どんな方にでも寄り添えるブランドになるために、妥協はしませんでした。(山﨑)
―長田さんや河村さんがおっしゃった「自分らしくあるために、自然のものを傍におきたくなる」という気持ちとも、つながっているように感じますね。「いち髪ナチュラルケアセレクト」は、具体的にどんなコンセプトでつくられているんでしょうか。
山﨑:いち髪シリーズは、とにかく「髪ファースト」なんです。古くから伝わる「一髪・二姿・三器量」という言葉にもあるように、身なりや器量よりも、まずは髪をいたわり、ケアしてもらうことを大切にしています。だからこそ、髪を命よりも大切にしていた平安時代の女性はどんなお手入れをしていたのか? という原点にたちかえり、和草やゆずのエキス*といった天然由来成分を採用しています。それにお風呂って、リセットするにはやっぱり特別な時間じゃないですか?
*補修・保湿成分:米ぬか、ツバキ、へちま(スムースに配合)、ゆず(モイストに配合)
長田:そうですね。外に出て疲れたり人間関係に消耗したりしたときは、とにかく帰って頭を洗いたいなと思います。髪の毛に、いやな気配や怨念みたいなものがこびりついてる気がして……(笑)。みそぎのような気持ちで、シャンプーしたくなる。髪を洗うのって、本当に「リセット」なんですよね。
山﨑:わかります。なので「いち髪ナチュラルケアセレクト」は、洗っているときの泡立ちや髪なじみの良さも追求しました。リセットやリフレッシュのためには、洗い心地って大切ですから。洗浄力が強すぎないアミノ酸系の洗浄成分*を選んで採用しました。
*ラウロイルメチルアラニンNa
長田:スキンケアも同じだけど、じつは「汚れを落とすこと」ってとても調整が難しいんですよね。洗い残してはいけないけれど、落としすぎるのもよくない。必要なバリア機能や潤いまで取り去ってしまうと、後からはなかなか補えないんです。私の場合は、疲れが頭皮のコンディションに出やすいこともあって……。
山﨑:疲れているときこそ、自分に合ったケアアイテムが必要ですもんね。既存の「いち髪」シリーズも丁寧につくってきたけれど、今回の「ナチュラルケアセレクト」は、さらに成分にこだわりました。100%天然由来香料を使い、敏感肌の方のパッチテストまで済ませている*のは、ヘアケア用品では日本初**なんです。
*すべての方に皮フ刺激が起こらないということではありません。
**Mintel Japan社データベース内 2018年8月 クラシエ調べ
長田:それはすごく素敵ですね。
河村:私が実際に使ってみて一番気に入ったのは、香りです。「モイスト」のシトラスフローラルが、すごく癖になる。すっきりしているのに、香りの奥にまた香りが重なっているようで……。
長田:シャンプーするときって感覚がひらくから、香りも重要ですよね。普段は食事をしながら話したり、音楽を聴きながらスマホを見たり、いろんなことを並行しているけれど、シャンプーのときってそれしかできないじゃないですか。マルチタスクの現代では、めずらしくて貴重な時間だと思うんです。そういうひとときに寄り添ってくれるプロダクトがいい香りだったり、優しい泡だったりすると、それだけで心地いい。
―シャンプーという時間に、五感で浸るような感覚ですね。
河村:とくべつ心地よさに浸りたいときは、いつもより丁寧なマッサージシャンプーをすることもあります。そういうときにも、泡立ちがいいと指が動かしやすいから、気持ちよさが倍増する。「いち髪ナチュラルケアセレクト」でも、もちろん試させてもらいました。
山﨑:「いち髪」シリーズはとても好評なのですが、だからこそ今回新しく「ナチュラルケアセレクト」を立ち上げるにあたって、プレッシャーがありました。これまで得てきた信頼のうえで、さらに中身をブラッシュアップしなければならない。価格帯と折り合いをつけながら、天然由来の成分を選び続けるのは、もちろん厳しい闘いでした。でも、成分や品質がよければ「誰にでも選んでもらえる」んです。どんな方にでも寄り添えるブランドになるために、妥協はしませんでした。
「自然体であること」「心地よくいること」を模索し続ける姿を、素直に見せていきたい。(河村)
長田:天然由来の成分を追求しているところもすばらしいけれど、「いち髪」の魅力って、そのスタンスにもあると思っています。周りに惑わされない、凛とした女性になるための「芯」を、応援してくれている気がする。自然体であることって、ススキや柳みたいにゆらゆら揺れているだけじゃないと思うんです。しなやかに揺れてはいても、そこにはきちんと「芯」があって、必要なときには主張もできるというか。
―そんな芯をつくるために、自分に向き合えるシャンプータイムや、お花を愛でる時間が役立ったりするのかもしれませんね。河村さんは、自分の芯をつくるために、もしくは周りの女性に芯をつくってもらうために、なにか心掛けていることはありますか?
河村:正直に言うと、模索中です。「自然体であること」「心地よくいること」をずっと考えてきているけれど、はっきりした答えは見つかってない。でも、私がこうして模索している姿を、周りにずっと見せ続けていこうとは思っています。
―たとえば、どんなふうに模索しているんでしょう。
河村:まずシンプルに、しんどいのはいやじゃないですか。でも私は、いま自分がどうしてしんどいのかを考えるのは好き。だから、自分がしんどい理由を取り除くためのやり方を、とことん考えていきます。
「お店は楽しいけれど毎日やるのはきついな……」と思ったら、周りにも素直に話す。初めていらしたお客さんに「お店、どうしたらいいかな?」と相談することだってあります。周りを信じてコミュニケーションしないとしょうがないし、いろんなアプローチを試してみるしか方法がないから。
それが許される規模のビジネスしかやらないことも、私の心地よさや芯につながっているかもしれません。今は毎日お店を開くことをやめたり、インディペンデントマガジンの制作をはじめたりしています。
―長田さんの場合は、著書『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)が広く読まれているぶん、アプローチがまた違いますよね。
長田:確かに、意図していなかった受け取り方をされて驚くこともあります。とくにインターネットはそういう声を文字で可視化するから、思わぬリアクションに傷つくこともある。
ネットははるか彼方にある霞のようなものを引き寄せて、濃く見せがちです。だけど、ちゃんと遠近感を持って接すれば、正体は遠いかげろうということもある。もちろんその中には耳を傾けるべき意見もあるけれど、適度な距離感を持って、自分のすぐ近くにいる人と話したり、日々手入れしているお花や苔玉を眺めたり、目の前にあるものに視線を戻すだけで救われることがたくさんあります。