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チーム未完成の「働くとは何ぞや」第五回
ゲスト:エリイ(Chim↑Pom)

息をするのも超だるいけど能動的に動き続ける理由

連載:チーム未完成の「働くとは何ぞや」
インタビュー:チーム未完成(しをりん、ゆりしー、ぴっかぱいせん、ゲッツ!) テキスト:ゆりしー 撮影:ぴっかぱいせん 編集:竹中万季
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日本の、東京で観測できる範囲で申しますと、こないだまで長袖の上着着てたのに、いつの間にか暑いわじめじめしてるわで、愛なんていらねえよ、夏(いるけどね)的な気候ですね。

さてさて、とくにお伝えすべきこともしたいこともないのですが、ご挨拶なしに本題に入るのもあれなのかしら、ということを考えてみたりする程度の凡庸な社会性を備えたチーム未完成です。

この連載では、我々チーム未完成が毎回気になる方々をゲストにお呼びして、お酒を飲んだり飲まなかったりしながら働くことや人生についてざっくばらんにお話ししています(全員分の飲み代を1万円以内に収めるというルールも一応あったりします)。

第5回を迎えたこのたびは、アーティスト集団・Chim↑Pomからエリイちゃんが登場してくれました! やったね! この連載はいつも全体的に茶色目の居酒屋からお届けしているのですが、今回はエリイちゃんのパートナーである「Smappa! Group」会長の手塚マキさんのお店、歌舞伎町の「人間レストラン」にお邪魔してきました。

煌々と光るネオンの狭間に置かれた黄色い看板が人間レストランの目印。

カトリック系の学校でキリスト教の考え方が叩き込まれていて、それが私の人間性の根底にあるかもしれない。

ゆりしー:この連載では毎回チーム未完成が気になる人をお招きしているのですが、芸術家ってどうやって暮らしているのか、多くの人からは見えづらい職業かもしれないなと。

しをりん:絵を描く人やものをつくって売っている人はどうやってお金になっているかがなんとなく見えるけど、Chim↑Pomはそうじゃない作品が多いから余計に。

エリイ:そうだよね、よく聞かれる。

エリイちゃん。ナイスな虎はなんと今日で着続けて5日目とのこと!(見えない……) 理由は「選ぶのがだるいから」。

「Sukurappu ando Birudoプロジェクト」
(新宿の歌舞伎町商店街振興組合ビルでの個展「また明日も観てくれるかな?So see you again tomorrow, too?」)2016

アーティスト集団Chim↑Pom(チンポム)が2016年に開始した、東京の「スクラップ&ビルド」をテーマに、「2020年の東京オリンピックまでに」をスローガンに再開発が進む東京の都市の姿を描いたプロジェクト。
2016年10月に新宿の歌舞伎町商店街振興組合ビルでの個展「また明日も観てくれるかな?」、2017年7〜8月に高円寺のキタコレビルでの個展「道が拓ける」の開催と、それに伴う2つのパフォーマンスイベントから、同月の書籍『都市は人なり』刊行までが一連のものとなるが、その最終形は将来の再開発に委ねられている。
プロジェクト名の「Sukurappu ando Birudo」は、スクラップ&ビルドが和製英語であることを踏まえ、ローマ字で表記することにした。
Photo:Kenji Morita
Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

「Non-Burnable」2019
Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

広島には大量の折り鶴が世界中から送られてくる。千羽になったときに願いが叶うという言い伝えに基づいて、被曝により白血病になった広島の少女が平和と健康を祈って折り続けた実話に由来する。以来何十年もの間にたまった膨大な千羽鶴は、一羽一羽に祈りが込もったまさに世界平和への希求を形にした世界的なプロジェクトだ。
しかし実は広島市は捨てるわけにもいかないとそれらの保存に苦心しているという。
プロジェクトは、
○広島市から大量の折り鶴をもらう
○それらをエリイが一羽ずつ元の一枚の四角い折り紙に折り戻していく。
○四角い状態に戻されたそれらの折り紙で、観客は再び鶴を折る。
○それらの折り鶴をまた広島市に送る。
ことを繰り返していく。
平和という意味を持った大量の折り鶴を、紙という無意味に一羽ずつ戻していくChim↑Pom。その折り紙をリサイクルすることで「世界平和の再制作」に取り組むのは、そもそも大量の鶴の送り元であった世界中の人々だ。この「行為」だけが増え続ける平和と破壊の無限ループのスパイラルは、まさに人類の永遠の課題である「世界平和」を批評し続ける終わりなきプロセスなのである。
素材提供:広島市

しをりん:エリイちゃんって子供の頃はどんな子だったの?

