私が話して伝えることで、お花をもっと好きになってもらえたらいいなと思うんです。(若井)
─若井さんはお店というものの魅力について、どのように思われていますか。
若井:おみゆさんが言っていたみたいに、お店に行くことで、ものや人をさらに好きになるという体験を自分自身もしてきましたし、人とお話するのが好きなので、実際にお話をしてコミュニケーションをとって、お花を手に取って選んでもらいたいなという気持ちがすごくあって。
花瓶もお花も、自宅で使っているところをお客さん自身が想像できるところまでご案内したいんです。お花についてあまり知らない方には、なるべく長くもつお花をお伝えしたいし、長くはもたないお花だとしても、魅力的な部分を伝えたい。お店に来ていただけたらご自宅にある花瓶の写真を見せてもらって、飾り方の可能性を一緒に考えられたりもします。そういうことを大事にしたいから、お店をやっているんだと思います。
─もともと若井さんは中目黒のfarverに勤めていらっしゃって、そこから独立されたのですよね。
若井:花の仕事に携わるなかで、なんとなく「30歳くらいまでに自分のお店をやりたいな」と思っていた気持ちに従って、お店をオープンしました。だから最初は、なんのためにお店をやりたいのかも考えきれていなくて。「このあと、私はどうしていきたいんだろう」って、始めてからすごく考えるようになって、いまも日々お客さんと接したりするなかで、「こうしていきたいのかな」という気持ちを手探りで見つけている感じです。
いまはコロナの件で、ウェブ上でのやりとりが主流になって、お店でお客さんと会ってお話する機会がなくなったことで、直接コミュニケーションを取りたいなと、あらためて思うようになりました。お花や花瓶について知識が多くない方も多いので、私が話して伝えることで、お花をもっと好きになってもらえたらいいなと思うんです。
お店の方から与えてもらうだけじゃなくて、お店をやっている方々にも気持ちを返したいと、すごく思うんです。(小谷)
─小谷さんは普段から喫茶店などさまざまなお店について発信されていますが、足を運ぶことが難しいいま、「お店」というものに対してどのような思いを持っていらっしゃいますか。
小谷:私は、自分が思ったことをちゃんと相手に伝えたいという気持ちが強いので、お店の方から与えてもらうだけじゃなくて、お店をやっている方々にも気持ちを返したいと、すごく思うんです。いままでは、お店に行ってお買い物することができていたけど、こういう状況で何が力になれるんだろうってすごく考えます。
そう考えたときに、私は自分の好きなものを発信する機会をたくさんいただいてるので、一人でも多くの人に「いいな」と思ってもらえたり、「こういうものがあるんだ」って知ってもらうきっかけとして、お店の人たちとの間をつなぐことができたらいいなと思っています。そうやって紹介するたびに、やっぱり好きなお店に行きたくなる気持ちが募っていくんですけどね。
去年の秋に訪れた喫茶店で
小売にできることは少ないですけど、ちょっとでもいいからお花を仕入れ続けたい。(若井)
─今回お店を運営されている立場の方として、小谷さんに角田さんと若井さんをご紹介いただきましたが、若井さんはInstagramの投稿で、お店の先にいらっしゃるお花の生産者さんについて書かれていらっしゃいましたよね。
若井:私たちのようにお店を持っている人たちは、お店を開けていたり、ネット上で販売することができますけど、ウェディング専門のお花屋さんや、店舗を構えていないお花屋さんたちは、いまみんなお仕事がなくて。市場に仕入れに来ている人たちの全体数もすごく少なくなっています。お花の値段もすごく下がっていますね。
─そうなんですね。
若井:母の日に向けて、少し値段が元に戻りつつはあるんですけど、過去見た中でも一番低い状態です。だからやっぱり生産者さんはすごく大変な状況だと思います。去年は台風の被害があったので、台風をきっかけにお花をつくることをやめてしまった方もいるみたいですし、今回もそういう人が出ないわけではないだろうなという気がしていて。本当にいいお花をつくっている人が、やめてしまうかもしれないです。
そうなってしまうと、この先、お店に並ぶお花の種類がすごく減ってしまう可能性もあるし、使いたいときに仕入れられなくなってしまいます。小売にできることは少ないですけど、ちょっとでもいいから仕入れ続けたいなという気持ちはすごくあります。生産者さんって、基本的には表に出ていらっしゃらないので、お店という場所を持って伝える側の人間として、すごく大切にしていきたいんです。
お花の生産者への思いを綴った投稿
角田:音楽業界における生産者さんはアーティストの人たちですよね。いまはライブハウスで演奏もできないですし、作品もあまり発表できなかったりしています。そういった中でも、自宅で一生懸命作品をつくっているアーティストもいるので、そういう人たちがカセットテープをリリースしたら、ぜひwaltzで紹介したいです。インスタで紹介すれば海外のレーベルの方など世界中の人たちに情報が届きますし、活用していきたいなと思います。
waltzのInstagramではカセットテープの紹介をおこなっている(オンラインショップで購入も可能)※写真にうつっている商品は完売
角田:あとはいま、いくつかのレーベルと、これまでカセットテープで出ていなかった音源をカセットテープでリリースして販売するプロジェクトを立ち上げていて。アメリカのレーベルと組んでいるんですけど、アメリカもお店がほとんど閉まっているので、レーベル側も売り上げが立たない状態にあるんです。カセットテープでつくられた音源をうちのお店で販売することで、お互いの収益につながればと考えています。