政治1年生のためのメディアリテラシー。長田杏奈&かん(劇団雌猫)がジャーナリストに取材

政治1年生のためのメディアリテラシー。長田杏奈&かん(劇団雌猫)がジャーナリストに取材

情報が溢れる時代の、メディアとの付き合い方

インタビュー・テキスト:かん 撮影:飯本貴子 イラスト:鈴木衣津子(かん似顔絵) 編集:守屋佳奈子、野村由芽 
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◯✕の「スイッチ」ではなく「ツマミ」で考える

かん:でもそうやっていちいち相手の意見を聞いたり、いろんな情報を「まだわからない」と思って見ていたら、結局どっちが正解か決められないような気がしてきた……。それだと一生「まだわからない」ままになっちゃいませんか?

あんな:ファイナルアンサー、永遠に決められない……。

しもむら:それでいいじゃないですか。目にするニュースは全て「to be continued」がついているつもりで、ずっと「まだわからないぞ」と思っていることが大事なんです。ニュースは永遠の中間報告ですから。

かん:そっか、現実は物語みたいに終わりがあるわけじゃないもんなあ。

しもむら:「とりあえずいまの見方」は、暫定的に決めてもいいんですよ。特に、大雨の特別警報とか原子力発電所の爆発とか、緊急時には「まだわからないぞ」って言っているうちに逃げ遅れてしまったりしますから。

だから、「まだわからない」というのは、「見方を決めない」ことではなくて、「今日の見方で明日の見方を縛らない」ことです。

かん:過去の自分の考えを更新していけるかってすごく大事ですね。間違いを認めたくなくてずっと最初の見方に執着してしまうこと、めっちゃあると思う。でも選挙の時なんかは、バッチリこの人だって思える候補者がいなくて「今日の見方」を決めることすら難しかったりします。調べれば調べるほど揺らぐ。

しもむら意見は「ON/OFF」のスイッチのように◯か✕かでカチカチと切り替えるものではなく、音量の「ツマミ」のようにMAXとMINの間をスーッと滑らせて、グラデーションで調節するものだとイメージしてみて。誰にとってもパーフェクトな候補者なんてものは存在しませんから、政策とか人間性とか、そういう情報を判断材料にした上で、投票日がきた時点でいちばんマシ=自分のツマミがMAX側に近い政党や人に、票を入れたらいいんです。

かん:「誰もいい人いない」でも「絶対この人がいい」でもなくて、この人がマシかな……で選ぶのか。投票ってほとんどの人にとってはそういうものなのかもしれない。

しもむら選挙は「ヒーローの自動販売機」じゃないから、難しいんですよね。

かん:といいますと……?

しもむら:この人だって決めて、ボタンを押すと、理想の政治家がポーンと出てくる、そういう仕組みではないってことです。

あんな:耳が痛いな。「選んでやったぞ。さぁお手並み拝見といこうかフフ」って感じで見ちゃってたかも。

かん:投票日がゴールではないってことか。

しもむら:そう。むしろ、投票日がスタートライン。自分が選んだ政治家が嘘ついてないかなーとか、悪いことしてないかなーと監視して育てていくのは、投票した側の責任でもあります。投票日に◯✕固めてあとはお任せ、ではなく、育てていく、ずっと追いかけることの方が重要だと思います。

あんな:ついつい「あちら側」の存在として、意思決定のあとは放置プレイしてしまってたな。

しもむら:具体名をあげると、たとえば「れいわ新撰組」がこれから育っていくかどうかは支援者にかかっていると思います。先の選挙で山本太郎さんは熱烈な支持を集めましたが、本当に大変なのはこれからで、政治の世界に入ると、思い通りにいかないことがたくさん出てきます。そこで支持者たちが、ヒーローを求める目で減点ばかりしていくと、きっとすぐに幻滅され見捨てられてしまう。

かん:確かに、すでに「山本太郎には期待してたがガッカリだ」みたいなツイートとか目にした。

しもむら叩くのは、政治家の「頭」じゃなくて「お尻」! もちろん批判もしていいんですが、叱咤激励や提案もできるんだよということ。それって、政治だけでなくて、メディアに関しても言えることなんですけどね。

あんな:メディアのお尻って、どうやって叩けば良いんですか?

しもむら:これは以前メディアに在籍していた人間としてのお願いですが、よくない報道の批判と同じくらい、良い番組、報道を褒めてあげてください。メールでも良いですし、Twitterへの投稿でも良い。実は、批判の声に比べて、「この報道がよかった」という声はすくないんです。僕も今日のレポートよかったと手紙が来ると、ボロボロになるまで持ち歩いていました。

かん:そうなんだ! いい記事もよくない記事も、両方覚えとこう!