エリイ:幼稚園から高校まで、カトリック系の学校に行ってたの。だからキリスト教の考え方が叩き込まれていて、それが私の人間性の根底にあるかもしれない。

ゆりしー:カトリックの学校で培われた人間性って具体的にはどんな部分?

エリイ:やっぱり「汝の隣人を愛せ」ってことかな。性格はずっとこんな感じだし、高いところに登ったり、泳いだりするのが好きで、めっちゃ活発だった。体育の授業とかは全然好きじゃなかったけどね!

しをりん:やらされるのが嫌いだったんだ。

エリイ:やらされるの、超嫌い。中学と高校の6年間で一回も国語の授業で起きてたことがないのに気づいて、最後の授業で今回だけは起きてみようって試したけどやっぱり寝ちゃった。

ゆりしー:高校までの学校の授業って、大体が受動的だからかな。

エリイ:確かに、だからかも。

エリイちゃんと一緒にメニュー選び。炭水化物でお腹いっぱいにする作戦を決行する。

1人だったらマジで生きていけないと思う。でも、仲間がいればなんとかなる可能性もある。

しをりん:高校生の頃はものをつくったりしてたの?

エリイ:16歳くらいからギャラリー巡りをしたりしてて、3歳の頃からずっとピアノを習ってたんだけど先生に美大を勧められて。それで美大の存在を知って、美術予備校に行き始めて、一浪してムサビ(武蔵野美術大学)に入ったの。

しをりん:へー、ピアノの先生の勧めなんだ。

エリイ:ピアノは全然上達しなかったからね。

しをりん:先生も違う方向に進んだ方がいいって思ったのかな(笑)。

ゲッツ!:Chim↑Pomのメンバーはどうやって集まったんだっけ?

エリイ:うちのリーダー(卯城竜太)が集めたの。私は会田誠さんの絵のモデルをやっていたりしてて、ほかのメンバーとは会田さんの制作の手伝いをしたりしててギャラリーで知り合った。メンバーのうち2人くらいとはChim↑Pomとして集まるまで喋ったこともなかったな。ちょうど大学3年生で結成した。

ゆりしー:就活しようって思ったことはあったの?

エリイ:一度もないなあ。

ゆりしー:その時点でアートで食べていこうっていう決意が固まっていたのかな。

エリイ:まずどこかに就職して毎日同じところに行ったりするのは不可能だと思って。朝起きることがまず絶対に無理だから。

しをりん:それをグループでやろうと思ったのは?

エリイ:1人で生きていくのが辛いから。

未完成:(笑)。

エリイ:1人だったらマジで生きていけないと思う。でも、仲間がいればなんとかなる可能性もあるかもしれないと、若かりし頃の私は思ったの。

ゆりしー:生存戦略として。

しをりん:うちらもそれに近いかも。

人間レストランから見下ろすロボットレストランのあかり。

私はたまに息をするのも超だるい。だけど、一緒にやるメンバーがいればなんとかベッドから起きあがることもできるかもと思って結成された。

ゆりしー:結成して、最初の頃ってバイトとかしてたの?

エリイ:オカヤン(岡田将孝)は葬儀屋やってたな。土木工事をしてたメンバーもいた。私はキャバクラの客引きをしたり。キャバ嬢は私の性格的にむずかしいなと思って客引きならできるかもと。結構長い間やってて、すごい引けて、超重宝されてた。

ゆりしー:「すごい引けて」っていいね(笑)。

ぱいせん:それは歩合制的な。

エリイ:そうそう。だけど、そのキャバクラが風営法に引っかかって潰れちゃったの。その頃は500円くらいしか持ってなかったな。

しをりん:Chim↑Pomって制作のお金はどうやって捻出してるの?

