オンライン上で顔を見ながら話すこともできるけど、直に文字を書いた物体を送ることって、すごく確かな感じがして。(小谷)
─小谷さんご自身のいまの状況についても教えていただけますか。
小谷:4月に入ってから、1回だけ撮影のお仕事があったんですけど、それ以降の仕事は全部キャンセルになって。ありがたいことにウェブメディアから、アンケート取材やオンライン取材のオファーをたくさんいただけているので、みんなが読んでためになったらいいなと思いながら、できるだけそういうものをたくさん書いたり、答えたりしています。もちろん仕事について「これからどうしよう」とか「いま何ができるのか」ってずっと考えてはいるんですけど、それでもまだたくさん時間があるような状況で。強制的に余裕を与えられているような感じになりましたね。
─モデルの中島沙希さんとnoteで公開文通を始められたそうですね。
noteで中島沙希さんとの文通を公開中
小谷:もともと手紙を書くことが好きで、頻繁に会う友達とも郵送で文通を続けたりしていたんですけど、この期間に入ってから、人に何かを贈ったり、手紙を送る機会が、より増えたような気がします。オンラインでお買い物をする人が増えて、配送業の方がすごく大変ななか、申し訳ない気持ちになりながらなんですけど。メールならすぐ届くし、オンライン上で顔を見ながら話すこともできるけど、直に文字を書いた物体を送ることって、すごく確かな感じがして。そういうものにしか込められない暖かみみたいなものを感じるので、いまこそ文通をしたいなと思いました。
だから、みんなにも手紙を書いてみようかなって思ってもらえるように、オンラインで文通を公開することにしたんです。手紙に何を書いていいかわからないって、言われることがあるんですけど、私もたいしたことは書いていなくて。中身を公開することで、「こういうことでいいんだ」って思ってもらえるかなって。LINEで済むような内容かもしれないですけど、わざわざ直筆の文字で書いたものが、ちょっと時間をおいて相手に伝わることで、そこにいろんな気持ちが乗っかってくるように思えます。文字にして相手に送ることって、すごく緊張感があって、背筋が伸びる感じがするんですよね。それに文字にすることで、自分で自分を知ることもできるなと思います。
─こういう状況にあると、人と何気ない会話をする機会がすごく失われていて。こぼれ落ちてしまう、雑談的な部分を手紙でやりとりするのっていいなと思いました。
小谷:学生時代って、なんでもないことを手紙に書いて授業中に回したりしていましたよね。こういう状況だから、仕事のことも心配だし、ニュースを見るだけで自分の気持ちが張り詰めてしまったりして、それは生き抜くために大人として必要なことではあると思うんです。でもそんな中でも自分で手を動かして、学生時代にやっていたようなことをあえてやってみると、生活に良いゆるみを与えてくれるなと思います。
角田:前向きに考えれば、いままでの人生の中で、これだけ時間があることってなかったと思うくらい時間が与えられているんですよね。なので、この時間をどう有効に過ごすのか考えて、自分の中の何かを変えるきっかけにできるといいんじゃないかなと、僕も自分に言い聞かせて過ごしています。
若井:私はこの状況になる前と比べて、仕事をしている時間がさらに長くなっていて。だから自分自身の生活についてはよくも悪くも考えている余裕がないんですけど、友達やお客さんとやりとりするなかで、「身体に気をつけてね」とか「お花がすごく嬉しかった」とか「頑張ってください」っていう本当に些細な一言で頑張ることができたりしているので、自分も身近な人や、病院で働いてる友人に、一言でもメッセージを送ってみようと思ったし、そういうことってすごく大事だなと思います。
注文の一つ一つにすごく元気づけられるんですよね。応援してもらっているのと一緒だなと思います。(角田)
角田:若井さんもきっと同じなんじゃないかと思うんですけど、お店をやっている人間からすると、特にメッセージがなかったとしても、注文の一つ一つにすごく元気づけられるんですよね。応援してもらっているのと一緒だなと思います。こういう時期に注文してくれることも、本当にありがたいです。
若井:本当にそうですね。
角田:いま、お店をやっている人は、みんな必死だと思います。店を閉めたら売り上げがゼロになるわけですから。これが何か月も続いたら持たないと感じている人はいっぱいいるはずで、みんな不安で不安でしょうがないと思いますし、僕も不安です。もともと実店舗を重視する形でずっとビジネスをやってきたので、通販が伸びてきてはいますけど、店の売り上げを補うには全然足りていません。店がある前提でいろんな経費設計をしているので、再開できないと本当に厳しいです。
それはうちだけじゃなくて、世の中のお店のほとんどがそうだと思います。waltzのお客さんにもお店をやっている人がいっぱいいますけど、やっぱりみんな大変だと聞きます。自治体に無利子・無担保融資を申し込んでいる人もたくさんいますし、僕も東京都の休業協力金の申請を出しました。そうやってしのいでいかないといけない状況です。
若井:自分でお店をやってみて、お店をやるのって本当に大変だなと感じたんですよね。だからお店や、自分で商売をやっている人って本当にすごいなと、もともと思っていたんですけど、今回のことをきっかけに、全然知らないお店の人に対しても、一緒に生き残って、みんなでお店を残していきたいですねって、すごく思うようになりました。やむを得ず閉業を選ぶことになるお店も、これからきっと増えてくるかもしれないと思うと、すごく辛いです。お店や、自分で商売をやっている人たち、みんな頑張ろうって思います。
角田:その通りだと思います。
小谷:私自身そういうお店を応援したいですし、逆に自分が応援されてるということを、すごく感じます。この数か月、仕事をしている感覚がほとんどなくて。本業はモデルなのに、カメラの前に立って写真を撮ってもらったり、服を良く見せる機会が最近は全然なくなっていて、「私ってこの職業に必要なのかな」って、最初の頃は落ち込むくらい考えていました。でもインスタで自分の好きなものを紹介しているだけでも、「いつも元気をもらってます」とか「教えてくれてありがとう」って、何かを受け取ってもらえたりして。そういう言葉をもらえたことにすごく救われて、持ち直したんです。
こういう状況だから、特別な何かをすることも大事だけど、自分が得意なことや、やりたいと思っていたこと、本当に伝えたいと思うことを、いつも通りにちゃんと伝えていけばいいのかなって、すごくシンプルに考えるようになりました。私にできることで、私自身も好きなことは、好きなものを買ったり、紹介することなので、そういうことが誰かの応援になるといいなと思います。微力だとは思うけど、それが波及していい影響を与えることができたら嬉しいですね。
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