ジェーン・スーに聞いた、年齢と女性と社会をめぐるモヤモヤのあれこれ

ジェーン・スーに聞いた、年齢と女性と社会をめぐるモヤモヤのあれこれ

思っていた未来と違ってもいい『これでもいいのだ』

インタビュー・テキスト:野村由芽 撮影:中里虎鉄
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年齢を重ねることについてどう感じ、なにを考えますか。10代、20代、30代、40代……どの年齢にもそのときどきで経験できることや感じられることがあり、それが自分自身を形づくっていきます。自分の過去を振り返ることはできるけど、未来はどうなるかわからない……そう思ったときに、「私の私による私のためのオバさん宣言」などの言葉を著書『これでもいいのだ』で書かれるなど、40歳を過ぎて女性として生きることについて、明るく鋭くアップデートされているジェーン・スーさんにお話をうかがいたいと考えました。

この日におうかがいしたのは、「年齢」を主なトピックとしながら、「キャリアを重ねるときに、できないことを克服するのか、自分に合っている場所にいくのか?」という問い、「時代はよくなってきている」と明言できるわけ、受け身やナイーブであることからの脱却、死への恐怖の脱却法、「オバサン、イエーイ」という感覚……など、大切な明るさを受け取りました。

【後編】ジェーン・スーが読者の悩みにお答え。みっともなくても気持ちを言葉に

※この取材は、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する以前の2020年1月末に実施しました。

いまわたしたちは肯定の対象をマルチプルというか、複数にしていかなくちゃいけない。

ースーさんは、『相談は踊る』(TBSラジオ)のお悩み相談コーナーや著書のなかでたくさんのお悩みを解消してこられたと思うのですが、その過程には、変えられないと思い込んでしまっていた社会や思考の「ルール」や「こうあるべき」といったものをときほぐす視点があると感じています。

1月に出された『これでもいいのだ』(中央公論新社)というエッセイのなかでは、とくに「40歳」を過ぎたことで起きる様々な事象に言及されていたので、今日は年齢を中心にお話をうかがっていきたいと思っていて。

スー:はい、よろしくお願いします。

ジェーン・スーさん(この取材は、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する以前の2020年1月末に実施しました)

ーまず本書のタイトルが『これでもいいのだ』ですよね。スーさんの本は、まずタイトルからハッとするところが多いですが、この本からはやっぱり赤塚不二夫氏の『これでいいのだ』が思い浮かびました。「これでいい」じゃなくて「これでもいい」というふうに、「断言」ではなく「選択肢」を広げるようなタイトルをつけて本をまとめたのはなぜでしょう?

スー:えーっとまず、いわゆる「多様性の容認」「ダイバーシティ&インクルージョン」といった言葉が、上滑りしているような感覚があって。実感としてなにをすればいいのか、どういう行動に結びつくのかが漠然としていたんです。それを自分が腹落ちする言葉にしたら「これでもいいのだ」になったんですよね。「あれじゃなきゃダメ」とか「それじゃなきゃいけない」ではなくて。

「これでも」の「も」というのも、やっぱり肝です。「これでいいのだ」は、多数派とは異なるイレギュラーなことやナンセンスなことでもいいのだという赤塚不二夫氏の表明だとわたしは受け取っていて、それはひとつの肯定の形だと思うんですけど、これからは肯定の対象をマルチプルというか、複数にしていかなくちゃいけないと思っているんです。だから『これでもいいのだ』にしました。

すこし前までであれば、「これでもいい」というと「2番目の選択」という意識が強かったように思うんですけど、いまこの言葉を聞くと「正解はひとつじゃない」とちゃんと伝わると思いました。時代も少しずつは、いいほうに変わっていっているんだなと感じます。

『これでもいいのだ』(中央公論新社)/特設ページを見る

その人の評価って、集団によってまったく変わるので。自分が普通にやっていることを評価して面白がってくれる人のところに積極的に行くようにしました。

ー同じ言葉であっても、時代によって受け取り方がアップデートされていくんですね。この本は「女友達は、唯一元本割れしない財産である」「中年女たちよ、人生の舵をとれ」「世の中には物語があふれている」「大人だって傷付いている」の4つの章から構成されています。年を重ねていく女性たちと年齢の関係性を描いているエピソードが多いと感じるのですが、まずスーさんが「年齢」という概念をどう捉えているかおうかがいしたいです。

