アルジェリアのスラングである「パピチャ」の意味。それぞれに異なる4人のキャラクター
ショッキングな映像や悲劇的な場面もある本作ですが、主人公ネジュマや、彼女を含む4人の少女のキャラクター、そして彼女たちのシスターフッドに心を動かされたという人も。強い意思を持って理不尽な抑圧に抗うネジュマだけでなく、親友のワシラ、自分の意思とは関係なく結婚の相手が決まっているサミラ、カナダへの移住を夢見るカヒナ──映画タイトルの「パピチャ」は「愉快で魅力的で常識にとらわれない自由な女性」という意味のアルジェリアのスラングだそうですが、本作に登場する4人の女性たちはそれぞれに異なる魅力を放っています。
「みんなに名前があって、性格が真逆の子もいたり、抱えてる問題もそれぞれにある。でもその4人が対立しつつも、協力してひとつのファッションショーを作っていく姿勢にすごく勇気づけられました」という感想や、「本当は悲しいし悔しいし痛いけど、ちょっとでも明るくしてみんなで助け合っていこうとする姿は、自分のこれまでの経験やこれからのことを考えてもすごく助けになるし、救いだなと思った」と話す参加者もいました。
アウファさんは、ネジュマの見せる他者への尊重の姿勢が心に残っていると話します。「ネジュマはお姉さんがヒジャブをつけた人に殺されてしまうという悲惨な経験をした。その記憶を背負ったまま、ヒジャブをした人と交流を持つことができるのが衝撃でした。ネジュマの友人には髪を隠している人もいれば、そうでない人もいました。私はヒジャブをつけた人に家族を殺されて、友達のなかにもそういう姿の人がいたら、思い出したり、憎しみを持ったりするのではないかと思ったのですが、彼女は自ら関わって友達として関係を深めあっていく。それを見てすごく心の優しい人なんだなと思いましたし、彼女の姿は『尊重する』っていうことを本当に訴えかけているなと感じました」
「『アルジェリアは大変だったんだね』で終わらせたくない」
今回は映画を見て当時のアルジェリアの状況を初めて知ったという人も多くいましたが、「その状況をよく知らないからといって、『アルジェリアは大変だったんだね』で終わらせたくないと強く思った」という声も。違う国のこと、知らない場所の出来事だからと安全な位置から線を引いてはいけないという意見には、多くの人が頷いていました。
別の参加者は、ワシラの恋人である男子学生が女性差別的な発言をする場面や、ネジュマの恋人が「上から目線」で結婚を提案する場面などを振り返り、「社会が女性を見下すと、そのなかで生きている若い男の子たちもああいう考えに染まってしまう」と指摘。ネジュマや友人たちの行動について「平和な世界でフェミニズムとか言うのは楽だけど、自分がこの時代のアルジェリアに生きていたらどういう選択をしただろうかと考えた」と話しました。
また「社会の構造によって暴力を与える側にも、受ける側にもなりうる。自分も女性として抑圧される経験はあったりするけど、逆に自分が抑圧してしまう部分もあったりすると思う。劇中、ネジュマたちを攻撃するイスラム過激派の人々のなかには女性もいた」という意見も。
アウファさんは「同じムスリムとして本当のイスラムってこういうものじゃないのに、って悔しい思いもあった」と明かし、「自分は日本に住んでいてマイノリティの立場ではあるので、なんとかして社会に溶け込もうとしながら存在証明を図っているんですが、一方で他のところではイスラムがそういう状況になっていて、やるせない気持ちになったりもする。だからこそ今自分がやっている活動はやり続けた方がいいのかなと考えるようにもなっています」と語りました。