第2回「育てる衣服」

草木染めの中でも簡単な「柿渋」で、服を染めてみよう

2019年9・10月 特集:よそおうわたし
連載:河井菜摘の「好きになるには理由が必要」
テキスト・写真:河井菜摘 編集:野村由芽
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私にとって白い服は鬼門だ。漆を扱うという仕事上、手のひらは汚れていることがほとんど。
洗ったつもりでも、机についていたものを拾ってしまって白い洋服を台無しにしたこと数知れず……。
数年前にも気に入っていた白い服を漆で汚してしまってダメにしてしまったことがある。
ほんのちょっとの小さな汚れであろうとも、白い服は目立つ。そんなとき、家に柿渋があって、いっそ染めてみようかな? と思い立った。

柿渋で服を染めたことのある人は多くないかもしれない。
でも実は草木染めの中でも簡単で、他の草木染めが退色していくものが多い中、柿渋で染めたものは風合いが育っていくように感じている。
普通、お洋服って買った新品のときがピークで、着れば着るほど「好き」の鮮度が落ちていくことが多い。
だっておろしたてが一番テンションが上がるし。
でも数年前に染めた柿渋のシャツは今、何とも言えない風合いに育って愛着が増している。

最近また、シミがついてしまって着ていない服を染めてみた。
ちなみに私は、柿渋を京都のこのお店で買っています。
ここは濃さの段階が2~5度から選べて、私は3度くらいを選んでいるのですが、500mlあれば夏物3~5着染められるかな。
Amazonとかネットで適当に見繕って別のところのものを買ったりすることも。

注意点として、柿渋は渋柿の青い実を発酵させた自然塗料なので独特の匂いがします。屋外で作業したり、換気をしっかりすることを推奨。
あと、染める生地は綿や麻などの天然素材を選んでください。

【染め方】
色がついても問題のない洗面器などで、柿渋をだいたい3~4倍に水で薄めて、ゴム手袋をした手で洋服をしっかりと揉み込みます(柿渋は素材を強くする性質があるから、原液で染めると布がパリパリになってしまうので注意)。

しっかり絞って染め残しがないか確認したら、あとはお日さまに当てるだけ!
草木染めにありがちな煮出しや媒染剤につける必要がありません。簡単でしょ?

お日さまに当てることで色も少し濃く変化して、気になる匂いは太陽と風の力で取れていくので、3、4日間くらい屋外で干し続ける。

その間にもう少し濃くしようかな? という服は、また3~4倍に水で薄めた柿渋で染めては干す……というのを繰り返して、好みの色みに仕上げていきます。

最後は水洗いしてまた天日干し、これで完成です。

初めはピンクみが強いのだけど、着続けて洗濯を繰り返すことでベージュがかった色合いに変化。
生地も麻のようなハリ感のある質感から着倒したデニムのような質感に少しずつ育っていく。

金継ぎもそうだけど、マイナスをプラスに変えられる手仕事が身近にあると暮らしというゲームの中でレベルアップしたみたいな気分になれる。自分の手を通して経験したモノコトはとても強い。

柿渋はこうやって布を染めること以外にも色々使ったりするのだけど、それはまたどこかで別の機会に。

注意点:
・基本的にしっかり日に当てて乾燥していればほぼ色落ちしませんが、しばらく洗濯は白物と分けてする方が無難かも?
・匂いが気になる人は無臭の柿渋もあります。ただ、風合いや柿渋の性能の強さが、匂いのあるものの方がいいような気が私はしていますが、専門店曰くどちらも変わらないとのこと。
・カバンなど絞りにくいものを染めるときは、刷毛を使って染めるのがオススメ。
・染めるときに自分の着ている服や壁紙などにつくと、なかなか取れないので注意して作業してください。
・鉄分と反応すると柿渋は黒くなってしまうので、鉄製の金具などがついたものも注意です。

PROFILE

河井菜摘
河井菜摘

1984年大阪生まれ。京都市立芸術大学、大学院にて漆工を学ぶ。
2015年に独立し漆と金継ぎがメインの修復家として活動。
陶磁器、漆器、竹製品、木製品など日常使いのうつわから古美術品まで1000点以上の修復を行う。
同じく2015年にInstagramをきっかけに購入した鳥取の山の家で過ごしながら、京都・東京・鳥取の3拠点生活を送る。
Instagram「買い物(かいもん)マガジン」主宰。
買い物(かいもん)マガジン

INFORMATION

連載:河井菜摘の「好きになるには理由が必要」
連載:河井菜摘の「好きになるには理由が必要」
漆と金継ぎ修復家で「買い物マガジン」
主宰でもある目利きの職人がえらぶもの

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