あなたが今生きている場所は、あなたにぴったりきている場所でしょうか。踏みしめる場所が変わったら、きっとあなたも変わるかもしれないし、変わらなくてもいいことに気づくかもしれない。
She isでは、3・4月の特集「どこで生きる?」のギフトでお送りするオリジナルプロダクトとして、アートユニット「otome journal」のグラフィックデザイナー・小林圭さんと一緒にトラベルポーチ3点セット「Bag in bag in bag」をつくりました。
これまで38か国もの国に訪れる中で、「いつかヨーロッパに住みたい」という思いを持ち続けていたという小林さん。長期休暇を使ってヨーロッパ周遊の旅に出向き、そのなかでパリに1か月滞在し、暮らすように旅したその先でどんなものが見えてきたのでしょう。旅先や日本で感じたこと、仕事への影響や、旅に出る理由などたっぷり伺いました。
パリやロンドンはアートやデザインが呼吸しているように街に溶け込んでいる。
高校卒業後、19歳から25歳までの期間をロンドンで過ごした小林さん。日本で働くために帰国してから8年ほど経ちますが、ロンドンでの日々が特別だったと振り返ります。
小林:時間が経つにつれて、ロンドンでの日々が特別だったなという思いが増していって。日本に帰ってきてからは、仕事しつつも、長期休みのたびに旅行に行っていたんですけど、やっぱり旅行ってどうしても駆け足になってしまって。
旅行者として見る国と生活者として見る国の印象って全然違うから、1か月とか1年とかでいいから、また外国で暮らしてみたいとぼんやり思っていて。今回ちょうど転職のタイミングで有給があったので、その期間で暮らすように旅してみようと思ってヨーロッパを周遊することにしたんです。
これまで、広告デザインの仕事をしてきた小林さん。高校の頃からデザインに関心があり、初めてロンドンに行ったのは高校生のときだったそう。
小林:芸術系の高校に通っていたんですけど、教室でみんなでずっと絵を描き続けている環境のなかで「もっと自由にいろんなものをつくりたい」と感じていて。それで、16歳のときに「わたしは絶対にロンドンに行かないといけない」って急に思い立ったんです。それで、1週間旅行に行ったら、日本とは匂いや音、環境音が全然違っていて、どこを見ても全部すばらしい! となったんです。
当時、日本の広告が嫌いだったんです(笑)。街を歩いていると品がないデザインのものも含めてさまざまな広告が敷き詰められていて、見たくないから目をつぶって歩くこともあったくらい。でも、ロンドンやパリは日本よりも広告物を出せるエリアがコントロールされているし、美術館も無料で入れるところが多くて、スーツを着たオフィスワーカーがふらっと立ち寄ったりしていて。日本だと、アートやデザインは「そっち側の人間」のような線引きをどこか感じるときがあるけれど、パリやロンドンはアートやデザインが呼吸しているように街に溶け込んでいるんですよね。
今回の旅では、およそ2か月半かけてヨーロッパのさまざまな国を巡りながら、パリには1か月ほど滞在したそう。なぜパリに滞在することに決めたのでしょう?
小林:好きなものがたくさんあるし、毎日いろんなことができそうな街だなというのと、すごく個人的な理由なんですけど、夫にプロポーズされたのがパリだったんです。ロンドンで夫と出会って、パリでプロポーズしてもらって、ロンドンで結婚式をして。今回、仕事をやめるという人生の節目の旅だから、思い出の地であるパリがいいなって。プロポーズされたときは旅行で訪れていたので、暮らしてみることでそのときに見たパリと違う表情が見えるんじゃないかなっていう期待もありました。
パリでむかえた元旦の風景
アメリが住んでいるような部屋をAirbnbで探して、素敵なアパルトマンを見つけたんです。
そんな思いから、小林さんはホテルではなくアパルトマンを借りてパリの生活をスタートさせました。Airbnbで見つけた、大好きな映画『アメリ』に出てくるようなアパルトマンの一室で過ごす日々はどのようなものだったのでしょう?
小林:アメリが住んでいるような部屋をAirbnbで探して、マレ地区の素敵なアパルトマンを見つけたんです。木でできた螺旋階段があって、そこにたまに猫が出没して。部屋にはカーペットが敷いてあって、アンティークのレースのカーテンがかかっていて。毎日近くのスーパーに行って、バケットやトマトやチーズなんかを買って自炊していたので、生活の感じは本当に日本にいるときと変わらない感じで。むしろ、日本より食べたいものを食べたいだけ食べられる感じ(笑)。
パリで暮らしていたアパルトマン
暮らすように滞在してみると、旅行のときとは違ったパリの表情が見えてきたのだそう。
小林:完全に偏見なんですけど、パリの人ってちょっとみんな我が強くて、フランス語をしゃべれないとコミュニケーションを取ってもらえないようなイメージがあったんです。短期の旅行だと滞在先はホテルで、ごはんはレストランやルームサービスになってしまいがちですけど、今回はスーパーやマルシェ、古着屋さんとかローカルのお店にもたくさん行ったので、現地の人と密にコミュニケーションを取る機会がとっても多かった。
そうしたら、身振り手振りでもコミュニケーションを取ってくれるし、すごくフレンドリーで優しかったんですよね。本当にいい人たちばっかりで、いやな思いを全然しなくて、最初に持っていたイメージが覆されました。
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