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チーム未完成の「働くとは何ぞや」第一回
ゲスト:刺繍作家・小菅くみ

「貧乏でもいいから面白いことやろう」って思う

連載:チーム未完成の「働くとは何ぞや」
インタビュー:チーム未完成(しをりん、ゆりしー、ぴっかぱいせん、ミツコッコー) テキスト:ゆりしー 撮影:ぴっかぱいせん 編集:竹中万季
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「あの人、いったいどうやって食ってるの?」って感じの人、いませんか?

どうも、チーム未完成と申します。しをりん、ゆりしー、ぴっかぱいせん、ミツコッコーの落ち着いた大人の女性4人組で、「クリエイターごっこ」と称して、ものを作っては細々と売ったりしているのですが、そんな活動をしていると、ぶっちゃけ私たちと同じように、さほどお金にはならなそうなことをしているように見えるのに(失礼)、いったいどうやって食って生き延びているのか。ハローワークやリクナビ経由では就くことが叶わなさそうな働きかたにどうやって辿りついたのか。そんなことが気になりまくってしまう、いわゆる「クリエイター」と呼ばれるような人たち、あるいはその周辺でお仕事をしている人たちがいっぱいいるなあTOKYOよ! とつねづね思っていました。

この連載では毎回そんな人たちをゲストに招いて、安くてうまい大衆酒場でダラダラ飲みながら、働くとか、仕事とか、生きてくこととかに関するよもやま話をしてゆきます。ちなみにひとつルールがあって、それは毎回、全員分の飲み代を1万円以内に収めること!

第1回目のゲストは、刺繍作家の小菅くみさん(実はミツコッコーとは学生時代からのマブダチ)。どう考えても手がかかりまくる繊細な刺繍を、すべて手作業で紡ぎ出す小菅さん。刺繍作家になるまでにどんな道のりがあったのか、そして「小菅さんといえば」なイメージのある猫刺繍に対する意外な想いなどを、キンミヤをがぶがぶ飲みつつお話してくれました。

もしもこの連載がどこかの誰かにとって、しなやかに図太く生き延びるためのヒントになったりならなかったりしたら最高です。

刺繍の納品前になると、アリナミンAをがっつり飲んで、「17分だけアラームかけて寝よう……」とか(笑)。

小菅:このチーム未完成スウェットで集まっているの、文化祭感あるねー。しをりんは髪濡れてて風呂あがり感がすごいけどどうしたの?

しをりん:このお店の隣の「千代の湯」に入ってきたんだよ。家の風呂が壊れて水しか出なくなって。めちゃくちゃいい銭湯だった!(と言いつつビールをつぐ)

グラスがキンキンにも程があるくらい冷えまくっていた

ぱいせん:風呂上がりにビールとか一番いいね。

ゆりしー:お腹空いたー。

ミツコッコー:私は厚揚げさえ頼んどけば大丈夫。じゃあとりあえず乾杯で。

一同:かんぱーい!

左から、ミツコッコー、ゆりしー、小菅くみさん

小菅:いきなり逆質問してもいい? なんでチーム未完成はこのメンバーなの?

しをりん:みんなそれぞれ私の友達だったんだけど、もともと私とゆりしーが退屈してたOL時代に「何かやりたいね」ってことで始めて。最初はケータリングユニットを2人でやろうとしてたの。

ゆりしー:パンを使ったケータリングをやろうとしてたんだけど、それは1回試作をしただけで終わって。

しをりん:困って、助っ人として写真が撮れるぴっかぱいせんを招集して、3人で飲んだ帰り道、気がついたら街中でパンを投げて写真を撮ってた(笑)。その後、「面白い女がいる」ってみっちゃん(ミツコッコー)をみんなに紹介したの。

小菅:(笑)。チーム未完成はいつのまにやら大きくなってる気がする。

ゆりしー:大きくなってないよ(笑)。自分たちで言いふらしてるだけだと思う。

しをりん:儲かるようなシステムにはできてなくて。いただいたお話をなんとかこなしてる感じ。

小菅:私も! だから受けすぎて、てんてこまいになっちゃう。

ミツコッコー:でも私たちの場合はステッカーを量産したりできるけど、刺繍は手を動かさなきゃいけないから大変じゃん?

