山田由梨×伊藤紺×オカダキサラ 大きな物語で語られないものを掬う三人

山田由梨×伊藤紺×オカダキサラ 大きな物語で語られないものを掬う三人

大文字の歴史ではなく日常の細部に宿る尊い瞬間を切り取る

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インタビュー・テキスト:松井友里 編集:野村由芽
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ふっと息が抜けたような瞬間が一番その人らしいし、それっていいことでも悪いことでもない。(オカダ)

―「逃したくない」という感覚は、オカダさんもありますか?

オカダ:あります。でもほとんど逃してるなと思います。

山田:いえ、だいぶとらえてますよ(笑)。

オカダ:最近、すごくいいなと思ったのは「オカダさんみたいな写真が撮れたよ」って送ってくれた人がいて。「ああ悔しいな、なんでこの場にいなかったんだろう」って思うんだけど、そんなかけがえのない一瞬にいた、その人が素敵だなって。

山田:パワーワードすぎる……! オカダさんの愛の総量、すごいですね……。

―「逃したくない」という思いはあっても、その瞬間に自分以外の人が立ち合って、見届けてくれていたら、それで良いんですね。

オカダ:さっき「割り切れない状態」って山田さんがお話されていましたけど、世の中に白と黒でくっきりわかれることってほとんどなくて、グレーの部分の方が多いはずなんです。なのに、みんな日常のきれいごとを撮らなきゃっていう意識があって、そうやって物事を見ようとすることで、窮屈になってるように思うんですよね。

カメラを向けられた瞬間って、たとえばいまこの取材が録画されてると思うと、私もちょっと緊張するんです。そういう「よく見られたい」っていう鎧をすべて取り外した、ふっと息が抜けたような瞬間が一番その人らしいし、それっていいことでも悪いことでもない。「オカダさんみたいな写真が撮れた」っていうことは、その分だけ日常の中のかっこつけない瞬間を、その人が見たわけですよね。生きていることをお互いに認め合う瞬間っていうと、言い過ぎかもしれないけど、写真を撮る一瞬の間、そういう素敵な出会いをしたことが、すごくいいなと思う。

山田:わあ……。ちょっと感動の許容量を超えてきた。本当に、人が生きているってそれだけで、いいことでも、悪いことでもないですよね。そのことをまさに言葉にしていただいた感じです。

伊藤:いいことでも悪いことでもないからこそ、ただそこに「ある」っていうことが尊く感じられる存在のきらめきみたいなものを、由梨ちゃんの作品からも、オカダさんの写真からもすごく感じます。

「愛」とか「希望」とか「夢」なんて、人によって絶対に違うイメージを持っているはずで。それくらい不確実なものを、確実なものとして社会では使っているのに、詩ではそこがちゃんと揺らぐ。(伊藤)

オカダ:私、伊藤さんの短歌ですごく好きだなと思うものがあって。

<楽しいだけとかってたぶんもうなくて楽しいたびにすこしせつない>

という歌です。あるとき、外にいたら、誰もいない公園があったんですね。それで、ちょっと勇気を振り絞って、すべり台を滑ってみたら、すごく違う景色が見えて感動しちゃって。小さい頃は当たり前のこととして無邪気に滑れたのに、いまは人のいない隙を見計らって滑っている。「もうこの感覚を味わえないかもしれない」っていう、ちょっとした切なさがつきまとう感情になっちゃったなと感じたことを思い出して。

山田:私からも、もう一つ。本当はもっといっぱいあるんだけど、紹介したいと思うものに付箋を貼ったら、付箋だらけになっちゃって(笑)。

<ぱくっ、と肩を食べてみるかなしみがいちばんはやく伝わるのは歯>

伊藤:この短歌って、実体験というわけではないんですけど、なんとなく恋人の肩をぱくっと食べてみたいなと思って食べたら、悲しかったのが伝わってきちゃった、っていう状態を描いていたつもりだったんです。でも、以前トークイベントをやったときに、「歯が一番悲しみを吸うから、ぱくって食べてあげたなんて、なんて優しい人なんだ」と思ったっていう解釈を伝えられて。そんなこと全然考えてなかったなって。31字って、あまりにも語りきれないから、まったく解釈が違うことがよくあって。それがすごく面白いです。

伊藤:「苺」って言ったとき、全員同じ苺を想像している前提で話が進んでいくじゃないですか。でも実は言葉ってすごく曖昧で、私が思っている苺は小さくて可愛い苺かもしれないけど、別の人は化け物みたいな苺について考えているかもしれない。

苺みたいに実体があるものでもそんなに違うのに、それこそ「愛」とか「希望」とか「夢」なんて、絶対に違うイメージを持っているはずで。それくらい不確実なものを、確実なものとして社会では使っているのに、詩の世界ではそこがちゃんと揺らぐのが面白いなと思います。

山田:演劇の場合も、同じ舞台を観ても本当に違う解釈があるんですよね。私は、200の客席があったら、200人の脳みそがそこにあると考えていて。それぞれが作品を見て解釈した、200通りの見方があることを、つねに忘れちゃいけないと思っているんです。

以前に、一軒家の中をお客さんが歩き回りながら鑑賞する作品をつくったことがあって。お客さんがどんな動き方をするか、いろいろなパターンを予想するんだけど、それでも予想のつかない動きをする人が出てくるんですよね。その経験があるから、どんなに観客数が増えたとしても、ひとかたまりに「観客」だと思ったらいけないなと。その解釈の違いが豊かさでもあると思う。

PROFILE

山田由梨
山田由梨

劇作家・演出家・俳優 / 劇団「贅沢貧乏」主宰。『フィクション・シティー』(2017年)、『ミクスチュア』(2019年)で岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート。俳優として映画・ドラマ・CMへ出演するほか、ドラマ脚本・小説執筆・エッセイの寄稿など活動の幅を広げている。

伊藤紺
伊藤紺

歌人 / ライター、コピーライター。1993年生まれ。2014年より、ウェブメディアを中心にライティングの経験を積む。2016年より作家活動を開始。同年独立。2019年、歌集『肌に流れる透明な気持ち』を発表。

オカダキサラ
オカダキサラ

1988年東京生まれ。2010年武蔵野美術大学卒業。2011に1_WALLのファイナリスト、2015にユーナ21、2016にコニカミノルタプラザフォトプレミオにそれぞれ入選。2010年から2011年の一年間の期間限定ギャラリー「桃園画廊」を運営。

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ブランド情報
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