日々の出来事にゆれ動く心や、そのときどきにうつろってゆく身体。強さとは、ぶれず傷つかないタフさを持つことのように感じたりもするけれど、柔らかいものほど折れにくいように、ざわめき、たゆたう感覚を保ったままだからこそ得られる、しなやかな強度がきっとあるはず。
今回She isでは、敏感肌研究から生まれたスキンケアブランド・freeplusがおくる「freeplus YELL project 2020」とコラボレーション。敏感な感受性を肯定し、一歩先へ踏みだそうとする人の背中を優しく押すこのキャンペーンと連動し、柔らかな感覚を持ってそれぞれの道を歩む3名の女性にインタビューを行います。
高校時代に発表したメイク動画が話題となり、紆余曲折を経て現在は喋る仕事を中心に活動しているまつきりなさんは、前回の記事(まつきりな、偽物の自分を崩す。「自分の感覚を信じて私らしくいたい」)でもお話しいただいたように、どこか自分を偽っていたことに気づいてから、素の自分で答えるお悩み相談で反響を呼んでいます。普段たくさんの方からの問いかけに答えているまつきさんが、今回は自分自身への質問を作成。まつきさんを形づくる5つの質問にお答えいただきました。
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お悩み相談を得意とするまつきりなさんが、自分から自分へ質問する
1.「もしもインターネットがなかったら、今どう生きていたと思う?」
─普段からお悩み相談に答えられているまつきさんに、現在のまつきさんと、これからのまつきさんをつくっていく鍵となるトピックを含んだ5つの質問を考えていただきました。この質問に、まつきさんご自身にお答えいただくという、ちょっと不思議な試みを行いたいのですが、まずは、「もしもインターネットがなかったら、今どう生きていたと思う?」という質問です。
まつき:ちょっと辛すぎますね(笑)。自分はインターネットから活動が始まった人間だし、SNSがあったからこそ繋がることができた人たちがいるので。
─SNSを使っていなかった頃は、どのような生活でしたか。
まつき:「つまんないなー」「バイトだるいなー」って毎日思ってました。脳内が本当につまらなかったです。でも、つまらないって言いながらも、なにかにチャレンジすることはすごく好きだったから、SNSがなかったとしても、周りの人にアドバイスをもらいつつ、自分が好きだと思うことにチャレンジしていたかなと思います。
─まつきさんはツイキャスから活動を始められましたが、もしも今SNSでの活動を始めたい人にアドバイスをするとしたら、どうしますか。あるいは、まつきさん自身が今から活動を始めるとしたらどうするか。
まつき:私は過去にモデルをやっていたこともあったので、最初は「自分はモデルである」ということを意識していた部分があったんですよね。でも、もしもそうじゃない状態から始めたとしたら、もっとポップになれたというか、はじけられたかなっていう気がするから、暴れるんじゃないですかね。
─暴れる。
まつき:やっぱり飾らないことが大事だと思うんです。私自身、親近感のある人の方が見ていて好きだし。
─さきほど、つくったキャラクターで人から評価されても嬉しくなかったとお話されていましたよね。
まつき:思っていることって、結局顔に全部出てしまうんですよね。楽しかったら楽しい顔になるし、悩んでいたら悩んでいる顔になる。かわいいって思われたいという気持ちはあるけど、人のかわいげって、話し方や素で持っている雰囲気にあると思うから、それぞれが自分の一番いいところを見つけて、プラスに膨らませたらいいんじゃないかなと思います。
2.「お笑いをやるとしたら、どんなネタをやりたい?」
─まつきさんはお笑い芸人さんに尊敬の念を抱かれているそうですね。
まつき:私は吉本新喜劇がめちゃくちゃ好きで、昔からずっと芸人さんってかっこいいなと思っているんです。ニューヨークさんがとくに好きなんですけど、ニューヨークさんは、「あんまり好きじゃないな」って自分が思っていたタイプの人がネタとして表現されることで、むしろ「面白いじゃんその人!」ってプラスに変えてくれるような感じがするんです。お会いする機会があったので「めちゃくちゃ落ちているときにニューヨークさんのネタを見て救われました!」ってお伝えしました。
─そういう背景もあり、2つ目は「お笑いをやるとしたら、どんなネタをやりたい?」という質問です。
まつき:芸人さんを本当に尊敬しているので安易にはできないなと思うんですけど、もし自分でネタを考えるとしたら……自分につくれるのかな、怖いですね。でもワードセンスが問われるようなことにチャレンジしてみたいです。あとはこの間、芸人さんと一緒にコントをやらせていただく機会があって、全力で演じたら普段の自分とは別の人間になれることが楽しすぎて。だからまたそういう機会もあったら嬉しいですね。私を見て笑ってもらえたら、それが一番嬉しいです。
3.「仕事やプライベートで落ち込んだときにとる行動は?」
─3つ目の質問は、「仕事やプライベートで落ち込んだときにとる行動は?」。まつきさんはどんな落ち込み方をされるのでしょうか。
まつき:いったん、とことん一人で沈みます。共感できそうな曲を探して聴いて、めちゃくちゃ泣いたり。「もうだめだ」と思うときこそ、無理しちゃだめだと思うんです。泣いたり、お酒飲んだり、一人でカラオケしたり、趣味に走った方がいい。私は一人で、渋谷でオールでカラオケしたことがあります。そのときはずっとaikoさんの曲を歌っていましたね。そうするうちにすっきりしてきて、プラスの方向に考えられるようになるんです。「もう無敵だわ」って。
