婦人科に行くのは恥ずかしいことですか?/中川えりな

セックスのある生活と、ピルや性病検査、婦人科との関係

2018年12月 特集:それぞれのヘルシー
テキスト:中川えりな 撮影:北村尚 編集:野村由芽 医療監修:林伸彦(産婦人科医)
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まずはじめに。「女性の身体のケア(と社会的な視線)」というテーマで「ヘルシー」について書こうとするとどうしても普遍的なことが言えなかった。妊娠を望まないセックスは矛盾かもしれないし、付き合ってない人とのセックスは矛盾かもしれないし、将来赤ちゃんが欲しい人もそうじゃない人もいるし、セックスっていう行為が生活や人生の中でどういう立ち位置にあるかは人によって違うはずだから。だから今から書くことの主語は全部「私」。

私は、超超好きな人とも、超超好きっていうわけでもない人ともセックスをする。超超好きな人っていうのは、アクシデント的にというか意図せず赤ちゃんを授かっちゃっても一人で育てることになってもいいくらいというか、なんならむしろアクシデント的にその人との赤ちゃんを授かりたいと密かに思っているくらい好きな人のこと。超超好きっていうわけでもない人とは赤ちゃんができて欲しくないから、避妊してセックスする。さみしいし日々つまんないから超超好きな人と付き合えるまでは超超好きってわけでもない人ともセックスをする。

私には理想のセックスとか理想の男性器がある。セックスの最中にされたいこととか、どのくらいの時間セックスしたいとか、一度に何種類の体位をやりたいとか、どのくらいの太さの男性器が好みとかいろいろある。超超好きな人っていうのは、今言ったような私の中のセックスに纏わる理想を全部吹き飛ばしてなかったことにしてくれる人のこと。セックスがなくてもいいと思えるくらいの人に出会えたらそれが私の中の超超好きな人。その人に出会うまでは全部お遊び。お遊びは今のところ楽しいけど、そんなお遊びを私の人生から引き剥がしてくれる人がいつか現れて欲しいと思ってる。別に、常に連絡取り合ったりランチしたりしたいわけじゃないけどなんとなく惹かれる男の人と物理的に繋がることと、超超好きな人と精神的に繋がるのは次元が違うんだろうし、性的興奮よりも超超好きな人にこの地上で出会う興奮の方がきっとはるかにすごいんだと思う。セックスでしか人間が生まれないことの理由をいつか全身で享受したい。

私はかなりの潔癖症だから、超超好きな人以外の男性器はナマで自分の中に入って欲しくない。生理的に受け付けない男性器ともセックスしたいからしょうがない。だからセックスにコンドームは必須。「ゴムすると萎える」って言われたら「これからはオナニーするたびゴムつけて」って修行してもらうし、「ゴムアレルギーだからつけれない」って言われたら それはラテックスゴムのことだから、「割高だけどノンラテックス手配して」って言う(*1)。超超好きな人には私から「ナマでしよ♡」って言うから、私から言われなかったらそれは私とナマでヤる資格がないということで諦めてもらいたい。

コンドームは必ず使うとして、それでも私は低容量ピルを飲むかな。ごく稀に破れるというアクシデントが起こりかねないコンドームが避妊って意味で絶対じゃないのもあるけど、ピル飲んでると生理もラクになるし、万が一の時にアフターピル飲むのはほんと辛いし。アフターピル(*3)は本当に最終手段。高校生の時に何度か飲んだことあったけど、私は救急車呼びたくなるくらい副作用しんどかった(個人差あり)。男よ、「アフターピル代出すからナマやらして」なんて言う権利、お前にはないのだ。同じ要領で言うと10か月間しんどい思いするのは女の方なんだから「俺の子供作って」とか簡単に言うな。

低用量ピルは飲み始めの段階でとても苦労することになる(個人差あり)。私が飲み始めた時、婦人科の先生が何種類かあるピルの中から一つを選んでくれたけどそのピルが自分の体に合うまでの最初の3か月間の生理痛はピルを飲んでいなかった頃よりもずっとひどかった。先生に相談したら、もし4か月目になっても生理痛が軽減されなかったらまた新しいピルを試してみましょう、って言われたけど、っていうことはもしかしたらこのひどい生理痛がさらに3か月続く可能性もあるのか……って思うと途方に暮れた。

人によっては服用できないし、ピルを服用する人の中で喫煙者の人は非喫煙者よりも血栓症のリスクも上がる。副作用チェックのための定期的な血液検査が必要だし、子宮頸癌のリスクも服用によって若干上がるから子宮頸癌の検査もしっかり受けなきゃだし、何より金がかかる。男よ、「日頃からピル飲んで自己管理しなよ」なんて言う権利、お前にはないのだ。

生理不順はホルモンバランスの乱れが原因であることが多い。ホルモンバランスの乱れをそのままにしておくと将来妊娠しにくくなる可能性もある。私は将来赤ちゃんが欲しいな。ホルモンバランスの乱れを治すには心の乱れを直さないといけないので、規則正しい生活をしてしっかり睡眠をとって精神的なストレスをしっかりなくしましょう、なんて言われても無理なものは無理だから、心の乱れを改善できない自分を責めずに婦人科に頼るっていう選択肢はあり。子宮頸癌検査以外にエコー検査も年に一度受ける。子宮頸癌ワクチンって高校3年くらいの時に市が無料か格安にしてくれて打った記憶があるけど、あのワクチンは処女のうちにやったほうが効果が高いって最近になって婦人科の先生に聞いたのであてにせずに定期検診を受ける。

