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綿矢りさ×大九明子対談「誰かと生きることはデフォルトじゃない」

綿矢りさ×大九明子対談「誰かと生きることはデフォルトじゃない」

『勝手にふるえてろ』から再びのタッグ『私をくいとめて』

SPONSORED:『私をくいとめて』
インタビュー・テキスト:野村由芽 撮影:森山将人
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『勝手にふるえてろ』のヨシカも、『私をくいとめて』のみつ子も、小説よりも映画のほうがより、繊細なのにハチャメチャ度がパワーアップしている。元気をもらえるような女の子たちになっていているんです。(綿矢)

大九:はじめ、『私をくいとめて』はただ読んでいただけだったのですが、読んでいるうちに、もしほかの監督が、わたしと違った理解のかたちでこれを映画にしたらなんだか嫌だな……という気持ちがちらっちらっと湧いてきて、わたしならこういうふうに撮る! というのを、まだ映画にする話がなかったのに勝手に書き始めたという経緯があったんです。

―ご自身の意思ではじまった作品なのですね。

大九:はい。書いてから日活(本作の配給会社)に営業しました(笑)。そういうやりかたをしたのはこの作品が初めてです。『勝手にふるえてろ』でご縁をちょうだいしたことが大きく影響しているとは思うのですが、妙な嫉妬と責任感のようなものがあったのかもしれません。すみません、ずうずうしく……。ほかの監督の方が手がけたら、もしかしたらもっと違った、巨大なハリウッド大作みたいなやつが撮れたかもしれないのに……。わたしのようなものが……。

綿矢:(笑)、光栄です。自分で小説を書くときには、主人公が妄想で喋っている場面が多いのですが、書きながら映像が一緒に浮かんでいるとはかならずしも限らないんです。主人公の考えている世界を言葉ではなく映像としてかたちにすることにわたし自身は自信がありません。

だから『勝手にふるえてろ』のときも、監督はどうやって映像になさるんだろう? って思っていたけれど、完成したものを観てみたら、一見地味な主人公の内面の世界が、ときにはミュージカル調に、ときには群像劇として、ほんとうにカラフルに描かれていてめちゃくちゃ感動しました。こういうふうに大九監督はかたちにしてくださるんだなって。

『私をくいとめて』も、同じ理由できっと映像化しにくかったのではないかと思います。小説を書いている本人からしても、「見せ場」みたいなものがつくりにくい内容だな……と思います(笑)。だけど今回も、のんさん演じる主人公のみつ子の怒りや喜び、孤独、不安みたいなものが退屈もせず、不自然でもなく、色とりどりに表現されていて。

『私をくいとめて』メイキング写真 ©2020『私をくいとめて』製作委員会

―もともと監督の意思ではじまった映画化ということでしたが、のんさんの演技も、すばらしかったですよね。監督の熱意を現場でどのように伝えたのか、どうコミュニケーションされたのか、気になりました。

大九:まず「脚本を読んでどうでした?」と聞いたら、温泉のシーンをうまくやりたいなとおっしゃっていて、ああいう部分をやりたい人なんだと発見がありました。あのシーンは、みつ子の怒りが表れるシーンなのですがのんさんは怒りの表現に興味を持たれたのかなと感じて、それはこの映画を撮るときのみつ子の人物像に大きな影響を与えたかもしれません。もともとの脚本が、より力強くなりました。

綿矢:わたしが書く主人公は、まわりから見るとおとなしいけれど、『勝手にふるえてろ』のヨシカも、『私をくいとめて』のみつ子も、小説よりも映画のほうがより、繊細なのにハチャメチャ度がパワーアップしていて、観ているとわたしが元気をもらえるような女の子たちになっていているんです。それが、本当に嬉しいことでした。

PROFILE

大九明子

横浜市出身。1997年に映画美学校第1期生となり、1999年、『意外と死なない』で映画監督デビュー。以降、『恋するマドリ』(07)、『東京無印女子物語』(12)、『でーれーガールズ』(15)などを手掛け、17年に監督、脚本を務めた『勝手にふるえてろ』では、第30回東京国際映画祭コンペティション部門・観客賞をはじめ数々の賞を受賞。近年の作品として、映画『美人が婚活してみたら』(19)、テレビ朝日系「時効警察はじめました」(19)、テレビ東京系「捨ててよ、安達さん。」(20)、映画『甘いお酒でうがい』(20)、テレビ東京系「あのコの夢を見たんです。」(20)などがある。

綿矢りさ

1984年生まれ、京都府出身。高校在学中の2001年『インストール』で第38回文藝賞を受賞しデビュー。2004年『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞。2012年『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞を受賞。ほかの著書に『夢を与える』、『ひらいて』、『憤死』、『大地のゲーム』、『ウォークイン・クローゼット』、『手のひらの京』、『意識のリボン』、『生のみ生のままで』などがあり、『勝手にふるえてろ』は大九明子監督により17年に実写映画化された。

INFORMATION

作品情報
作品情報
『私をくいとめて』

2020年12月18日(金)全国公開

原作:綿矢りさ『私をくいとめて』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
監督・脚本:大九明子
出演:
のん
林遣都
臼田あさ美
若林拓也
前野朋哉
山田真歩
片桐はいり
橋本愛
配給:日活

映画『私をくいとめて』|12月18日(金)全国ロードショー

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