日々の出来事にゆれ動く心や、そのときどきにうつろってゆく身体。強さとは、ぶれず傷つかないタフさを持つことのように感じたりもするけれど、柔らかいものほど折れにくいように、ざわめき、たゆたう感覚を保ったままだからこそ得られる、しなやかな強度がきっとあるはず。
今回She isでは、敏感肌研究から生まれたスキンケアブランド・freeplusがおくる「freeplus YELL project 2020」とコラボレーション。敏感な感受性を肯定し、一歩先へ踏みだそうとする人の背中を優しく押すこのキャンペーンと連動し、柔らかな感覚を持ってそれぞれの道を歩む3名の女性にインタビューを行います。
元ハロー!プロジェクト、アンジュルムリーダーの和田彩花さんは、前回の記事(和田彩花は悩みながらも勇敢だ。「これからは自分の表現を大切にしたい」)でもお話しいただいたように、アイドルや女性のあり方についての選択肢を広げるために、自分だけの道を切り拓き、歩んでいる真っ最中です。そんな今の和田さんの軸となる5つのトピックを手描きの「和田彩花の夢マップ」で表し、自らの手で紐解いていただきました。
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和田彩花さんを形づくる5つのトピックを、手づくりの「夢マップ」でひもとく
─今の和田さんを形づくる5つのトピックを自らの手で描いていただいた「和田彩花の夢マップ」をつくっていただきました。ひとつずつ伺っていければと思います。
1.卒業
─まずは「卒業」というキーワードが出ています。グループの卒業という大きな出来事もありましたし、今年は大学院の卒業を控えているそうですね。
和田:学びが一区切りすることは、私にとってやっぱり大きな出来事で。グループの活動はもちろん、大学院も大事な学びの時間でした。学校にいる間は、何かを間違えたとしても先生が直してくれていたけど、これからは自分一人でやっていかなきゃいけないですよね。
一方で、学校で学ぶことって、どうしてもどこか受動的になってしまう部分があって、自ら何かをやっていくことって、これまではそんなに多くなかったと思うので、それが不安でもあり、楽しみでもありますね。きっと学校を卒業してから、自分がどうしたいのかがより一層よく見えてくるんだろうなと、卒業を目の前にして思います。今は卒業までの時間を有意義に、そして目一杯楽しんで頑張ろうという気持ちです。
2.自分の表現とは?
─学びの期間を経て「自分の表現とは?」という項目に矢印が伸びています。ご自身の表現というものについて考えるようになったのはなぜでしょうか。
和田:グループのアイドルをしていた頃は、周りから与えられることが当然の世界にいたから、振り付けも衣装も歌詞も歌も、仮歌通りに覚えればよかったんです。それはすごく恵まれていることだし、もちろん音楽の方向性としてメンバー同士で合わせるためには、ディレクターさんからの指示のもとにそうやって進めていくことが必要だったんですけど、そこに「自分だけの表現」があるかと言ったら、そうは言い切れないと思うんです。そのことにあらためて気づかされました。
─最近は、先ほどお話を伺った作詞など、ご自身の手でつくりあげる場面が増えていますね。
和田:そういうことをやらせてもらっているから、自分の表現について、関心が向くようになったのかもしれません。うまくできないことや、「ちょっとできたかな」と思える段階を経て、今は少しずつ「これが表現なんだ」って気づいている最中なんです。
学校では、誰かが描いた絵に対して、言葉で「解釈」をする勉強をしてきたけれど、今度は自分が「つくる」側になってきて、両者のスタンスの違いをすごく感じています。表現することはより感覚的で、その方向により進んでいきたいという気持ちが強くなっていて、自分でも楽しみです。
─この春行われるライブツアー(『和田彩花ライブツアー前2021―この気持ちの先にあるものはなに?―』)についても触れられていますね。
和田:ステージの上で自分を表現することは、やっぱりひとつの大きな目標です。
─ステージ上では、今後どんな表現をしていきたいと思われていますか。
和田:これまでアイドルとしてステージに立ち続けるなかで、抱えてきた疑問があったんです。たとえばお客さんと目を合わせることって、お客さんにとっては嬉しいことなのかもしれないけど、本当に必要なことなのかな? とか。近くの席の人とは目が合わせられるかもしれないけれど、遠くの席で観てくれている人とは、目を合わせることができないな、というのも気になってしまって。それに私が見せたいのはやっぱり表現だと思っているから、グループにいるときも、お客さんと目を合わせることだけを意識するという事はないようにしていて。
次のツアーでは、これまで感じてきたそういう思いに対して、自分なりの表現をしていく実験の場になるようなライブをしたいと思っています。周りにライブをつくるプロの方たちがいて、いろいろな方法を教えてくれるので、今はその作業がすごく楽しいですね。
これまでのライブとは違う部分がけっこうあると思うので、アイドルのライブに行き慣れているファンの方たちがどう思うかわからないんですけど、違和感があったとしても、それこそが気づきや考えるきっかけにもなると思うから。それにライブって、ファンの方はもちろん、私自身も次の日からまた頑張ろうと思えるきっかけになる集まりでもあるから、そんな素敵な空間をつくっていきたいですね。
3.世界は広いな~
─そして自己表現についての問いが「世界は広いな~」という要素に繋がっています。ここでの「世界」というのは主に音楽活動について指しているということですね。
和田:私がこれまで関わってきた音楽って、メロディーを覚えることと、歌うこととくらいで。でも、生の楽器による演奏を見に行く機会を通じて、楽器にも目が向くようになりました。これまでもライブに行くことはあったんですけど、音に注目することがなかったから。卒業したからこそ、音楽の世界の広さに気づきましたね。
─世界の表現者のなかで、影響を受けた方などはいますか?
