先にやりたいことだけ能動的にやっておいた方がまだ楽しいし、身にもなるし、やる気も出るし、サボれる(笑)。
ぱいせん:ものをつくるときにはそれぞれ役割があるんだよね?
エリイ:うん。リーダーがコンセプトを固めて、ビデオの編集は林(靖高)で、力仕事は稲岡(求)くんで、絵をかいたりするのはオカヤンで、あとは私で、それ以外は手が空いてる人がやる。水野は広島で玉の輿にのった。一番サボろうとするのは私だと思う。
しをりん:はたから見ると、エリイちゃんってすごくメディアに出ていて忙しそうに見えたりもするけど。
エリイ:よくそう言われるんだけど、例えば昨日も1時間の予定だった取材が、早口で話したら15分で終わったの。その15分だけ喋ったものが表に出るとすごく忙しい人みたいに見えるけど、あとは「超忙しいんで」みたいなフリをしつつ、実際は横になりながらカフェラテとかを飲んでずっとサボってる。私、サボるために生きてる可能性があるね。
ぱいせん:「サボるために生きてる」っていいね。
ゆりしー:Chim↑Pomってずっと社会に対して積極的なアクションを起こし続けているから、それって「だるがり」と真逆な気もしてしまうんだけど。
エリイ:自発的に先に動いておいた方がサボれるからかもしれないね。
ゲッツ!:なるほどー。
エリイ:あとはやっぱり受動的な状態が好きじゃない。自分からやりたいことをやる分にはまだできるけど。だから先にやりたいことだけ能動的にやっておいた方がまだ楽しいし、身にもなるし、やる気も出るし、サボれる。
しをりん:それ超いい。
エリイ:それにアートは好きだから。でもそのほかのことに関しては一切何もできないし、何もやらない。掃除も洗濯も私のお母さんと夫のお母さんにしてもらってるし、ご飯は365日外食。食べる、寝る、起きる、遊ぶ、風呂、アート以外はやらない。
何かそこで面白いことが起こりそうだと思える仕事以外はやらない。
ぱいせん:エリイちゃんにとって、Chim↑Pomは仕事っていう感覚あるのかなあ。
エリイ:食べる、寝る、起きる、遊ぶ、飲む、風呂、Chim↑Pomしかやってないからね、なんとも。
しをりん:テレビに出たりするのは?
エリイ:それは、現場まで行かなきゃいけないから仕事だね。何かそこで面白いことが起こりそうだと思えること以外はやらない。知らないことを知りたいし、やったことないことをやりたいし、全く知らない人と話してみたい。それがアートに繋がったりもするし。でも私、結構な高額を積まれてもやりたくなかったらやらない。だるいから(笑)。
ゲッツ!:高校生のときに音楽の先生が美大を勧めてくれなかったら今の人生じゃなかったかもしれないって思う?
エリイ:でもね、違う形で同じライフスタイルを送ってたと思う。子供の頃から絶対に働きたくないって思ってたし、すべてがだるいって思ってたから。やりたくないことは絶対にやらない。
しをりん:宿題とかは?
エリイ:やったことない。親と近所の友達に宿題を配ってやってもらって、回収してた。美大の授業の課題も友達の作品を借りて出してたし。
未完成:(笑)。
ゆりしー:そこで、自分の作品を見せたいっていうエゴとかもなかったんだね。
エリイ:ないね!
しをりん:私は昔音楽をやってたときに親から「それで一生食べていけると思うの?」みたいなことを言われたんだけど、そういうのってなかったの?
エリイ:なかった。親の言うことを聞いたことが一度もないから、言っても無駄だと思われてたのかも。親に対する反発とかじゃなくて、誰の言うことも聞いたことがないから。人の意見に対して「確かにそうだな」とか「その方がいいかも」と思うことはあるけど、「こうしなさい」って言われたことはそのままではやらないし、例えば「もっと言葉遣いをよくした方がいいんじゃない?」とか言ってくる人とは一生口をきかない。私、20代の頃に3回死にかけてて。
しをりん:えーなんで?
エリイ:カンボジアで制作してるときに、牛の腸みたいなものを食べて髄膜炎にかかったりしたの。例えば『地球の歩き方』に「この場所では絶対に水を飲まないでください」とか書いてあるじゃん。それを読んでるのにその辺に溜まってる雨水とかガンガン飲んじゃうんだよね。「だって、現地の人はみんな飲んでるんだから大丈夫でしょ!」と思って。そういう甘い気持ちが死を招くんだけど。
未完成:(笑)。
ゆりしー:親の言うこと聞かないのに『地球の歩き方』の言うこと聞くわけないよねえ(笑)。
飽きたと思ってしまうのは自分の探求が足りないからだと思うな。
ゆりしー:Chim↑Pomをやめようと思ったことはないの?
