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日常を細工していく(宝石石鹸編)/櫻子

日常を細工していく(宝石石鹸編)/櫻子

透明度が高く、ゼリーのよう。とっておきの宝石石鹸

2020年7・8月 特集:癒やしながら
テキスト・写真:櫻子 編集:野村由芽
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何かを手作りしていく作業は、心に生まれかけた穴に絆創膏を貼ってくれる

3月中頃から文字通り不要不急の外出をすることがなくなった。
緊急事態宣言下はますます緊張感で強張り、4月に関しては玄関から出た回数は片手で足りるだろう。

自宅と、別フロアのアトリエを行き来するだけの生活。
時折、車いっぱいの買い出しをする以外には1週間一歩も出かけないこともざら。
が、意外にも10日も経たずに私は新しい生活様式にバッチリ適応した。
気軽に出歩けないストレスが皆無だったわけではないけれど、蓋を開けてみると自宅で出来ることは沢山ある。
映画鑑賞、読書、宅トレ、模様替え、大掃除、消耗品のメンテナンス、あれこれ。出来る人からやればいいと思っていた巣篭もり生活は、意外と性に合っていたのだ。

中でも何かを手作りしていく作業はとっても身近な存在だ。
例えば料理だってそうだ。DIY、ハンドメイド、ものづくり……
いろんな呼び方があるけど、とてもプリミティブな自己回復に繋がる行為だと思う。

気持ちが塞がりそうになると、私はすぐに何かしら作りはじめ、挑戦する。
できれば、挑戦したことがないものや、習熟していないものをつくる。
たとえ簡単な手順だとしても、初めての作業は無事に完成するまで不安も伴うけれど、
集中を切らさずに作業に励むことで、気づけば雑念は取り払われるし、完成までたどり着いたときの満足感が、心に生まれかけた穴に絆創膏を貼ってくれる。

生活はまるでコラージュのようだ。誰しもが、それぞれの日々の様々な要素を切り貼りし、組み合わさり、一冊のアルバムが仕上がっていくように、私たちは成立している。
したらば、幸福に感じることだけでなく、息をするように、苦しい思いすら受け止められたら、どれだけ心強く毎日を生き抜けるだろうか。大きな穴が生まれたら、小さな喜びを目ざとく探し出して、周囲に喜びのステッカーを沢山貼って装飾したい。

今回は趣味のハンドメイドから、こんな時期だからこそ、日常に溶け込み少しだけ気持ちが明るくなるようなものを……と、自粛期間中に挑戦したDIYについて、ひとつ紹介しよう。高度な技術は必要なく、手軽にチャレンジできる点が魅力。ぜひ挑戦して頂けたら。

透明度が高く、ゼリーのよう。とっておきの宝石石鹸を作る

特別な道具は特になし。とっておきの宝石石鹸。
ハンドソープがそろそろ切れるタイミングで、前々から挑戦してみたかった石鹸作りを試みる。
石鹸作りと聞くと、なんだかハードルが高くて、初心者にはとりわけ注意が必要な印象を持っていた。まず印鑑を持って薬局へ出向き、所定の手続きを経て劇物指定されている“苛性ソーダ”を入手したのち、完全防備で取り扱いに充分に注意しながらこの“苛性ソーダ”とオイルをドッキングさせ、化学反応を起こして……というのがオーソドックスな製法のひとつであるが、初心者たったひとりで取り掛かるには、とっつき辛さ満点である。
そんな私たちに朗報だ。MPソープというものをご存知だろうか。名前の由来は「Melt and Pour − 溶かして注ぐ」石鹸素材。天然の保湿成分であるグリセリンを配合しており、別名もそのままグリセリンソープ。その見た目は透明度が高くゼリーのよう。苛性ソーダのように取り扱いに過度に留意する必要はなく、MPソープは“温めて、溶かして、注ぐだけ”でオリジナルの石鹸を作ることができてしまう。今回はそんなMPソープを使用して、宝石風の石鹸を作ってみる。日頃から一生懸命私のために働いてくれているこの両手にはとびきり優しくしてあげたい。今回は私の挑戦したレシピとともに紹介しよう(所有時間は映画1本分ほど)。