私は、低用量ピル飲んでることを絶対男に教えない。「病気持ってないからナマでいい?」なんて言われたくないから。「病気持ってない」って1か月以内の性病検査の結果を根拠にしか言っちゃダメだと私は思う。そんな私はほぼ月に一度、性病検査を受ける。たまにめんどいから検査キットをネットで買う。風俗嬢みたいでしょ。風俗嬢のこと「性病持ってそうで汚らしい」とか言う奴いるけど、たまにクラブとか飲みの場で知り合った人とワンナイトラブするのに、そしてたまにコンドームなしでセックスするのに性病検査ほとんど受けないあなた、月に何十人も相手するけど必ず避妊具は付ける上に欠かさず月に一度検査を受けている、もしくはノースキンのソープランド勤務で避妊具付けずに月に何十人も相手するけど欠かさず週に一度検査受けている風俗嬢の方がよっぽど清潔で健康だよ。

ちなみに膣カンジダ、細菌、膀胱炎は性病ではないため基本的には性病検査で検査されないから自分で気付くしかない。性病検査に引っかからなかったから自分の女性器は健康だというのは言えない。だから、おりものに何か異変を感じたり気になることがあったら信頼できる婦人科の先生に相談しにいくのが一番いいと思う。私は自分の免疫力のバロメーターを女性器のこういう異変から読み取る。婦人科にかかる機会は定期的に持っておいた方がいい。

私が日常的に低用量ピルを飲んでいるのは避妊用ではない。生理不順がひどすぎるから。ピルを処方してもらう時に「妊娠するかもって不安があると思いっきりセックスできないもんね~」なんて言ってくる婦人科の先生がいるらしい。そんな医者はマジでくたばればいいと思う。初めての婦人科にかかる時はまずネットでググって口コミを確認する。私はしょっちゅう婦人科のお世話になってるけど、安心できるかかりつけの婦人科を見つけたから私は大丈夫。でも世の中には、クソな婦人科がたくさんあるらしい。私は受付でフルネームを呼ぶ婦人科は絶対嫌。「婦人科に行く=性病にかかったor低用量ピルもらいに来たorアフターピルもらいに行った=淫乱」っていうイメージづけが社会からなくならない限り私は婦人科に行っていることをあんまり人に知られたくない。ダムタイプ(*4)の古橋悌二がHIVに感染したのは初めてのボーイフレンドとのセックスかららしい。性病とセックスする相手の数はまじで関係ないって分かってるけど、婦人科に行くことが恥ずかしいことだっていう目線が世間からなくならない限り、プライバシーは守られたい。女友達には「今日の放課後はピルをもらいに行く予定があるからお茶は明日にしよう」って言えるのに、大学の先生には「婦人科に行く予定があるので面談は明日にしてもらえますか?」って言えない自分がいるのは事実。お父さんにも言えないかな。まあ、先生とお父さんには伝わらないであろうここでなら書けるくらいには私は恥ずかしいと思ってないけど。

以下、編集部注
*1……「ラテックス」は、樹木から天然ゴムを抽出し、ラテックス天然ゴムとして加工した素材。ノンラテックスで多いのは「ポリウレタン」。ポリウレタン素材は生体適合性が高く、天然ゴムアレルギーの人も使いやすい。

*2……合成された卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2つのホルモンを含む、Oral Contraceptivesの略称。服用することによる避妊効果もあるが、生理周期を正しく整えたり、生理痛を緩和したり、にきびを改善するなど、避妊以外の目的に使っている人も多い。

*3……避妊に失敗した場合にホルモン避妊薬を服用することで、その後の妊娠を防ぐ薬(参照:新宿レディースクリニックオフィシャルサイトより)

*4……1984年に京都市立芸術大学の学生を中心に結成されたアーティストグループ。

PROFILE

中川えりな
中川えりな

1996年生まれ。学業の傍らモデルとして国内問わず海外でも雑誌やMVなどで活躍中。2017年、園子温の作品『東京ヴァンパイアホテル』で女優としてデビュー。若手映像作家UMMMI.の作品『忘却の先駆者』では初主演を果たす。昨年3月にカルチャーイベント&マガジン『Making-Love Club』を発足させる主催者で編集長。『Making-Love Club』は『花椿』2018年 春号にて、野中モモ推薦のリトルプレスとして紹介され、発行から半年程のインディペンデントマガジンながら、徐々に認知度を広げている。イベント第5弾目が開催された3月7日に最新号となる第3号が発売された。

林伸彦

1985年生まれ。東大理学部卒・千葉大医学部卒。産婦人科(胎児診療)専攻。日本の性教育や中絶、出生前検査などの際に、当事者の視点・権利が軽視されていると感じ、海外の女性医療や社会制度を学ぶ。2016-2018年英国King's College Hospital 胎児診療科勤務。2015年よりNPO法人親子の未来を支える会代表。The Fetal Medicine Foundation 日本コーディネーター。

INFORMATION

書籍情報
書籍情報
『Making-Love Club issue no.6 "I want to believe"』

価格:350円(税込)

オンライン販売:
公式オンラインサイト

取り扱い店:
東京:代官山蔦屋書店、SHIBUYA TSUTAYA、NADiff a/p/a/r/t、ジュンク堂書店池袋本店、本屋B&B、Tac's Knot
愛知:C7C
大阪:LVDB BOOKS、清風堂書店、blackbird books、FOLK old book store

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