そいつはいつも突然やってくる
大抵は都合の悪い時にやってくる
こっちの都合も予定もまるでお構いなしで
わがままだ
めんどうは嫌だし
めんどうくさがられるのはもっと嫌だから
とりあえずそいつら全部
なかったことにして
押し込めた
そいつさえおとなしくしていれば
都合良く
何もかもまわるはずなのだから
そしたらそいつはいつしか静かになった
だけど気づけば自分の声もきこえなくなった
暑い
ひもじい
眠い
熱がある
さびしい
それってそんなにどうでもよいことだったかな
私が無視してきたそいつは
誰よりも私そのものだった
私はあなたの声をきくようになった
汗をかいて
涙を流して
抱きしめて
抱きしめられるみたいに 眠って
自然に起こることを
止めるのではなく
導かれるように 長い時間を過ごしている
からだ たましい
わたし わたし
生まれ変わるんじゃなくて
生まれ、変わる
私たちは変わり続けていく
汗をかき 涙を流す
生きてるしるしで 生きてるあかし
リンゴの花が咲いて
ふくらみ
実を結んで色を変えていくことを
誰も止めようとは思わない
止められない流れそのものが私たちなのだとしたら
私よりも正直なあなたの声が私には必要
時間はかかるかもしれない
でも入り口はきっと一番近くにある
いつか いずれ たどり着く
私の半身
わがままで都合が悪くてめんどうで
だけど
あなたと一緒じゃないと開けられない扉があると知ってしまった
まだ見ぬ世界
そこではきっと
私は私と 分かたれることはないだろう