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日々のルーティンを楽しむ。よしいちひろの生活の視点の切り替え

日々のルーティンを楽しむ。よしいちひろの生活の視点の切り替え

機嫌がいいことで、家族にも心地よさを還元できている

2019年5・6月 特集:ぞくぞく家族
インタビュー・テキスト:飯嶋藍子 撮影:佐藤麻美 編集:竹中万季
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育児って自分だけでどうにもならないことの連続で、それがひと段落したときに、なんだか自分に諦めがついた。

その頑張りは「このまま仕事がなくなったらどうしよう」という不安が原因だったと、当時の自分を振り返ります。

よしい:「ママ」になったら子どもありきの自分になってしまうんじゃないかということが不安でした。たとえば、SNSのアイコンを子どもの写真にしているママが多いことに悪態ついたり(笑)。当時はとにかく子育てというものに対してモヤモヤした気持ちがあって、「ママ」というものを斜めに見ていたんです。子どもが生まれてほっこり、みたいに思われるのがいやだったんですよね。なんででしょうね。

子どもをつくるかどうかもとても悩んだそうですが、家族が増えることに。出産後、よしいさんのモヤモヤした気持ちを救ったのは、仕事であり、斜めに構えた過去の自分への大切な思いでした。

よしい:自分が実際にお母さんになるまではステレオタイプの「ママ」像が強かったけど、自由なお母さんでいてもいいんだなって。「じゃあ、いいか!」っていう気持ちになれました。

思えば出産前の自分は「こうなりたい自分」に追いつきたくてずっと必死だった気がします。生んだ直後も「生む前の私に恥ずかしくない自分でいたい」という思いが強かった。でも出産・育児を経て、育児ってとくに自分だけでどうにもならないことの連続で、それがひと段落したときに、なんだか自分に諦めがついたというか。それは自分を良い方向に持っていってくれたと思います。「私は私でいい」って初めて思えるようになった。それは子どもを育てながらもちゃんと楽しい仕事が続けられたおかげだとも思います。

ヨーロッパの人がマルシェに行く姿に昔から憧れている。

悩み、不安になりながらも、自分のスタイルを見つけていったよしいさん。そんなよしいさんとつくった『マルシェに想いを馳せたマルシェバッグ』にも、自分で見つけていった心地いいスタイルと、「物欲番長」を自称するよしいさんの欲望が詰まっています。

よしい:絶対に自分がほしいものをつくりたいなって思って。持ち手を二つつけたところはこだわりのポイント。私は自転車でスーパーに行くので、いっぱい買い物をして自転車を漕ぐために肩掛けバッグとしても使いたくて。内側のポケットに収納してコンパクトに持ち歩きたかったのと、汚れても気にせず洗えるものがいいなと思ってナイロン素材にしました。ちょっと蝋引きみたいなマットな感じのナチュラルさが気に入っています。

ナチュラルな雰囲気のロープの持ち手と、斜めがけできる長めの持ちての二つがついています。

内側のポケットに収納すれば、手のひらサイズに。

カゴバッグのラタン網をモチーフにしたという柄も、よしいさんのこだわりのひとつ。

よしい:マルシェバッグと言われたときに、ヨーロッパの人がマルシェにお野菜を買いに行くようなカゴバッグをイメージしたんです。そういう姿に昔から憧れているので、妄想できるような柄にしようと思って。お買い物はもちろんですけど、大きさもあるので、おもちゃをいっぱい詰めて公園やプールに行くときとか、いろんな家族とのシーンに使えそうで、私も使うのが楽しみです。

機嫌がいいということは、家族全員にとって幸せなこと。

食材の買い出しなど代わり映えのない作業になりがちなことでも、一緒に連れていくアイテムをお気に入りのものにするだけで、少し気分が明るくなりそうです。このバッグが実現したのも、よしいさんが「なにごとも楽しみたい」という意識を持っているからかもしれません。

よしい:やっぱり、根っからなにごとも楽しみたいんですよね。あと、できるだけ自分の機嫌がいいようにしたい。子どもができてからは特にそれを意識するようになりました。親が「ダメ」と言わずに育ててくれたから今の私が自由でいられているので、私自身も子どもに「ダメ」と言いたくないんです。でも、すぐ「ダメ」って言いたくなる懐の小さい自分にがっかりすることもあって。

無理していいお母さんになろうとすると、相手が期待に応えてくれないだけで、がっかりしたり落ち込んだりしてしまうので、理想のお母さんになれなかったとしても、機嫌だけはよくしていたい。機嫌がいいということは、家族全員にとって幸せなことだと思っています。自分のお世話をしてくれたとしても、機嫌がイマイチな人と一緒に過ごすのは全然楽しくないですよね。好きなことをする時間をつくって、機嫌をよくしていることで家族にも心地よさを還元できていると思います。

階段横のエリアには、子どものつくった絵や工作がずらり。書き初めにも「機嫌」の言葉が。

自分の機嫌をいい状態で保つために「『好き』をすごく探求しています」と言うよしいさん。その探究心は子育てにも生かされています。

よしい:「好き」がその人をつくると思っているので、子どもにも「こっちとあっち、どっちが好き?」ってよく聞くようにしています。私はこれが好き、これが心地いいっていうのを、細かい部分までちゃんとわかっているほうが、自分の機嫌をよくできると思うから。自分にとって、なにが心地よくて心地わるいか、わからない人が結構いそうですよね。それをわかるだけで、ずいぶん変わると思います。

子どもにも「今、自分の機嫌が悪いのはなんで? 眠いからじゃない?」って今自分がどういう精神の状態かを考える時間をつくるようにしています。そういうときに「帰ったらアイスを食べようね」って言うと、子どもも「アイスが食べられるんだ」って安心して、機嫌がよくなってくれるんですよね。そういう毎日の小さな幸せが機嫌よくい続けるために大事な気がします。

大きくなにかを変化させなくてもいいのです。よしいさんが昔からできることだけをやっていたように、小さくても、ちょっとだけでも、機嫌がよくなることのかけらを集め、たくさん手の中に持っていられること。それが心地よく穏やかに暮らすコツなのかもしれません。

家族と過ごす場所をつくるのは、家そのものではなく、きっとあなたの醸し出す空気なのです。ひとりのときも、誰かといるときも、あなたのまわりが温かな空気につつまれ、その空気がだれかに伝わったら、その場所はもう、何物にも代えがたいホームになるはずです。

【後編】よしいちひろに聞く、どんなシチュエーションでも今を最大限楽しむコツ

マルシェバッグが入っている6月のギフト「ぞくぞく家族」のページはこちら(お申込みは6/30まで)

PROFILE

よしいちひろ
よしいちひろ

イラストレーター。1979年兵庫県生まれ、東京都在住。女性の憧れや日常を、やわらかくみずみずしいタッチで描く作風が人気を呼び、雑誌や書籍、広告などで幅広く活躍。リラックス感がありながら、エッジのきいたファッションやもの選びにも注目が。

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