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最期を迎えるときに食べたい「豆乳のゆるいゼリー」

人間、「お食い初め」があれば「お食い締め」もある

連載:生物群の「簡単なごはんしか作りたくない」
テキスト:生物群 編集:竹中万季
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私はふだんは病院で働いています。

内科医で主に高齢の人たちとか治らない病気の人の終末期医療に関わっている。ですので人が亡くなっていく場面に立ち会うことというのはわりあい多いのですが、人間には「お食い初め」があれば「お食い締め」があるというのをつねづね感じています。みなさん、生まれたからにはこの世からいなくなっていく。ならば、食べなくなって死ぬわけです。死んでいった誰にでも、最期に食べたものというものがある。

そういう理由で自分が最期に食べるもののことはよく考えます。人が老いたり病気で弱って死ぬ時期になると、だいたい三食食べられなくなる。そうするとどうするか。病院食でも、ごはんとおかずのセットというものはなかなか食べられないので出さなくなり、消化のよい、噛まなくてもよい、飲み込みやすい形態になったあと、三食すべて、プリン、ゼリー、ヨーグルト、ジュースというようなものになります。果物を小さく切ったり、すりおろしたものを食べたり、その果汁を口に含んで楽しんだりします。

ときどき、液体であれば何にでも無性にゼラチンを入れたくなる。飲み残しのコーヒーサーバーに残ったドリップコーヒーや、余ったドレッシングに入れたりしたい。豆乳のゆるいゼリーは初めはそういった衝動的な気持ちでつくりました。ゼラチンの量次第で、とろりとした豆腐であったり、またプリンのようなテクスチャにもなる。

豆乳のゆるいゼリーは、夜お風呂に入る前に400〜450mlの豆乳にゼラチンを5g入れてミルクパンで温めて溶かしてから耐熱容器に移しかえて、お風呂に入って、出たらあら熱がとれているのでそのまま冷蔵庫に入れます。一晩冷やすと朝食べられます。くずしてグラノーラや蜂蜜と混ぜて朝に食べると美味しい。

死ぬ前に食べられなくなるとき、どういうものを食べたいのか考えます。柔らかい食べものはいろいろあって、それが我々の最期の食事になるでしょう。何も分からなくなる前に、自分が食べたい身近な霞を探しておきたい。

PROFILE

生物群(せいぶつぐん)
生物群(せいぶつぐん)

ジャンルにとらわれず目が届く範囲の様々な食べものを食べるインターネットユーザー。あくまで自身の信念である「今晩自宅に無事帰宅する」ことを貫きながらも、積極的にアルコールも飲んでいくスタイルが特徴。近年はカレーに並々ならぬ情熱を注いでいる。本職は心優しい内科医。

INFORMATION

生物群の「簡単なごはんしか作りたくない」
生物群の「簡単なごはんしか作りたくない」
世界の味を愛す生物群(@kmngr)さんの家庭の味を知る、食エッセイ

第一回:明日の冷蔵庫に眠らせる「冷たいピーマンの焼きびたし」
第二回:チルアウトするほど美味しい「茄子はと麦ヨーグルト」
第三回:最期を迎えるときに食べたい「豆乳のゆるいゼリー」
第四回:善良な「グズグズのブロッコリーのパスタ」
第五回:一晩の魂の旅行の後に飲む「ミルクのコールドブリュー」

最期を迎えるときに食べたい「豆乳のゆるいゼリー」

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