見られる行為としての愛、という考えに心を打たれました
オリヴィアが最初に自身のセルフポートレートに添えた『Self-Portrait of a Lady in Quarantine』のタイトルからもわかるように、このプロジェクトは映画『Portrait of a Lady On Fire(原題)』にインスピレーションを受けているそう。同作は、18世紀のフランスを舞台に、ある女性とその肖像画を依頼された女性の画家との関係を描いたラブロマンスで、昨年の『カンヌ国際映画祭』でクィアパルム賞を受賞しました。
「このプロジェクトを思いついた日の前日に『Portrait of a Lady On Fire』を見たんですが、見られる行為としての愛、という考えに心を打たれました。隔離生活のなかでは、私を目撃しているのは私一人で、その状態って全てのセルフポートレートの基本だと思ったんです」
映画『Portrait of a Lady On Fire(原題)』
『Girls Of Isolation』のInstagramで公開されている数々の写真を見てみると、下着姿の人、マスクをつけた人、ベッドの上に座る人、床に寝転んでいる人、カメラを見ている人、後ろ姿の人、窓の外を見ている人……当然ながら一つとして同じシチュエーションで撮られたものはありません。現在までにたくさんの異なる国々から4千ほどの写真が集まったそうですが、壁に貼られたポスターや家具など、写真に写る部屋の中の様子からは、その人の生活や好きなものへの想像を掻き立てられ、知らない人のパーソナルな部分を見せてもらっているような不思議な感覚になります。
「(集まった写真を見て)すごく感動しました! こんなに反応があったことも信じられなかったし、一つひとつのポートレート全てが素晴らしくて。いろんな人たちのいる空間のなかを、こんなに親密な形で見せてもらえるなんてすごく恵まれたことだと思います」
見られている、と感じることはいますごく大事なことなんじゃないかと思うんです
詩人であるオリヴィアは、昨年に『Life of the Party』という詩集を出版しました。
「『Life of the Party』は、恐怖と私の個人的な関係や、女性の殺人に執着するメディアなどについて問いを投げかけた、私の詩のコレクションです」
彼女は自主隔離の期間もたくさんの書き物をし、音楽を聴いたり、料理をしたり、ガーデニングをしたりして過ごしたそうです。一方、ロックダウン下では、見えないウイルスに怯えながら人との接触を避けて暮らす日々に不安やストレス、孤独を感じた人も多いでしょう。そんな状況においてセルフポートレートを撮ることは、参加者にとってどんな意味や効果があったのでしょうか。
「セルフポートレートを撮るという行為自体が価値のあることである、というのは、思いがけず頻繁に耳にした声のひとつでした。女の子は自分たちの身体性や、自分たちが占める空間についてあまり自律性を与えられていないと思うんです。でも、たとえばベッドルームでのセルフポートレートはその両方に対抗するものだと思います。そこでは女の子は、自分がどう見られたいかをコントロールすることができ、自分のために自分で誂えた空間のなかに座っているのです。だから今回参加しなかった人も、自分のポートレートをいま撮ってみたら、自分でどうすることもできない感情が和らぐんじゃないかと思うんですよね。少しだけ、一瞬だけかもしれなくても」
状況が落ち着いたら「外出してダンスしに行きたい!」と話していたオリヴィア。現在は「Black Lives Matter」運動に連帯の意思を示し、『Girls Of Isolation』の投稿をストップしていますが、このプロジェクトは参加者だけでなく、自身の助けにもなったそう。
「誰かに見られている、と感じることはいますごく大事なことなんじゃないかと思うんです。それって、コミュニティを感じることや、愛されていると感じることにおいて、欠かせないことだと思うんです。だから友達と話すこともすごく重要なことになっているけど、あなた自身を表していると感じるものを作ることも同じくらい大事だと思うんです。『Girls of Isolation』のプロジェクトをやることは、私の孤独をすごく和らげてくれました」
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