眠ると怖い夢しか見ない。怖い夢しか覚えていない。
熱を出して眠りにつくときに繰り返し見る夢がある。例えば、とてつもなく広い団地の中で、一本の針を探している夢。地平線まで建ち並ぶ団地群は風船でできていて、一刻も早く針を見つけなければ、床や壁に刺さって世界が破裂してしまう。それなのに思うように前へ進めない。
例えば、狭い水槽に閉じ込められる夢。薄青い部屋に置かれた厚さ30cmほどの水槽は、私の身体をぴったりと収めている。あまりにもぴったりすぎて抜け出すことができない。腕や足の隙間には何だか分からない日用品が詰まっている。水槽の外から誰かが私を見ている。
決まってうなされ、わあっと飛び起きる。目が覚めてもどきどき震えている。でも同時になぜか慕わしい。まだこの夢を見る私でいたのだ、という懐旧らしい慰めを見つける。自分で怖がらせて、自分で怖がっている憎めなさにくつろいでしまう。
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