材料
・MPソープ/クリアタイプ
※完成時のソープのサイズ、大きさ、量を目安に。色数を多めに用意したい場合はなるべく多めに用意を。
・着色料(石鹸用色材やカラージェルがおすすめ)
※赤青黄の三原色があれば大抵の色が再現可能。白黒を追加するとよりリアルな印象で再現できる。
※発色が悪かったりダマになりやすい等注意点はあるものの、食用色素や水彩顔料でも代用は可能。
※野菜のヘタや葉、皮などを摺り下ろし水を加えミキサーがけした野菜エキスを色材に用いる方も。
・香料(香り付けしたい方に)
※アロマオイルやフレグランスオイルなどを。05~1.5%くらいを目安に。今回は省略します。

道具
・楊枝
・まな板、包丁
・紙コップ、プラスチックカップ
・電子レンジ

作り方
1.紙コップに1cm幅でカットしたMPソープを投入。電子レンジに入れて500Wで10~20秒加熱し、ソープの様子を確認しながら、液状になるまで段階的に温め溶かしていく(加熱のしすぎに注意)。

2.液状になったMPソープを着色する。着色料は少量から足していきお好みの色に(香料を入れる方はこの段階で追加。入れすぎると分離してしまうので分量は充分に注意!))。

3.プラスチックカップに着色したソープを流し込み、表面にしっかりと膜が張るまで冷やす。

4.2~3を繰り返し、複数の色付けしたMPソープを重ね合わせ宝石の層を作る。

4-1.ソープ同士がしっかり接合するように、事前に流し込んだソープの表面は楊枝などですこし凹凸をつけてから流し込むと、仕上がりがより強固に。

4-2.流し込み次第で宝石の柄は様々。プラカップを斜めに固定して流し込んでみたり、あえて膜を楊枝で破ってみたり、果敢にチャレンジしてみて。

5.しっかり冷やす。冷凍庫で急速に冷やすと割れやすくなるため、常温である程度冷ましてから冷蔵庫に。

6.固まったソープをカップから取り外し、包丁でカットしていく。少しだけ水を垂らして表面を軽くスポンジや指先で磨いて艶を出し完成。

6-1.カットの際に出たソープの塊、破片たちは、そのまま2~3の宝石層作りの最中に入れて、暖かい液状ソープを流し込むことでより繊細な柄の宝石石鹸が作れますので捨てずに流用を!

DIYのなかでも工程の簡単さと引き換え、実用性もあって満足感のコスパがとびきり高い石鹸作り。使用した道具はそのまま水洗いで洗浄完了……という楽ちんさまでありがたい。Stay Homeな今、ひとりでも気軽に楽しめるし、同居人や家族と共にチャレンジしてみるのもおすすめしたいところ。お試しあれ。

写真は初めての石鹸作りで仕上げた宝石石鹸たち。職業柄、いきなり2kg買い込んでしまいブロックごと鍋で溶かしながら一気に作ってしまった。采配ミスだが、当分手洗いには困らないだろう。ストックは保存容器に詰め込み冷暗所で保管。
※実は100均など身近な場所で材料が調達出来るのもうれしいのがMPソープ。ただし、一部のハンドメイド用クラフトソープは「人体洗浄用ではない」と記載されているものもあるので、用途に合わせてしっかりと確認を。

PROFILE

櫻子
櫻子

ekot spectrum works / 檸檬はソワレ ディレクター
1992/05/07 東京都出身
幼少時から東京、深圳、香港での生活を経て、貿易関連の業務に従事しながら、2015年からワックスサシェ・キャンドルの制作をはじめ『檸檬はソワレ』として活動をスタート。2018年3月より、檸檬ソワレを包括し、より裾野を広げた制作・提案を目的とした『ekot spectrum works (エコー・スペクトラム・ワークス)』を立ち上げ展開中。
東京、札幌、大阪など複数の店舗での取り扱いの他、イベント出展も多数。
最近ではMUSIC VIDEOへの作品提供や、手塚治虫生誕90周年アニバーサリーコラボレーション等、活動の幅を広げている。

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