─一度負のエネルギーを爆発させて、それから立ち上がるんですね。
まつき:そういうときは「頑張ったな自分」と思いながら、「えらいえらい」って、もう過保護なくらいに自分を甘やかします。あと、本当に辛いときは実家に帰りますね。東京もすごく好きなんですけど、実家の空気を吸わないとダメになるときがあって。実家のベッドが一番よく眠れるんですよ。
─まつきさんにとっての実家のように、ここにいれば大丈夫だと無条件に安心できる場所や人があるとすごく心強くなれますよね。
まつき:自分にとっての逃げ場や安心できる人をわかっておいた方が、悩んだときにも気持ちの整理をつけやすいと思うんです。
4.「お仕事の時に気をつけていること、意識している点は?」
─そして4つ目の質問が、「お仕事の時に気をつけていること、意識している点は?」ということですが、どんな点を意識されているのですか。
まつき:素でいることと、明るくいることですね。あとは現場で、タレントさんや裏方で活躍されている方々がお仕事している姿を見るのが好きで、ちょっとでも吸収できる部分があったらと思っています。なるべく柔軟でいたいなと思っているんですよ。
─それはなぜでしょうか。
まつき:10代の頃に、壁をつくりすぎて友達がいなかった時期があって。そのときは仕事もあんまりうまくいかなかったんです。きっと自分のキャパが狭すぎるからだと、あるとき思って。
─キャパというのは、他人のことをどれくらい受け入れられるか、ということですか。
まつき:そうですね。「私はこんなに頑張ってるのに」って思っていたけど、壁をつくっていたからなにも吸収できないし、身にならないんだなと気づいて。そこから例えば楽屋でも、あいさつだけじゃなく、自分から積極的にたくさん話しかけて、いろいろ学ばせてもらおうと思っているんです。友達との関係でも、自分のちょっとだめなところも話したりするようにしたら、相手が心を開いてくれるようになって。
─自分の弱みみたいな部分をさらけ出すことって怖さもあると思うんですけど、壁をつくっていたというまつきさんが、それをできるようになったのはなぜだったのでしょうか。
まつき:芸人さんって自分の過去の体験談をネタにしたりするじゃないですか。私も過去に真剣に悩んでいたことを、ネタに変換して、ポップに話すようにしてみたら、すごく友達が増えたんです。
─経験をネタにするためには、そのときの状況や自分自身をちょっと引いた視点で見ることが必要になるのかなと思うのですが、それによって自分が弱点のように思っていた部分も、意外とそうじゃないと気付けたりするのかもしれないですね。
まつき:それに「この話をしたらこの人はこう思うんじゃないか」って考えても、結局全部空回るんですよ。だから「この人は私の目を見て話してくれているから大丈夫」とか、そういう自分の感覚を信じて、最近は生きるようにしています。
5.「来年2021年はどうなっていたい?」
─最後の質問が「来年2021年はどうなっていたい?」です。今年もまだ始まったばかりですが、すでにその次の年について、どのように考えられていますか。
まつき:2019年は私にとって勉強の年だったんですけど、2020年は引き続き勉強しつつ、さらに新しいメディアにチャレンジする年だと思っています。だから、2021年はその経験を生かして、たくさんテレビのバラエティ番組に出たいですね。ずっとテレビっ子だったので、テレビに対する憧れが強くて。SNSのことがわからないおばあちゃんにも、テレビに出ることで喜んでもらえたら一番嬉しいです。あとはやっぱり地元への愛が強いので、「岡山出身のタレントって誰だっけ?」っていうときに、まつきの名前も出てくるようになりたいなと思っています。
─内面的な部分では、こんな自分になっていたいというイメージはありますか?
まつき:今、かなりストレスフリーで生きているから、この状態が続けばいいなと思うんですけど、仕事の幅が増えたらまた何度も挫折も味わうだろうし、傷つくことも増えていくかもしれないから、もうちょっと強くなりたいなと思いつつ、無理せず今のままいられたらいいかな。あとは「恩」とか「情」みたいなものが好きなので、引き続きそれを忘れずにいきたいですね。
─自分に対して質問をするというちょっと変わった趣向でしたが、5つ答えてみて、いかがでしたか?
まつき:自分に質問してみることって大事ですよね。大学生の頃、「まつきはこれからどうなりたいの?」って聞かれても、なにも答えられなかったんですよ。『ミスiD』というオーディションを受けたときも、自分をアピールするためのカメラテストがあったんだけど、「全然武器がない!」って困って(笑)。
それもまた自分を知るための経験になったんですけど。社会に出てこういう仕事をしていると、仕事関係の人からも「なにがしたいの?」「将来どうしたいの?」「なにが好きなの?」っていう質問をたくさんされるんです。でも、そういう質問を自分にして、分析してみることで、自分の弱みがわかったり、愛せる部分を見つけられるんだなと思いました。それが、自分の自信にもなるんですよね。だから、常日頃から自分自身に質問することを大事にしていきたいと思うし、そういう質問を自分にしてくれる人のことも大切にしたいなと思いました。