スー:自分にとっては、10代、20代、30代の前半までは、多分ずっと、「自分は他のみんなと違う」という異形感に居心地が悪い状態でした。でも30代の後半から、人と違うことが金になるっていうことがわかって「やったー!」っていう(笑)。

ー金になる(笑)。

スー:逆上がりができないまま小学校生活が終わったり、体の大きさが他の人と違ったり、「踊れ」と言われたらパッと踊れたり……「あ、わたしちょっとやっぱりおかしいんだな」と感じていた時間は人生のなかでかなり長く、これは生きていくのが大変だと思っていたのですが……。

でも人と違う自分でい続けたら、30代半ばから仕事がくるようになったんですよね。あと違うのは自分だけだと思っていたら、「みんな」という顔の見えない集団は実はどこにもいなくて、それぞれが「自分はここにハマれない」と疎外感を持っていたことわかって。個人的なことこそが普遍性を持つ場合もあるんだなと気づいたんです。同時に、社会のムードとして、人と違うことが少しずつ許容されるいい時代になってきたのかなとも思います。

ー『これでもいいのだ』のなかでも「いい時代になってきている」と明言されているのが印象的でした。人によっては、たとえば年齢ひとつをとっても年齢と性別に対して社会が背負わせる役割のようなものへの窮屈さや、キャリアを重ねていくことの難しさなど、いまを生きる苦しさに目がいくことも多いと感じていて、「いい時代」とはなかなか言い切れないのではないかと思います。そこをスーさんが言い切れるのはなぜでしょうか?

スー:年齢だと思いますよ。たとえばいまの時代のことを、20代の人は「こんな時代は苦しい……」と思うかもしれないけど、10年後に振り返って見たら「あぁ、10年経ったいまのほうがずっといい時代だな」と感じるのではないかと思います。でも10年後に20代として生きている人はやっぱり「いまはなんて苦しい時代なんだ」と感じるんじゃないかな。

もちろん、予期できない不運や不幸が起こる可能性はあるから、絶対そうだとは言い切れないけれど、極端なことを言うと生きるか死ぬかだった時代から比べれば、少しずついい時代にはなってきていて。ただ期待しているほど変化のスピードは速くないから、どうしてもイライラしてしまうんですけどね。

ーそれは、長い歴史に目を向けると社会がどんどんよくなっていっているという話にくわえて、自分が年齢を重ねたことで、自己認知と社会からの見られ方の折り合いがついて楽になるといった個人的な変化もありますか?

スー:そうですね。30代の後半からの自分を振り返ってみると、自分を評価してくれる人のところに積極的に出向くようになったのが一番の変化ですね。できないことができる人たちのところに行って、頑張ってできるようになろう、苦手を克服しようとするんじゃなくて、自分が普通にやっていることを評価して面白がってくれる人のところに積極的に行くようにしました。その人の評価って、集団によってまったく変わるので。

サラリーマン時代は、女性が得意とされる細やかな仕事が恐ろしく苦手だったんですよ。どこに行っても腐らずにいれば仕事はあるだろうとがんばってはきたんですけど、期待する結果には繋がりませんでしたね。わたしが人の目に触れるようになったのは、居場所を変えたからなんです。たぶん、生まれた瞬間からピカーッと輝いている人ばかりじゃなくて、評価される環境に移動したことで、その価値が広く知られるようになる人もいるんじゃないかなと。多かれ少なかれみんなそうなんじゃないかなと思います。

PROFILE

ジェーン・スー
ジェーン・スー

コラムニスト/ラジオ・パーソナリティ/作詞家
東京生まれ、東京育ちの日本人。現在、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月~金11:00~)のパーソナリティを担当。2013年に発売された初の書籍『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)は発売されると同時にたちまちベストセラーとなり、La La TVにてドラマ化された。2014年に発売された2作目の著書『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』は第31回講談社エッセイ賞を受賞。毎日新聞やAERAなどで数多くの連載を持つ。最新著書『これでもいいのだ』(中央公論新社)が発売中。

INFORMATION

書籍情報
書籍情報
『これでもいいのだ』
著者:ジェーン・スー

2020年1月8日(水)発売
価格:1,540円(税込)
発行:中央公論新社
これでもいいのだ|特設ページ|中央公論新社

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