完璧な美しさという言葉を聞いた時に必ず思い出す場面がある。
高校生の時に好きな女の子がいた。一度も染めたことのない黒髪が白い肌によく映える、上品な顔立ちで、でも言葉遣いがすこし乱暴ですごく可愛い人。私たちはいつも二人でいた。
学校がすこし早く終わった秋の午後、二人で帰っている途中、駅まで来たところで彼女が突然「冒険しよう」と言った。白くて細い腕が私の背中を押して、二人で切符のないまま改札を駆け抜ける。人を殺したみたいに心臓が跳ね上がった。ホームまで走って追っ手がないのを確認して、転がるほど笑った。
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