あんな:話を戻して、政治家のお尻を叩く方法はどうでしょう? 最近私の周囲では、意見をメールする人が増えていて、いいことだなって思ってます。

しもむら:必ず、公式HPにお問い合わせフォームなんかがあるはずです。「当選さえしちゃったら、もう有権者の声なんか聞かないでしょ」なんてことはありません。だって、また次の選挙があるんだから。「今度は投票しないよ」という人事権は、こっちが持ってるんですから。

あんな:推しが納得できない行動をしたら、「失望した」と応援をやめるのではなく、なんでそうするんですか? って問いかけた方が健全。長い目で見て建設的に関わった方が、お互いに育つ、前に進めるってことですね。

かん:ガチャでSSR(*4)のカードを引いて一発逆転! ではなく、N(ノーマル)カードを地道に合成して育てていくのが民主主義なんだなあ……。手がかかるけど、真面目に取り組めば愛着がわきそう。育成ゲームみたいでちょっと面白いかも。

*4=ソーシャルゲームなどでカードやキャラクターのレアリティをしめすランク「スーパースペシャルレア」の略。

あんな:そのたとえ、ちょっとついて行けてないから後でググるね。みんなのメディアを育てる姿勢と政治を育てる姿勢、どちらも成熟したらいいな。リアル育成ゲーム頑張ります。

<ポイント>
Q.「ファイナルアンサーが決められない!」(かん)
A.「意見はスイッチではなくて、音量調節のツマミのようなもの。常にチューニングし続けることが大事」(しもむら)

PROFILE

長田杏奈
長田杏奈

1977年、神奈川県生まれ。ライター。テロップや口調で煽るテレビが苦手で、ニュースはネットやラジオでチェック。新聞は電子版派。センセーショナルな見出しやコメント欄、ニュースの並び順がワイドショーっぽいサイトは避けて通る派。著書に『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)、『あなたは美しい。その証拠を今からぼくたちが見せよう。』(大和書房/6月発売)。『エトセトラ VOL.3 特集: 私の 私による 私のための身体』(エトセトラブックス/5月18日発売)責任編集。

かん

1989年、兵庫県生まれ。書籍『浪費図鑑』等を制作するオタク女子4人組「劇団雌猫」メンバー。何が正しい情報か分からないときは、一回スマホを閉じて、みんなの議論が活性化するのを待つ。新刊はコミック『だから私はメイクする』(祥伝社)。K-POPアイドルSEVENTEENのジョシュアと宝塚歌劇団の芹香斗亜を応援中。

下村健一

1960年、東京都生まれ。令和メディア研究所主宰。東京大学法学部卒業後、TBS入社。報道アナウンサー、現場リポーター、企画ディレクターとして活躍。2000年以降、フリーとして取材キャスターを続ける一方、市民グループや学生、子どもたちのメディア制作を支援する「市民メディア・アドバイザー」として活動。2010年秋から約2年半、内閣広報室の中枢で首相官邸(民主党政権も自民党政権も)の情報発信を担当。東京大学客員助教授、慶應義塾大学特別招聘教授などを経て、現在は白鴎大学特任教授。小学教科書(国語5年/光村図書)の執筆から経営者研修まで、幅広い年代のメディア・情報教育に携わる。ネットメディアの創造性&信頼確立を目指して40団体以上が加盟する「インターネットメディア協会」(JIMA)に、設立理事として参画し、メディアリテラシー部門を担う。著書に『窓をひろげて考えよう』(かもがわ出版)、『10代からの情報キャッチボール入門――使えるメディア・リテラシー』(岩波書店)、『マスコミは何を伝えないか』(岩波書店)ほか。

INFORMATION

書籍情報
『窓をひろげて考えよう』
著者:下村健一

2017年7月20日(木)発売
価格:3,080円(税込)
発行:かもがわ出版
Amazon
※Amazonが在庫切れの場合、各出版社や書店系サイトからお申込みください。

『10代からの情報キャッチボール入門――使えるメディア・リテラシー』
著者:下村健一

2015年4月25日(土)発売
価格:1,760円(税込)
発行:岩波書店
Amazon
※Amazonが在庫切れの場合、各出版社や書店系サイトからお申込みください。

『マスコミは何を伝えないか――メディア社会の賢い生き方』
著者:下村健一

2010年9月23日(木)発売
価格:2,090円(税込)
発行:岩波書店
Amazon
※Amazonが在庫切れの場合、各出版社や書店系サイトからお申込みください。

『想像力のスイッチを入れよう』
著者:下村健一

2017年1月31日(火)発売
価格:1,320円(税込)
発行:講談社
Amazon
※Amazonが在庫切れの場合、各出版社や書店系サイトからお申込みください。

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