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林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年6月)

友人との口論と満月の関係、緑色のカエルの夢

連載:林央子とエレン・フライスのParallel Diaries
テキスト・撮影:林央子、エレン・フライス 翻訳:林央子 編集:竹中万季
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2020年6月8日(月)

エレン  6月8日(月) 22:30

今日は、何時間もしゃべって、しゃべって、しゃべった。喉が痛くなるほどだ。最初の長い会話は土曜日に風景画を買ったアメリカ人の画家と。彼の名前はマーク。彼は私の家に遊びに来てくれ、会話はすぐ流れのように始まって、3時間くらい続いた。アートのこと、旅行のこと、風景のこと、人間関係のこと、人生の逸話などなど。ほどなくして、友人で大工をしている若い美しい女性、フローレが夕食に来てくれた。私たちは一緒に料理をつくり、食べ、話が止むことはなかった。4時間続いた。とても個人的な会話で、いろいろな方向に話が進んだ。美しい一日だったと言えるだろう。他の人と、深いレベルで物事を共有できた気がするが、それが友情というものだと思う。けれどもそれがいつも会話を通して存在するとは思わない。私には何人かの仲の良い友人がいるが、そのうち何人かとは、ほとんど会話をしない。このようにとても活発で長い会話は稀で、それが1日に2回あったというのは贈り物だと思う。

ナカコ  6月8日(月) 22:00

今朝、夢に緑色のカエルが出てきた。話の内容は忘れてしまったけれど、起きたときに鮮やかな緑色をしたカエルの存在を思い出した。何匹かいた。息子にそのことを話したら、彼は今日見た夢の中で自分が道路に標識のような記号を描いていた、と言った。どちらも何か良いサインに聞こえたので、夢占いを調べてみた。

夢の中のカエルは「運気、成長、転機」の象徴だという。私は好意的にカエルを眺めていたので、良い兆しなのだろう。また標識の夢は、出発や未来を見据えることを意味しているようだ。これも良い兆しのようだ。始まりは良かったけれど、その日のうちに何度も息子と口論になってしまった。

夜、彼が寝静まった後に、友人から聞いた「子育てが、簡単なわけはない」「私たちは初めてなんだから、仕方ないのよ!」という言葉を思い出していた。

PROFILE

林央子
林央子

編集者。1966年生まれ。同時代を生きるアーティストとの対話から紡ぎ出す個人雑誌『here and there』を企画・編集・執筆する。2002年に同誌を創刊し、現在までに14冊制作。資生堂『花椿』編集部に所属(1988~2001)の後フリーランスに。自身の琴線にふれたアーティストの活動を、新聞、雑誌、webマガジンなど各種媒体への執筆により継続的にレポートする。2014年の「拡張するファッション」展に続き、東京都写真美術館で行われた「写真とファッション 1990年代からの関係性を探る」展(~7/19)の監修を勤めた。同展にはエレン・フライスも招聘。現在『She is』『まほら』ほかにて連載執筆中。
Parallel Diaries

エレン・フライス

1968年、フランス生まれ。1992年から2000年代初頭にかけて、インディペンデントな編集方針によるファッション・カルチャー誌『Purple』を刊行。その後も個人的な視点にもとづくジャーナリズム誌『HÉLÈNE』『The Purple Journal』を手掛ける。また、1994年の「L’Hiver de L’Amour」をはじめ世界各国の美術館で展覧会を企画。現在はフランス南西部の町サン・タントナン・ノーブル・ヴァルで娘と暮らしながら、写真家としても活躍している。編著に『Les Chroniques Purple』(VACANT、2014年)、著書に『エレンの日記』(林央子訳 アダチプレス 2020年)。東京都写真美術館の「写真とファッション」展では新作スライドショー《Ici-Bas》を発表。

INFORMATION

連載:林央子とエレン・フライスのParallel Diaries
連載:林央子とエレン・フライスのParallel Diaries
『Purple』『here and there』の編集者が
離れた場所で綴り合う並行日記

vol.1 林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年5月)
vol.2 林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年6月)

林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年6月)

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