和田:まだまだ音楽的なことは詳しくないから理解できていない部分もあると思うけれど、昔から好きなのはジョン・レノンの歌詞の世界観ですね。あとはやっぱりビヨンセはかっこいいなと思います。とにかく表現が力強くて、見ていると影響されて、「自分もなんでもできちゃうかも!」っていう気持ちになれます。世のなかの差別について、明確に言葉にして考えを発言できるところもかっこいいですよね。私もそんな人でいられたらいいなと思います。
4.自分の足で世界を歩いてみよう!
─これに関連して「自分の足で世界を歩いてみよう!」という要素があります。音楽以外の面でも、広く世界に関心が向いているのですね。
和田:Twitterとかを見ているだけでも、世界で起きていることについてある程度は知ることができるけど、実際に自分の足で世界を歩いて見て回るのは全然違う経験だって気づいたんです。
夏にエジプトへ旅行に行ったんですけど、小さい頃からアイドルの世界でお仕事をしていたので、海外に行く時間が人生のなかに全然なくて。実際に世界を旅してみたら、肌で感じることがたくさんあって、携帯のなかだけでイメージとして見ていたら絶対にわからないことだらけでした。だから私は、これから世界中をいっぱい自分の足で見てみようと思ってます。まずフランスには行くつもりでいるんですけど、フランスに限らず色々なところへ行ってみたいですね。
─「日本と私を考えてみたい」とも書かれています。
和田:結局私は日本が好きだし、私がまずやらなければいけないのは日本で活動することだから、そのためにも世界を通してもう一度日本と自分のあり方を考えたいなと思っているんです。私は美術が好きだけど、日本は文化に対してあんまりお金を使わないし、「堅苦しい」って遠ざけたりしてしまうこともあるなって。
たとえばフランスでは美術館に行く習慣がもっと身近だったり、文化に対して多くの人がそれぞれ思いを持って接しているところが素晴らしいと思うから、日本も少しでもそんな風にしていけたらいいなと思っているんです。今ある日本の文化はもちろん素敵だけど、変えなければいけない部分もあると思うから。日本のご飯の旨みは本当に素晴らしいなと思っていますけどね(笑)。
5.10年後
─そして「10年後」。「ここから10年かけて、もう一度自分を作ることが近い目標」ということですが、どんな自分をつくっていきたいと思われていますか。
和田:今までは受け身でいることが多かったから、これからは自分でつくっていく10年になりますね。そのことが本当に嬉しいです。今こうやって話している内容って、実はちょっと探りながらでもあるし、迷いもあるんです。でも、10年後には「そんな時期もあったな」って全部笑えたらいいなと思っています。そうやって振り返ることができる10年間にしたいですね。
─今回この「夢マップ」をつくってみた感想をお聞かせください。
和田:これまで活動してきた積み重ねがある分、そのことを意識してしまうところがあって。でもそうじゃなくて、また新しい自分が始まっているんだと、このマップをつくってみてすごく思いました。グループも学校も、卒業してしまうことについて寂しい気持ちがやっぱりどこかあったけれど、こうして何度でも始められるんだなって。しかも「10年後」という未来について考えてみたことで、この先まだまだたくさん時間があるって気づいたし、自分はまだスタートしたばかりなんだとあらためて感じられた。だからこそ、「もうちょっと頑張れるじゃん」って思えたし、やる気にもなれましたね。ときどき、「自分がやってることにどういう意味があるのかな」とか思ってしまう瞬間もあって。
─そうした迷いが出てきとき、どのように向き合っているのですか。
和田:別の道に進んだ場合を考えてみたりします。「じゃあこれがやりたいの? これは? これは?」って、いろいろな選択肢を考えていくと、最終的に「いや、違うじゃん!」って。自分のやりたいことに、立ち返れるんです。
自分の10年を振り返ってみて感じたのは、「こうなりたい」っていうイメージを明確に持つと、周りが見えなくなるくらいぶれないタイプなので、気づいたら意外と「こうなりたい」と思っていた自分になれた10年だったのかもしれないなと思います。今も「10年後にはこうなるんだ」って思い込んでいるから、もう、やるしかないです。