みんなが「一人目は何歳くらいで産んで」っていう話を普通にしていることにすごく違和感があった。(MICO)
─受け入れ難い発言をする人を一方的に悪の側に置いてしまわずに、想像力を働かせてみることって、けっこうな胆力がいることだと思います。今「産む機械」の話が出ましたけれど、出産や結婚は人によって価値観の隔たりが大きいテーマの一つです。MICOさんは川上未映子さんの『夏物語』についてTwitterで書かれていましたね。
MICO:子供を産むということを巡って、小学生の頃、喧嘩になったことがあるんですよ(笑)。当時、手をグーにして手首を押したときにできる粒々の数が将来産む子供の数だっていう変な迷信が流行っていて。みんなが「一人目は何歳くらいで産んで」っていう話を普通にしていることにすごく違和感があったんです。
読破。子供を産むということについて、様々な意見が書かれてた。
小学生の頃、何歳くらいに子供が欲しい?と同級生の女の子に聞かれて、"自分が産まれてきた理由もまだ分からないのに子供を産もうなんて到底考えられない"とマジレスしていじめられた(やばい)私も救われる物語でした。 pic.twitter.com/8U17MrMI4K
— MICO(SHE IS SUMMER) (@mico_sis) December 5, 2019
MICO:私は、なんで自分が産まれてきたのかも本当に不思議だし、この地球がある意味もわからない。そうやって自分が産まれてきた意味をずっと考えてきて、それさえまだ解けていないのに、さらに新しい命をつくるなんて、みんな軽はずみになんてことを言うんだろう! と思っていて(笑)。だから「なんで子供が欲しいの?」って聞いたんですが、そうすると「かわいいから」「老後を見てほしい」「将来さみしくない?」とか、みんなすごいことを言うんですよ。
穐山:小学生なのに?
MICO:そう。私はよく考えずに子供を欲しいと言うことが怖いなと思って、「なんでそう思うの?」ってしつこく聞いたら相手が怒っちゃった(笑)。そういう経験をしていたから、She isの『夏物語』についての川上さんのインタビューは一気に読んじゃいましたね。子供を産むということに対していろんな視点の人が出てくるから、本の中に自分も入って、登場人物たちと一緒に真剣に対話できているような感覚になって。ずっと抱えていた疑問について、いろんな人の意見を聞いて考えられた感じです。小説を通じて対話できたことで、自分の中では少し先へ進めた感じがしています。
─物語は自分とは違う意思のもとに生きている人たちの思いを想像するための手がかりになりますよね。
MICO:だから読み終わったときすごくさみしかったです。登場人物たちの話がもう聞けない感じがして。
ルールと違うことをするのが当たり前すぎたから、逆にルールに沿う方がいいときもあるって気づくことがあります。(MICO)
─MICOさんは「固定観念を打ち破りたい」という気持ちでSHE IS SUMMERをはじめたとインタビューなどでお話されていますよね。これまで、さまざまな固定観念やルールに対してどのように向き合ってきましたか?
MICO:私は穐山さんとは逆で、学生の頃とかはどれだけルールと違うことをできるかがかっこいいと思って生きたんですよね。それが当たり前すぎたから、逆にルールに沿う方がいいときもあるって気づくことがあります。
─例えばどんなことですか?
MICO:学生時代、自分のやりたいことを突き抜けてやればいいと思って部活にもまったく入らなかったけど、何かを継続するための精神的な筋肉って、部活をやっていたらすごくついたりするんだろうなって思います。理にかなってるルールもたくさんあると思う。
穐山:私は子供の頃に暗黙のルールみたいなものがわからなくて、よく大人に怒られていたこともあって、それからどんどん周りの目を気にするようになっていって。へんに器用だったからかもしれないけど、見えないルールにずぶずぶになっていったところから、ようやく抜け出せて今に至った感じです。でも、今の状態は「世間一般はこうだよ」みたいな通過儀礼を通ったことで形成されたんだと思う。
─でもそうやって行ったり来たりしながら、自分なりにちょうどいい温度感を見つけていくのかもしれないですね。
MICO:私は何事もやりすぎしか経験していないくらい、やりすぎ系なんですよね(笑)。『イエスマン “YES”は人生のパスワード』っていう大好きな映画があるんですけど、銀行で働いている主人公が、すべてに対して「イエス」って言えば人生がうまくいくと言われて、どのお客さんに「お金貸してください」って頼まれても「イエス」って言っちゃう(笑)。そうしたら人生がいい方向に転がっていったというお話なんですけど、そういう風に「絶対にこうする」っていうルールを決めないと脱せない自分の癖みたいなものって、知らず知らずあるじゃないですか。
そういう癖って人生をけっこう左右するものだと思うから、今は「極端なことをする」という癖をやめるように意識してるんです。それでも、どうしても走り出したくなっちゃう夜があるんですけど、そういうときにグッとこらえたりして(笑)。