たのしみにしていた旅行や、久しぶりに会う友人とのごはん
忙しさからか、心が追いついていない
そのことを“時間に追い抜かされている”と思うことがあるのですが
今回、「深呼吸」をテーマに
日々、時間に追い抜かされそうなとき
ひとつ、ながく息を吐いて、おおきく吸って
自分の時計の針を 少し直すのです
いつだって世界はみずみずしいものであると
体いっぱいに感じるために
今年7月に開いた個展“deep breath”のコンセプトです。
テーマは深呼吸。
たとえば、旅行の前日に「明日、旅行だ!」とバタバタ準備して、無理にアクセルを踏んだ心のまま旅行の日をむかえてしまう。「もう木曜日か」と、一週間が滑るように過ぎていってしまう。何年ぶりに会う友人とのご飯も当日になるとなんだか疲れていたり、何かに焦ってしまったり。
本当はもっと楽しみにしていたはずなのに、どうしても忙しくなると、あらゆる予定が「タスク」に感じてしまう。
すべてのことが自分から遠いところにあるように感じ、目の前のことに追いつけなくなることがあります。
そんな中、
ひとつ大きく深呼吸をして、心を「ここ」に戻します。
よく1日のリセットとして私がやっているのが
お風呂上がりに化粧水をつけるとき、両手で顔を覆い、目を瞑り深呼吸をする。
ハーブのいい香りとともに、すーっと風が通る。
自分の均衡を保つひとつの方法です。
そんなふうに、個展に来てくれた人が深呼吸して、心を「ここ」に戻せるといいなと思って、展示のテーマにしました。
日々の生活の中で、期待したり、待ったり、何かに時間を合わせているとだんだん具合が悪くなっていきます。
何10年も生きていると、自分のリズムというのが実はちゃんとあるみたいで、何かに合わせて生まれたズレは、ふとしたタイミングで限界になることも身にしみて知っている。
目の前の景色や状況が、癒されるものだったり、素敵なものだということが頭でわかっているのだけれど、心に隙間がないと、何も感じとれなかったり、本当の意味で癒されたりできないものです。
耐えしのげるときはそれでもいいのだけれど、
爆発してしまいそうな予感があるときは、
一旦、自分が抱えているすべての役割から離れて、
心置きなく自由でいられる
こんな自分が好きだったと思える場所に帰ります。
母は亡くなり、父は山形でワイナリーを設立して
実家にいつも人がいるということはないのですが、
私は妹といるとき、心から自由にふざけていて
そんな自分がとても好きだと感じられるので
実家に妹がいるときには実家へ逃げます。
以前、爆発して実家に帰るために何も考えずにカバンに詰め込んだのは、
パソコンと財布と母の写真だけだったことがあって、
こういうタイミングで連れて行くのはこのメンバーなんだなあと、
しみじみ思ったことがありました。
行きの新幹線では、夕日にさえ眩しいとイライラしたり、からっぽのまま涙が出ていたりと、完全に心のバランスがめちゃくちゃなのですが、
駅に着いて田んぼの匂いがする街を歩き、泣きながらご飯を食べ
実家の畳で大の字で寝ていると、
知らず知らずのうちに心が整っていく感じに気づきます。
生きているだけで褒められるべきことだと思えるし
ふとしたときの自分の顔が笑っているまで回復していて
帰りの新幹線では、車窓から見える緑や空の青にみずみずしく感動できるのです。
実家に帰るたび、なんでこんなに生き返るのだろうと思うのですが
やっぱり何にも気を使わず、何も演じず、
思いの向くまま過ごすことの健康さから心が元気になっているのかも。
仕事などをキャンセルして急遽帰ることもあるから
ときにまわりに迷惑をかけたり、難しいこともあるけれど、具合が悪くなるくらいなら健康でいたいと思っている
やすむことの大切さは、絶対にあるから。
仕事と遊びが混在している私の仕事は、「プロはやすむことも仕事だ」と言われたことがあります。
長い人生の中で、自分のバランスを自分で取っていくのならば
ときに自分を甘やかしてあげてもいいんです。
世の中が決めた休みの量が、自分に当てはまらない人もいるだろうから、
何かで決められた休みではなく、自分が本当に「やすみたい」と思ったときにやすんだっていいって信じている。
やすむことは、悪だとされることもあるし
やすみたくてもやすめない、こともあるかもしれない
けれど、たまにエイヤ! と「やすむこと」に飛び込むことも必要なのです。
自分はもっともっと頑張れると、自分を頑張らせがちなのだけれど
毎日、成し遂げなくていい。
頑張るためにやすみ、
生きるためにやすみ、
やすみながら、ほどほどにいきましょう。
どれだけ眠くても、毎日起きるだけで偉いし
面倒だと思いながらも、お風呂へ入ろうとする私やあなたは
きっとスタンダードで頑張っている。偉い。
げ~~って思う日も、イエ~~イって思う日も含めて人生
喜怒哀楽が爆発して、祭りみたいに胸が熱くなるようなそんな日に、
生きるってこういうものだったよね! と感動したい。
目の前の世界が今の100パーセントだと感じたい
時間に追われたり、追ったりするのは一度やめて
自分の心を、この場所に戻すために
ひとつ、大きく深呼吸しましょう。
深呼吸することは、“実家に帰る”ほど大きくないかもしれないけれど
自分を「ここ」に戻すことができる
いちばん小さな“やすむこと”だと思うから。
心がやすめていると、世界はキラキラとして見えるし
自然はもれなく美しいものだと気づける。
やすみ、やすみ、心穏やかにやっていこうという
自分との定期的な誓いです。
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