小菅:だから納品前になると、アリナミンAをがっつり飲んで、「17分だけアラームかけて寝よう……」とか(笑)。最近はあまりに体に堪える仕事はお断りしてるけどね。

ゆりしー:一応ざっくりこの連載の説明をしておくと、チーム未完成をやっていると、クリエイター的な人にたくさん出会うんだけど、みんな実際のところどうやって食べてるんだろう、どんな風に仕事してるんだろうっていうことを知りたいね、っていう話を前々からチーム未完成でしていて。この連載を機に話を聞いてみようと。それは私たちにもブーメランで言えることだと思うんだけど(笑)。そして、飲みながらできたら最高だよねっていうことで、毎回飲み屋でやることにしてるんだけど、飲み代の予算が全員分で1万円だから、その予算内に収めようとがんばるっていう遊びも入ってるの。

ぱいせん:うちらは無駄に4人もいるからね(笑)。

自分が欲しいものを作ってたら、友達に頼まれるようになった。

小菅:そうそう、気になってたんだけど、チーム未完成はお給料というか、グッズの売り上げとかはどうやって分けてるの?

しをりん:新しく何か作るとそこに消えていくし、今はまだみんなで分けるところまでいってなくて。だから去年みんなで売上金を使って伊東に慰安旅行に行ったくらいかな。あとはこないだソウルのアートブックフェアに出展したんだけど、こつこつ貯めた「チーム未完成貯金」で飛行機代がまかなえたのー。

手っ取り早く酔っ払うためにキンミヤをボトルで投入

ぱいせん:くみちゃんはもともとどんな仕事をしてたの?

小菅:大学で写真学科にいたから、プロカメラマンのためにフィルムを焼く会社を教授が紹介してくれて、そこに入ったの。だけど、入社後に当時の彼氏とスノボに行ったら肋骨を折って、両脚も痛くなっちゃって。肋骨はなんとか治ったんだけど、脚は2か月くらい経っても痣が全然消えなかったから、大きな病院に行ったら、実はベーチェット病っていう難病だったの。

ゆりしー:スノボがきっかけで発覚したんだ。

小菅:そこからどんどん体調が悪くなるし、立ち仕事だったから働けなくなって、仕事を辞めて一回入院したの。それで良くなったから、退院後に「まずは郵便局で『ゆうメイト』だ!」と思って、半年くらいやって。次に、不動産関係のデザイン事務所に入ったんだけど、そこはたった1か月で社長が夜逃げして、お給料ももらえなかった。その後に、今度は無印良品に契約社員として入ったの。無印はみんなめちゃくちゃいい人で仕事も楽しかったんだけど、また病気がひどくなってきたこととかもあって退職して。

ぱいせん:刺繍はいつから始めたの?

小菅:入院した頃に始めたの。そのうち友達がお膳立てしてくれて、ギャラリーとかカフェに置いてもらえるようになった。

ゆりしー:猫の刺繍が多いのは飼ってるからなの?

小菅:私が仕事として刺繍を始めた6、7年くらい前は、今と違って猫のアイテムが世の中に全然なくて。土産物屋さんにあるような、ちりめんで作られた雑貨とか、鍵盤に猫が乗ってるデザインみたいなかっこよくない物ばかりだったの。

しをりん:猫ブーム前夜?

小菅:そうそう。だから自分が欲しいものを作ってたら、友達にも頼まれるようになって、だんだん猫の物が多くなってきちゃって。猫だけが作りたいわけじゃないけど、猫の需要が多いの。猫ブームは長く続いているみたいで。

小菅くみさんの猫ブローチ

しをりん:正直、猫はちょっともういいやって感じなの?

小菅:猫は自分が好きだから縫ってるけど、「猫は儲かる」みたいなことを言う人もいて、そう言われると何か違うし、一生猫だけじゃなくていろいろ縫いたいしね。

ゆりしー:そうだよね。私たちも一生パンは嫌だし(笑)。

「ラッセンが玉置浩二と抱き合ってるのがいい」って友達に言われて、そういうのが縫いたいと思った。

しをりん:ちなみに今、一番縫いたいのは何?

小菅:ラッセンとイルカが戯れてる図を縫いたくて。それを友達に話したら、その子に「ラッセンが玉置浩二と抱き合ってるのがいい」って言われて。

未完成一同:(爆笑)。

小菅:最高、と思って。私、そういうのがやりたいんだなって。青田典子はラッセンが好きすぎて、ラッセンにヌードを描いてもらったことがあるんだよ。

ゆりしー:そこで玉置浩二との線が結ばれるんだ(編集部注:青田典子さんと玉置浩二さんは結婚されています)。それってめちゃくちゃ見てみたいけど、くみちゃんの猫の刺繍が好きな人はびっくりするんだろうね。

小菅:このマイケルも、最近洋服に縫ったんだけど。

ぱいせん:これ最高だよね。

しをりん:これくらい大掛かりだと何日くらいかかるの?

小菅:A5くらいのサイズなんだけど、寝ないで2日とか。

しをりん:えー、早いね! ちなみにこのサイズをオーダーしたら、おいくらなの?

