美術について話すこと。好きな画家:エドゥアール・マネ/作品:菫の花束をつけたベルト・モリゾ/好きな(得意な)分野は西洋近代絵画、現代美術、仏像。趣味は美術に触れること。

INFORMATION

イベント情報
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『渋谷ヒカリエ 8th Anniversary シブピカ博2020「わたしと日本、再発見。」』

昔から今に至るまで、受け継がれたり再解釈されたりしながら根づいているさまざまな「日本の美意識」。それらを一人一人が考えるきっかけになるインスタレーションやイベントを本来であれば、2020年4月23日から5月6日まで渋谷ヒカリエで展開する予定でした。新型コロナウイルスの影響を鑑みて、渋谷ヒカリエの館内でのイベントは中止、それにかわってShe isとコラボレーションしたオンラインでの展示を開催。「わたしと日本、再発見。」をテーマに日本で生きる姿勢を語る、10名の女性が登場する映像も公開中。
渋谷ヒカリエ8周年×She is「あなたは、ここでどうやって生きる?」オンライン展示
今生きている日本という場所を見つめた記録。スペシャルムービー上映

イベント情報
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「渋谷ヒカリエ8周年 オリジナル線香花火」プレゼント

渋谷ヒカリエにてお食事いただいた方へ、夏を楽しんでいただける「渋谷ヒカリエ8周年 オリジナル線香花火」のプレゼントも行います。約90年の歴史を誇る、筒井時正玩具花火製造所の線香花火、ぜひ楽しみください。

期間:7月20日(月)~8月31日(月)
条件:期間中カフェ&レストラン(6・7・8・11階)にて3,000円(税込・合算不可)以上お食事されたお客様。
※なくなり次第、終了となります。

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