エリイ:作品が売れたお金を貯めてそこから次の制作費に充てたり、私が外で得たお金を「Chim↑Pom貯金」として貯蓄しててそこから出したり。

ぱいせん:未完成と一緒! 規模が違うけど(笑)。

エリイ:自分たちで展覧会を開くときは大きめの金額がかかるから私の「Chim↑Pom貯金」から最初に出してあとで返してもらう。例えば歌舞伎町でビルまるごとを使った展覧会で作品を作るために床をくりぬいたりするお金とか。

私の実家の敷地内に、おばあちゃんが死んじゃったあとそのままになっていた広い一軒家があるんだけど、メンバーの2人は去年までそこに住んでた。Chim↑Pomの会議が終わったあと、私は違うところに帰るんだけど、彼らは私の実家に帰るの(笑)。

私が知らないだけで副業してるメンバーもいるかもしれないけど、知らない。Chim↑Pomは、とにかくみんなだるがりなの。リーダーはそうでもないけど、残り全員はマジでだるがり。私はたまに息をするのも超だるい。すべてが超だるいの。だけど、一緒にやるメンバーがいればなんとかベッドから起きあがることもできるかもと結成された。

しをりん:ちょっとわかる。私たちもお互いのケツを叩きながらやってるから。

エリイ:うちのメンバーのケツは叩いても全然響かないけどね。私の話とかマジで馬の耳に念仏だから。

未完成:(笑)。

ずらりと炭水化物たち! カレーは、西所沢の名店「negombo33」のもの。美味。

PROFILE

チーム未完成
チーム未完成

しをりん、ゆりしー、ぴっかぱいせん、ゲッツ!の落ち着いた大人の女性4名によるクリエイターごっこ集団。各々が、写真、デザイン、似顔絵、文章、音楽制作、DJ、ガヤなどの一発芸を持ち、2014年夏に渋谷センター街に彗星の如く出現した気でいます。パンと書かれたステッカー、パンのZINE、パンのグッズ、パンの楽曲等を次々と発表し、主にアートイベントの賑やかしとして活躍しています。最近は海外のアートブックフェアに乗り込んだり、CHAIやDJみそしるとMCごはんのMV制作もやらせてもらって恐縮です。

エリイ

2005年、東京にて、卯城竜太、林靖高、岡田将孝、稲岡求、水野俊紀らとともに、アートコレクティブ「Chim↑Pom」結成。都市問題、広島、原発事故、移民などのテーマを扱いながら、時代の「リアリティ」に反応し、現代社会に介入したメッセージ性の強い作品を発表。ときに賛否両論を呼ぶ過激な表現となることもある作品で、社会現象化するほどの注目を集める。また高円寺のキタコレビルでアーティスト・ラン・スペースの運営や、企画展のキュレーション活動も行う。主な展示に“また明日も観てくれるかな?”(歌舞伎町振興組合ビル,東京, 2016)、“SUPER RAT”(Saatchi Gallery, ロンドン, 2015)、“広島!!!!!”(旧日本銀行広島支店,広島, 2013)、“Chim↑Pom”(Parco Museum, 東京, 2012)、“Chim↑Pom”(MoMA PS1, ニューヨーク, 2011)。グループ展に、“Don’t Follow the Wind”(東京電力福島第一原発の事故に伴う帰還困難区域内,福島, 2015)、“Zero Tolerance”(MoMA PS1, ニューヨーク, 2014)、“第9回上海ビエンナーレ REACTIVATION”(上海現代美術館, 2012)、“第29回サンパウロビエンナーレl – There is always a cup of sea to sail in”(サンパウロ, 2010)、“Biennale de Lyon 2017”(リヨン, 2017)など多数。著書に、2009年『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』、2017年『都市は人なり Sukurappu ando Birudoプロジェクト全記録』、2018年『にんげんレストラン』など。

INFORMATION

連載:チーム未完成の「働くとは何ぞや」
連載:チーム未完成の「働くとは何ぞや」
「どうやって食ってるの?」って人に酒の力を借りてねほりはほり切り込む

第一回ゲスト:刺繍作家・小菅くみ
第二回ゲスト:伊波英里
第三回ゲスト:LIP・田中佑典
第四回ゲスト:とんぼせんせい
第五回ゲスト:エリイ(Chim↑Pom)
第六回ゲスト:犬山紙子

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