エリイ:はじめの頃はあったかも。でも本格的にそう思ったことはないかもね。だってChim↑Pomをやってると面白いことに遭遇するんだよね。Chim↑Pomのメンバーとは、アートをやるために集まってなかったら、友達ですらなかったと思う。でもアートをやるうえでは、このメンバーでいると、自分一人では絶対に考えつかないことができる。あと私、ひとつのことをやり続けるのは得意だけど、やめるのは苦手なの。だからお酒もずっと飲み続けちゃうし、好きな作家の本は全部読んじゃう。
ゲッツ!:続けることに飽きたりはしないんだね。
エリイ:それはないね。私、同じ友達と1000年遊んでてもきっと飽きないと思う。例えば同じ人とセックスし続けて飽きたとしたら、それは試し不足だったり、自分の知識や努力が足りないせいなんだって本で読んだ。それは何についてもそうで、飽きたと思ってしまうのは自分の探求が足りないからだと思うな。
ゲッツ!:唐突だけどエリイちゃんのなかで一番の「悪」って何?
エリイ:一番の悪はぬるいってことだね。
ゲッツ!:わかる~。牛乳もぬるいのが一番よくない。
一同:(笑)。
エリイ:聖書にも書いてあったよ、「冷たいか、熱いかがいい」って。
※「わたしは、あなたの行ないを知っている。あなたは、冷たくもなく、熱くもない。わたしはむしろ、あなたが冷たいか、熱いかであってほしい。このように、あなたはなまぬるく、熱くも冷たくもないので、わたしの口からあなたを吐き出そう。」(黙示録3:15〜16)
あとね、自分で考えないで人の意見を鵜呑みにして、さも自分で考えたかのようにするのはよくないね。私もやっちゃうけどね。
しをりん:でも、今ってきっとそういう人がすごく多いじゃん。ネットもあるから、いろんな意見を簡単に手に入れられるし。人の意見をパクってることにちゃんと気づいて、自分の意見を持とうとするのってすごく難しい。
ゲッツ!:でも、いろんな人から与えられたりぶつかって考えたりした思想のハイブリッドが自分だから。そう考えると自分の意見ってないのかもしれないと思ったりもするけど、どこまで行ってもハイブリッドなんだったら、よりよいものにしていきたいなと思うよね。
エリイ:いいねえ、いい言葉。
しをりん:エリイちゃんはこれまでインタビューしてきたなかで、圧倒的に働くっていう概念がない人だった。これまで『何ぞや』に出てくれた人は仕事にしようと思って、今の場所にいる人が多かったから。
ゆりしー:息をするのもだるいと思ってるのに、こんなに能動的に活動してる人っていうのが超レアだと思う。
エリイ:だるさを極めてるから。だってさー、一番だるくなくない? こうやって生きるの。
しをりん:そう言われて、なるほど! って思った。だるいから本当に何もしない人はいっぱいいるけど。
エリイ:本当は私もそれが一番いい。
未完成:(笑)。
エリイ:でも、好奇心が超旺盛なんだよね。好奇心は追求していきたい。本当は何にもしたくないけどね~。
ゆりしー:今日「だるい」って何回聞いたかな(笑)。一晩で「だるい」って聞いた最多かも。
しをりん:「だるい」の可能性を感じたね!
エリイにとって「働く」とは?
「だるい」 エリイ(Chim↑Pom)
(「『る』がへたくそなんだよねー」と言いながら裏面にたくさん練習してくれたエリイちゃん)
本日のお会計
合計:10,600円
おしい……! おしすぎる。たかが600円、されど600円。塵も積もれば600円。
今回のお店
人間レストラン
住所:東京都新宿区歌舞伎町1-13-11 甲斐ビル4F
厚揚げソムリエ・ゲッツ!の厚揚げオットセイのお酒ログ
人間レストラン
★★★☆☆ 3.0/薬味/ソーダ割り
いつか死んだ時は棺桶に入れて欲しいと友人に遺書を託すほど厚揚げを愛している私ですが、ぶっちゃけ厚揚げの美味しさの7割は薬味だと思ってます。厚揚げ好き、つまりは薬味好きな私が今回いただいたのは、薬味酒「オットセイのお酒」。ちょっと調べてみたところ、昭和10年から夜の友と飲み継がれているようです。ちなみに同じく「オットセイのお酒」を飲んだぴっかぱいせんと、うっかり朝まで飲み明かしました。さすがオットセイ。やる気まんまん! ソーダ割りでどうぞ。
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