女子力より、人間力を。長田杏奈が提案する自分のためのメイク

女子力より、人間力を。
長田杏奈が提案する
自分のためのメイク

美のストライクゾーンを広げて、自分をちやほやしよう

2018年1月 特集:Dear コンプレックス
インタビュー・テキスト:野村由芽 撮影:鈴木渉
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新しい魅力の可能性は多分誰のなかにもあって、それはコンプレックスと背中合わせの存在が一番使えるんじゃないかな。

─自分でコンプレックスだと思っている部分を、チャームポイントに変えていくということですよね。なかなか難しいことだとも思うのですが、具体的にはどうしていったらいいのでしょう?

長田:ひとつは、たとえば目が印象的だったら目を強調する、というふうにパーツを活かすやり方がありますよね。あと思うのは、その時代の美しさの基準を更新してしまうのって、違和感ギリギリの個性を持った、引っかかりみたいなものを残していく人のような気がしていて。

たとえば、今は美しいとされているオードリー・ヘップバーンも、世に出てきたときは痩せっぽっちで目が大きすぎておかしいって言われていたんですよね。だからといって目を小さく見せるのではなく、眉を太く書くことで強調しながらバランスをとるという工夫をしていたんです。

─違和感は、工夫次第で武器になる?

長田:そう。みんな最初はびっくりしてザワザワするけど、それが妙にクセになって、「これが新しい時代の美なのかも?」とワクワクする。さっきのファム・ファタールの話じゃないけれど、すでに評価されている美しさに自分が近づこうとしているうちは見つからない、新しい魅力の可能性みたいなものは多分誰のなかにもあるんですよ。そしてそれは、コンプレックスと背中合わせの存在だったものが、一番使えるんじゃないかな。それをどう活かすか。

─最近だとバンドのCHAIや、女性の芸人さんたちは、コンプレックスをチャームポイントとしてうまく価値転換させていますよね(参考記事:森三中・黒沢×バービー×CHAI コンプレックスはアートでマネー!?)。自虐じゃない芸風の人が増えている印象があります。

長田:たとえば、Twitterで美容ネタをつぶやいたときに、容姿を自虐するようなアカウント名の人から「いいね」をされたりすると、そのギャップがすごく気になるんです。急にナルシストになれということじゃなくて、できれば自虐の分量を少し減らして、もうちょっとだけニュートラルな感じで名乗ってみて、そういう自分に馴れてもいいんじゃないかな? とか……余計なお世話かもしれないのですが。

自分のことで言うと、誰かに褒められたときに、反射的に謙遜したり卑下するんじゃなくて、恥ずかしくてもとりあえず「ありがとう」と言うように意識しています。蚊の鳴くような声でもいいから「ありがとう」と受け取って、3秒待つ。そうすると、焦って「いやいやそんなことないんですよー! 私なんて」って始めなくても、既に話題が変わっていたりして。謙虚の底が抜けちゃったような、過剰な「貶めグセ」「自分下げグセ」を矯正すること。そういう積み重ねが、小さいことだけど意外と大事なんじゃないかなって。

─自分を下げるほうがその場が楽というか、うまくまわるような気がしてしまうことってありますもんね。でもそこの意識を変えることが、自分を大切にすることにつながる。

長田:人間の認識ってふわふわしたものだから、自己否定や自虐を続けていると、まわりも「本当にそうかも?」と思ってしまうものですよね。それはもったいないなあと。「私なんて」って一節ぶったときに、「ほんとその通り!」って返されたら、たぶん傷つくわけで。気を遣ってフォローし合うのも、なんだかお互い面倒だし。

─たしかに……。

長田:だから、ブルゾンちえみさんが、ネタで「あ~、女に生まれてよかった!」と言っているのってすごくいいですよね。あのネタが流行り始めたとき、Instagramを見ていると、濃い赤リップを塗ったときに「ブルゾンになっちゃった。てへ」みたいに投稿している人をよく見かけたんです。ブルゾンさんをダシに軽~くハードルを乗り越えて、みんななんとなく楽しそう。自分を肯定する言葉や姿勢が起爆剤になって、それを真似する楽しさが広まっているのって素敵なことですよ。

美のストライクゾーンを広げておく作業が、きっと将来自分を助けることになる。

─大人になって役割が増えてくると、物理的に自分にかけられる時間が減ってきますよね。そういうときにどれだけ自分をないがしろにしないで大切にできるかということも、自己肯定感に繋がってきそうだなと思いました。

長田:自分が我慢すればうまくまわる場面ってたくさんあるけど、年をとればとるほど、いろいろ察してちやほやしてくれる人は減ってくるわけだから、自分を甘やかすことをほんのちょっとでも並行してやっておいたほうがいいと思います。

ご飯を食べないで集中すれば仕事は早く終わるけど、一回温かいものや、そのとき食べたいものを食べるとか。私は、息子と娘がいるのですが、小さいときは入浴後に子どもたちが風邪をひかないようにサッとタオルをかけつつも、自分の肌に化粧水や乳液をなじませる時間は捧げないようにしていました。

ものの1分待たせても何の気の毒なこともないし、先回りして最優先で世話を焼いたりしないほうが長い目でみると彼らのためにもなる。いい人や真面目な人ほど、役割のために自分のささやかな満足を後回しにし過ぎないように気をつけてほしいんです。そのほうが結果的にいい仕事ができるし、生活もうまくまわる。ピリピリしないで人にも優しくできるし、「こんなに尽くしたのに!」という地雷を持たずに済みます。

─自分を大切にできる人のほうが、結果的にまわりの人にも優しくできるというサイクル。

長田:これまでいろいろな人に取材したなかで、一番かっこいいと思って尊敬している、小林照子さんという80代のメイクアップアーティストの方が、そういう考えをお持ちなんです。若いときのように、まわりがちやほやしてくれないのなら、その分、自分で自分をちやほやして、楽しめばいい。女子力みたいなもので自分を語れなくなっても、人間力があればいいんだなってことを気づかせてくれた人。小林さんは、この前もタイで虎をなでていたんですが(笑)、全然守りに入らずに日々を楽しんでいるんです。

─たしかに若さゆえの煌めきもあるけど、人生は巻き戻らないから、自分より先をいく人のなかに、かっこいいなと思える人を見つけられたら希望になりますよね。

長田:「年を重ねた人ならではの美しさがある」みたいに、最初は綺麗事や建前から始まってもいいんですよ。さっきのアメリカの多様性の話じゃないですけど、理想を理屈として頭に入れて、そういう目でいろいろ見ていくと、これまで見つけられなかった美しさが見える瞬間があるんですよね。自分の審美眼が豊かになってくるんです。

熟女の素敵さを知ったからといって、15歳の可愛さがわからなくなるわけではないし、だったら、いろいろなものを美しいと思えるほうがいいですよね。美のストライクゾーンを広げておく作業が、きっと将来自分を助けることになるから、「こうじゃなきゃいけない」っていう正解みたいなものをもしもって窮屈になっているなら、今から少しずつ広げていけばいいんです。たくさんの美しさを知っているということは、きっと豊かな人生に繋がると思います。

PROFILE

長田杏奈
長田杏奈

ライター。美容をメインに、インタビューや海外セレブなどの記事を手がける。趣味は女子プロレス観戦、北欧ミステリー、植物栽培。モットーは「美容は自尊心の筋トレ」。

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