最果タヒ「水筒の詩」

言葉の前にいるのはいつも、あなた一人だ。

2020年1・2月 特集:これからのルール
テキスト・詩:最果タヒ 撮影:佐藤麻美 編集:野村由芽
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ルールは言葉が作ると思っています。自分一人で言葉を作ることはできないし、たくさんの人が用いた言葉を借りてくるしかありません。だから、その言葉にはすでに、多様な価値観や先入観が擦り込まれていて、私はそれを、取り払って、言葉に触れることがとても困難だと感じます。けれど、そこに無自覚になれば簡単に、言葉は、私の気持ちなんて通さずに、私の口から、「私の言葉」のふりをして、世の中に出ていくのだろう。そうやって私は、私ではなく、世の中の「ルール」のものになっていくのだろうか。
言葉が苦痛でたまらなかったとき、私は詩の言葉を知りました。それは、ルールなどない、独立した生き物のような言葉だった。私もあなたも、どこかの誰かも、コントロールできない言葉が、生々しくそこにある、それは、「私の言葉」のふりなどしないし、そもそも、「私の言葉」などどこにもないのだと思い知らせる。それでも、書くし、読んでいる。それはただ言葉が、私を追い抜く瞬間があるから。私が言葉に置き去りにされるとき、私はそれをまだ追いかける、別の私の背中を見つける。私は、まだ私のことをほんの僅かにしか知らないと、そこで知るのだ。

言葉はみんなのものだけれど、あなたにとって、あなたの一瞬にとって、言葉の前にいるのはいつも、あなた一人だ。あなたがあなたの輪郭を見つけていくように、この詩を読んでくれたらいいなと思います。

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INFORMATION

『恋人たちはせーので光る』
『恋人たちはせーので光る』

著者:最果タヒ
2019年8月30日(金)発売
価格:1,320円(税込)
発行:リトル・モア
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  • 子連れサラリーマン
    素敵な水筒
    Jan 6.2020

    No.2

  • あなご
    タヒさんの水筒を持ち歩きたくてメンバーになりました。届くのが、飲み物を入れるのが、持ち歩くのが今からとてもたのしみです。
    Jan 3.2020

    No.1