やっぱりすごく孤独だし、みんなも孤独だと思うんです。そういう中でもつながれるものを、自分の本業を通じて、何か人に与えることができたらという思いがあります。(松尾)
ーみなさんのお話を伺っていて、人生の励みや彩りになるようなものに対する強い想いや、ご自身でもそうしたものをつくっていきたいという信念を持っていることが共通されていると思いました。いま新型コロナウイルスの影響によってこうした状況にある中で、励ましや救いになるようなものを求める気持ちが強まっている人も多いと思うのですが、みなさんそれぞれが、いま考えていることややろうと思っていることについてお伺いできればと思っています。
Iwaya:ぬり絵をつくって公開したんですけど、すごくさまざまな使われ方をしていて。ポストカードに印刷するとそのままハガキにもなるし、塗ったあとに切って、フレークみたいに使うこともできるんです。この期間中だからこそできることってあるなと思っていて。私も小さな絵を日々描いて壁に貼っているんですけど、そういう風にやりたかったけどできなかったことをやっています。あとは「30 thing stay at home“うちでやろう”」っていうテーマでおみくじのアニメーションもつくっています。年始にもアニメーションのおみくじをつくったんですけど、それのSTAY AT HOMEバージョンです。
Kahoさんがおうちで過ごす時間のためにつくった塗り絵。flowervase ver.も。
Iwayaさんが年始に作ったアニメーションおみくじ。
ー松尾さんは弾き語りの動画をSNSで公開されていましたね。
松尾:これまで弾き語りをSNSにアップすることってほとんどしてこなかったんですけど、こういうときだからこそ何の加工もしていない、ただiPhoneのカメラで録っただけの弾き語りが、かえっていい気がして投稿したんです。いまは、すごくクオリティを追求したものよりも、いじられていないものの方が、同じ目線で同じ空間と時間を過ごすことができるようで、人の心に届く感じがして。
松尾さんがiPhoneで撮ったおうちライブ。“お月様の歌”を演奏。
ー人に会う機会が減った分、フィジカルな気配がするものに安心する感覚は、すごくわかります。
松尾:私は3月25日から家にこもっていて。楽曲を制作したり、いつもはなかなかできないアクリル画を描いたりしているんですけど、やっぱりすごく孤独だし、みんなも孤独だと思うんです。そういう中でもつながれるものを、自分の本業を通じて、何か人に与えることができたらという思いがあります。
5月13日にデジタルリリースする“Singin’ Now”
小川:僕のお店は4月19日で一周年だったんですよ。植物のオンライン販売もしていないので、お店に来ていただくか、イベントで手に取っていただくしかなくて。こんな状況だからパーティーもできないけど、何もやらないのは悔しいなと思って、一周年グッズとして、自分でシルクスクリーンでプリントを刷った、大きなハンカチをつくることにしたんです。大きなハンカチだったら、マスクの代わりに顔にも巻けるし、この事態が収束した未来を想像すると、マスクはタンスにしまっちゃうかもしれないけど、ハンカチだったら持ち歩ける。せっかくならこの先も使ってもらえるものを提案したいなと思って、今日は布にひたすらアイロンをかけていました。
小川さんがつくっているシルクスクリーンでつくったハンドメイドのハンカチ。
ーそれでさきほどアイロンがけの話をしていらしたんですね。
Iwaya:伏線回収したね!
松尾:素敵です。
小川:近所に仲良くしてくれている夫婦がいるんですけど、旦那さんが医療従事者で、奥さんは看護師さんで。最前線で戦っている人たちの話を聞くと、本当にシリアスなんです。僕も何かしたいけど、何ができるだろうって日々考えながら、アイロンがけをしている次第です。
「気にかける」っていう行為自体が応援されているなと思えて、支えになりますよね。(Iwaya)
ー「応援」をテーマにした鼎談でしたが、最後にみなさんが「応援すること」「応援されること」について思うことを教えていただけますか。
Iwaya:「応援する」ってちょっと偉そうな感じがするかなって最初は思ったんです。「私ごときが」みたいな気持ちになるんですよ。よく「陰ながら応援してます」って言うじゃないですか。それもきっと「陰ながら」の部分に微妙な心の引っかかりがあるはずで。「すいませんけど応援してます」みたいなテンションになっちゃうんですよね。心の中では「まじで好き!」って思っていたりするんですけど。でも自分自身を振り返ってみると、応援されると嬉しいし、応援されたからこそ、これまでやってこれたところがあると思っていて。「応援」っていう言葉を「励まし」って言い換えると、私が届けたかったことでもあるし。
ーたしかに面と向かって「応援してます」と言おうとするとき、自分がその相手に対していったいどれほどのことができるんだろうとためらったりもしますけど、「応援したい」という気持ちが伝わってくる言葉をかけてもらうだけでも励みになりますよね。
Iwaya:「頑張ります!」って思う。
松尾:人への愛を伝えることは大切ですよね。励ましとか、「好きです」とか、言葉に出していくことが大事。家族とか、恋人とか、そういう気持ちが当たり前に通じていると思っているような関係でも、自分が思っていたより、分かり合えていなかったりすることってたくさんありますし。そういう中で、あえてこうやって応援したい人をピックアップして、お互いがリスペクトしあうことをカルチャーとして発信することって、とても素敵だなと思いました。だからこうして今回、Iwayaさんが名前を出してくださったこともとても嬉しいですし、ものづくりって、そういうパワーから生まれるものだなと思います。
Iwaya:本当にありがとうございます……!
小川:僕のお店には生きているものがたくさんあるので、つねに手入れをしなきゃいけなくて、僕が手間をかけなきゃ死んでしまう。仕事だからやっている面もあるし、正直言えば億劫な日もあるんですけど、店の中の植物に水をたくさんあげると、すごくいきいきとして気持ち良さそうに見えて。植物が実際そう思っているかはわからないし、植物が僕を応援してくれたり、なにかを言ってくれるわけでもないけど、なんだか心に刺さったりするんです。手入れをすることでレスポンスをしてくれているような感覚があって。
だから、人じゃなくても、タトゥーだったり、絵だったり、音楽だったりが自分を支えてくれることはあると思う。お二人がやっていることもまさにそうで、確実に誰かの励みになっていますよね。僕も自分のやっていることが、誰かの励みになったらいいなと思ってやっているし、それに対してお金を出して買ってくれる人が、また僕を応援してくれてもいて。そうして応援してくれる人がいるからこそ、僕もさらに誰かを応援することができるんだなと思います。自分が気にかけているものって、全部何かの過程になっていると思うんです。
Iwaya:本当にそう思います。少し前に新しく販売し始めたグッズがあるんですけど、「ふらっと立ち寄って買ってくださった方がいましたよ」ってお店の方から連絡があって。今こんな不安な世の中でも、気にかけてくださっているんだなと思えて、すごく嬉しくて。「気にかける」っていう行為自体が応援されているなと思えて、支えになりますよね。
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