小菅:これは雑誌に載せるために作ったから販売しなかったんだけど、もし売るとしたら……って考えたりもする。

ゆりしー:刺繍の金額ってどうやって決めてるの?

小菅:私、最初はすごく安くしてたの。自信がないから。でも、お店に委託すると手数料も取られるし、他の作家の人に「相場があるから」って言われて。アクセサリーだから、価値がないと着けてる人も嬉しくないし、ある程度の金額の方が大事にしようと思ってもらえるから、その分、丁寧に作るのをがんばろうと思って。でも値段を自分で決められなくて、他の人にお願いして付けてもらったりしてる。

ぱいせん:分かるなー。あっ、ちなみに今お会計はいくら?

しをりん:5700円くらいだから、まだ頼めるよ!

ゆりしー:もっと食べたい! そういえばさっき、みっちゃんが頼んだ厚揚げがまだ来てないね。

この時点でお会計5700円。まだまだ頼める\(^o^)/

ぱいせん:みっちゃんは棺桶に入れた後、厚揚げを鼻に詰めてほしいんだもんね。

ミツコッコー:くみはホタルイカだよね。

小菅:周りには牡蠣を敷き詰めて。

ゆりしー:火葬場で焼いたらいい匂いしそうだね。

しをりん:ぱいせんは何入れたいの?

ぱいせん:栗だね、今のところ。レバ刺しでもいいなあ。

ゆりしー:私はハマグリ。

しをりん:銀鱈の西京焼きかな。

ミツコッコー:(ちょうど出てきた厚揚げを食べながら)やばい、この厚揚げはだいぶいいですね。

しをりん:確かにおいしい! いいお店だな。

ミツコッコー:褒めてもらえてよかった。

小菅:まるで厚揚げを開発した人のようだね。

ミツコッコー:ここの厚揚げは絹なのがいいね。私、最近、絹に衣替えをしたんだよね。

しをりん:衣は変わってないから(笑)。内側だから。

ミツコッコー:心の衣替えをね。

ゆりしー:宗教を変えたんだね。

ぱいせん:普通もうちょっと固いよね? 大体木綿がちだもんね。

ゆりしー:(木綿がち??)

しをりん:みっちゃんはそんなに厚揚げが好きなら、もっとそのことを発信していった方がいいんじゃない?

ぱいせん:言い続けてたら誰か見つけてくれるかもしれないよ。

ゆりしー:「厚揚げソムリエ」的な。そのうち『タモリ倶楽部』とか出られるようになるかもしれないし。

小菅:厚揚げに合うお酒を提案したりね。

ミツコッコー:大体瓶ビールだけど(笑)。

小菅:来年の名前は「厚揚げっちゃん」でいいんじゃない?(※ミツコッコーは毎年元旦に改名しています)

「get chance げっちゃん(みつこ来年の名前) 厚揚げっちゃん 上っちゃん下っちゃん(アッチャンゲッチャン)」と、メモ。毎年こんなノリでみつこの名前は決められてゆく

PROFILE

小菅くみ
小菅くみ

1982年生まれ。刺繍作家。刺繍ブランド『EHEHE』の刺繍を中心とした作品を製作。ほぼ日刊イトイ新聞の“感じるジャム”シリーズでは、ジャムのレシピ製作を担当している。

チーム未完成
チーム未完成

しをりん、ゆりしー、ぴっかぱいせん、ミツコッコーの落ち着いた大人の女性4名によるクリエイターごっこ集団。各々が、写真、デザイン、似顔絵、ライティング(文章)、番組構成、音楽制作、DJ、ガヤなどの一発芸を持ち、2014年夏に渋谷センター街に彗星の如く出現した気でいます。パンと書かれたステッカー、パンのZINE、パンのグッズ、パンのアパレル、パンの楽曲等を次々と発表し、主にアートイベントの賑やかしとして活躍しています。最近、映像制作にも手をつけ始めました。

INFORMATION

連載:チーム未完成の「働くとは何ぞや」
連載:チーム未完成の「働くとは何ぞや」
「どうやって食ってるの?」って人に酒の力を借りてねほりはほり切り込む

第一回ゲスト:刺繍作家・小菅くみ
第二回ゲスト:伊波英里
第三回ゲスト:LIP・田中佑典
第四回ゲスト:とんぼせんせい
第五回ゲスト:エリイ(Chim↑Pom)
第六回ゲスト:犬山紙子

チーム未完成の「働くとは何ぞや」第一回ゲスト:刺繍作家・小菅くみ

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ゲスト:刺繍作家・小菅くみ

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