ままならない体/伊藤亜紗

視覚障害や吃音症を研究する美学者が提案する「何とかなるさ」の気分

2018年12月 特集:それぞれのヘルシー
テキスト:伊藤亜紗 編集:野村由芽
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体とはままならいものだ。うまくやらなければいけないときに限って失敗する。若くありたいと思っても年をとる。どんなにがんばってもうまくできない。病気になる。そして最後には死んでしまう。
そもそもわたしは好き好んでこのような見た目の、このような能力の、このような体質の体を持っているのではない。近い将来、生まれてくる子供を遺伝子的にデザインすることが法的に認められたとしても、それは両親の意志であって、生まれてくる本人のものではない。体は、それを持っている本人にとっては、引き受ける以外に選択肢がないデフォルトの条件である。
もちろん体があるからできることもたくさんある。喉が渇いたときに飲む一杯の水の美味しさや、楽しい音楽を聴いているときのグルーヴ感、あるいは人と肌を触れ合う喜びを感じることができるのは、間違いなく体があってのことだ。
そうだとしても、体はわたしが100%思い通りにできる何かではない。体は、わたしのものであるようで、同時にわたしのものではない。「ヘルシーである」とは、おそらく、この体の本質的なままならなさに対して、大らかでいられることだろう。ジョギングや食餌療法で解決するヘルシーもあるが、ここで考えたいヘルシーは、体を持つことにまつわる根源的なものだ。

PROFILE

伊藤亜紗
伊藤亜紗

1979年東京都生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。専門は美学、現代アート。もともと生物学者を目指していたが、大学3年次より文転。2010年に東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻美学芸術学専門分野博士課程を単位取得のうえ退学。同年、博士号を取得(文学)。主な著作に『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社)、『目の見えないアスリートの身体論』(潮出版)、『どもる体』(医学書院)など。参加作品に小林耕平《タ・イ・ム・マ・シ・ン》(国立近代美術館)など。WIRED Audi INNOVATION AWARD 2017受賞。

INFORMATION

書籍情報
書籍情報
『どもる体』
著者:伊藤亜紗

2018年6月発売
価格:2,160円(税込)
発行:医学書院
Amazon

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