相手がどう出てきても、自分でどうにかする力がついてきたと思えたから、結婚生活が送れるかもという自信になった。
兄妹にも相談し、決断した「結婚」。いま、さまざまな家族のかたちがあるなかで、青柳さんが「結婚」という選択を考え始めたのは27、8歳頃だったのだそう。
青柳:暮らしに飽きていたというか、自分の状況にちょっと満足している部分があったんですよね。ある程度、私のなかだけでどうにかできることや自分のことがわかってきた時期だったので、人と暮らしをつくっていく「結婚」にムクムク興味が湧いてきて。「結婚生活が送れるかも」という自信がつき始めていたんだと思います。
相手がどう出てこようとも、ある程度対応できるフェーズにきているんだなって感じたんです。たぶん、誰かと生きていくときに、相手にいろんなことを求めていたら、自分の希望が叶わなかったときに裏切られたような気持ちになってしまうじゃないですか。でも、「違った。こうじゃなかったのに」っていうときでも、自分でどうにかする力がついてきたと思えたから、結婚生活が送れるかもという自信になったんです。
「あと、時代も変わってきているから」と青柳さんは続けます。
青柳:これを言うと親族には心配されそうですが、誤解を恐れずに言うと、別に結婚しても一生続けなくていいじゃんって思って(笑)。離婚した人に話を聞くと「1回は結婚するのはありだよ」とかよく言うじゃないですか。離婚したあとに輝いている人もいるし、仮面夫婦になるくらいだったら別れてそれぞれいきいきしていたほうがいいと思います。私も片親だったからこそ得られた部分がたくさんあるし、子どももそれはそれで逞しく生きていくよねという親友の言葉も、ある意味保険になったりもして。
結婚していなくてもパートナーシップを結んで幸せに暮らしている人もいるし、同性同士で幸せな人もいるし、「結婚」っていう制度をそんなに重く考えなくていいなと思ったんです。ある意味いつでも別れられるからこそ、結婚という形に縛られることなく、「その人と一緒に生きていきたい」という本質的な動機がずっと保たれる限り、一緒にいられればと。結果、長く続けていけたら最高ですしね。
まず自分ありきですよね。お互い自立することだと思います。だから、「寄り添う」とか「嫁ぐ」とかって私にとってはあまりしっくりこなくて。
つい最近まで、「結婚」には、相手の家に入って養ってもらうイメージや、相手の道に寄り添っていくというイメージが色濃く残っていたのではないでしょうか。現在もその轍はまだ残っていて、でもそんななかで青柳さんは自分で道を拓けるからこそ、誰かと暮らすことを選びました。
青柳:まず自分ありきですよね。お互い自立することだと思います。だから、「寄り添う」とか「嫁ぐ」とかって私にとってはあまりしっくりこなくて。子どもの頃、母がひとりで4人育てたスタンスしか見ていなかったから、それが当たり前だと思っていたのも大きくて。パートナーはプラスαかなってもともと思っていたかもしれません。ただ、子育てに関しては青柳家もおばあちゃんが手伝ってくれていたし、できるだけ人と協力していけたらとは思いますけどね。
お母さんの姿を見ていたからこそ、夫が家にいることに「結婚して3年くらいですけど、いまだに動揺してますよ」と笑う青柳さん。家庭に新たな人物がいることが新鮮で、とても楽しめていると語ります。そんな青柳さんが目指すのは、「個人が対等である家族」なのだそう。
青柳:「お姉ちゃんばっかりずるい」とかじゃなくて、「お姉ちゃんはこうだけど、僕はこれがあるから」って平等に思い合えたらいいなと思います。それぞれに得意なことを増やしてあげたいし、夫婦間でも「夫に食べさせてもらっているから」とかじゃなくて、お互い好きなことを自由にして、支え合う部分は支え合いたい。
自分の足下がしっかりしていないと、手は貸せないじゃないですか。親子間でも、パパはパパというひとりの人間、ママはママの人生があるっていうのをわかり合えたらと思います。そうじゃないと子離れもできないと思うから、意識して子どもたちの人生に手を添えたいです。
家族って当たって砕けろだと思うんです。砕けてもいいんですよ。砕けても修復するから。
「家族って、そういうひとりひとりが集まったチームみたいな感じです」と話す青柳さん。そんな青柳さんと、今回She isの5・6月の特集「ぞくぞく家族」のギフトとして「家族のまんなかエプロン」をつくりました。
青柳:料理って体をつくっていくものだし、家族の雰囲気に影響したり、家族の核を担うものだと思うんです。だからまずは料理をつくる人の気持ちが上がらないと。泣きながら料理するシーンって、お母さんならきっとたまにあると思うんです。けんかしていても怒っていても、料理はする。そういうときに鏡に映った自分が育児に疲れて、オンボロだったらいやだから、少しでも気持ちを切り替えらるような「私が」楽しくなるようなエプロンにしました。
性別関係なく使用できるカラーリングと優しい風合い。料理のときはもちろん、庭仕事やお掃除のときにも心をあたたかく緩ませてくれそうです。「料理しているとちょっと込み上げてきちゃうときってありますよね」という青柳さんですが、家族に対しては本音をぶつけることを大切にしているのだそう。
青柳:家族って当たって砕けろだと思うんです。砕けてもいいんですよ。砕けても修復するから。まだ結婚していないカップルが、当たって砕けて修復しなかったら、それはそれ。そういう人と結婚しちゃったら辛いから、砕け散ったならむしろラッキーで、次の人を見つければいいと思います。未婚でも既婚でも、お互いの内面に好きなところがあって、信頼があるからそもそもの関係を築けていると思うんです。
そこに自信を持って、相手に遠慮せずに、信頼するという誠実さを持って向き合ったほうがいいなって。わかってもらえないかもしれないと思うということは信じていないということであって、それって失礼じゃないですか。だから相手を信じて、自分にも自信を持って、伝え合うことを意識できたらいいですよね。
青柳さんの妹さんは、本当に相手に伝えたいことは筆で楷書で書いて伝えているのだそう。「紙に書くと自分の思考も整理されるし、感情的にもならずに済みますよね」と青柳さん。家族ごとにそれぞれのコミュニケーションがありますが、青柳さんは「私の場合はやっぱり当たって砕けろですね」と続けます。
青柳:砕け散るくらいまで矢を放ってから、関係を修復するプロセスのときにお互いに冷静に言い合っていきます。感情的になっているときにはなにを言っても全然伝わらないから、いまは崩壊の段階を踏んでいると思って堪えて、相手を信じて鋭利な矢を放ち続けています。
相手が砕けちゃったら終わりですけど、私は相手を信じているから、そのプロセスでコミュニケーションすることをあきらめないで続けていけたらなと。ライフゴーズオンなので、長い人生のなかで、お互いに「わかり合えた」という瞬間を積み上げていけばいいんじゃないかなって思っています。
パートナーに本音をぶつけられるのは、相手を信頼していることはもちろん、自分の力で立っていられるからこそなのかもしれません。誰かに人生を委ねることよりも、それぞれの歩みのなかで豊かに交わる部分を増やしていくこと、まずは自分を、そして大切な人が倒れそうなときに支えられる力をつけること。その力を備えていないと、きっと本音をぶつけることも、相手を思いやれないような、ただの甘えになってしまいます。
ひとりひとりが独立しているからこそ、思い合えるし支え合える。血の繋がりだけでなく、そんなふうに思える人たちのことを「家族」と呼ぶのかもしれません。相手を信頼する強さを手にいれたとき、きっと家族との素敵な未来が描けるのではないでしょうか。
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