好きなものは自分のためにあるのだから、義務じゃないんですよね。
「自分」と「好き」との間にある感情を見つめて、心地のいい距離で付き合うことは、心身の癒しにも繋がるように思います。好きなもので自らを診療しているイメージのある櫻子さんは、She is の特集「癒やしながら」では眺めているだけで癒される宝石石鹸の作り方を教えてくれました。
櫻子:学生の頃はプレッシャーがあったり、別のことに急かされて諦めてしまったりしたことも、今なら楽しめる可能性があります。「べき」論はやめて、自分に対しても周りに対しても寛容になることで、好きとの距離が見つけやすくなる。あとは、生活の優先順位もあるので、そういう時は無理をしないでほしいです。肩の力を抜いて、自分の心が揺れ動いたものに敏感でいることが大事かなと思います。
心身ともに、自由に解放されている櫻子さん。自身が作るものにも、その気持ちがお守りのように携えられています。
櫻子:ワックスサシェのテーマは「ジャンルレスなものを作ろう」。はじめた当初、多くの人が型にハマりすぎではないかと思いました。それならば、敢えて自分から型にはまってその中で自由な表現をすることが、一番伝わるのではないかと。アジアンな型取りにフレンチカラーを合わせたり、洋風な型取りに不思議な配色をしたり、無国籍な感じを面白がってもらっていると思います。
結局、好きなものは自分のためにあるのだから、義務じゃないんですよね。楽しみ方も自由なので、見方を変えて自分なりの楽しみ方を見つけることが大事だと思います。そうして私だけのエリアが広がっていくほど、寛容になれると思います。
「好き」は人間関係と同じ。くっついたり離れたりすることも大事。
自分の中で、思考を何往復も巡らせている櫻子さん。「好き」なものとの距離もその都度ちょうどいい塩梅を探っている中で、象徴的なのが「読書」。幼少期から夢中になっていた本とも、一時期距離を置いていたようです。
櫻子:高校生くらいの時に、一度読書から離れた時期がありました。心身ともに限界状態で、活字を入れる余裕がなく、一旦休憩しようと。また読み始めたのは2、3年前です。
おそらく、自分の中でいろんなことが整理されて、受け入れる準備ができたのだと思います。知りたいことも増えたので、触れていなかった時間を埋めるように読み始めました。今は、読書がとっても楽しいです。改めて読書に夢中になれたからこそ、どこかで読んだ物語が作品に投影されています。
櫻子:人間関係と同じで、「好き」ともずっと一緒にいる必要はないと思います。好きなもののことは恋人のような扱いをしてしまうけれど、再会を期待して、一度手放してみたり距離をとったりするのもいい。タイミングがあえば、また出会えるはずです。私の場合は、他のことに興味が出たり気が進まなかったりしたことは、一度距離を取ります。そうしてまた、別の「好き」に矢印を向ける。一つに集中できる人は尊敬しますけど、それができない人なりのやり方もあると思うので、自分に向いているスタイルで楽しめばいい。