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コンプレックスと私たちはどう付き合っているか。50人の「私」の声。

コンプレックスと私たちはどう付き合っているか。
50人の「私」の声。

50人いれば50人異なる。コンプレックスの向き合い方

2018年1月 特集:Dear コンプレックス
テキスト:野村由芽 イラスト:ancco
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無責任に大丈夫だよって言いたいです

七さん

1.
血のつながり。

2.
そのリスクを適切に管理すること。

3.
ひとりひとりに会って、無責任に大丈夫だよって言いたいです。

皆に当てはまる「正しい」が存在するとすれば、それは人類がひとりきりになったときのお話です

眠れさん

1.
評価や完成に対する忌避感。

2.
コンプレックスといっても「なぜそう思うのか」「なぜそう感じるのか」など、深く考えたことはなかったのでそのあたりを真剣に考えることから始めました。

具体的にいうと、まずは原因とされる過去の体験と無意識的な観念を探し出したあとに言語化を行い、情報を「事実」「人から聞いたこと」「自分の憶測」などに分類分けして、正確な状況の理解と原因の把握をしてゆきました。

3.
とうに知っているとは思いますが、世の中はいろんな「正しいとされるもの」で満ちています。
しかし本質的な意味での「正しい」はどこにも存在しません。

皆に当てはまる「正しい」が存在するとすれば、それは人類がひとりきりになったときのお話です。

この場でコンプレックスを抱える人間に激励や賞賛、同情や同調することは簡単かもしれませんが、それは同時にとても無責任なことかもしれません。

けれど一つ言えるとするなら、あなたの「正しい」は私の「正しくない」であり、あなたの「正しくない」は私の「正しい」で、それらは等しく無価値で無意味で、それでいて価値があり意味があるということです。

世界はたったひとつではなくて

野村由芽(She is)

1.
中学生のころ人間関係に悩んだこと。

2.
いかに学校のヒエラルキーから抜け出すかということを考えていて、人と人の関係性だけを考えて生きるのではなく、自分の心が動くものを発見してそれを伝えることで光っている人になりたいと決めた時期がありました。
具体的には、日々面白いと感じたトピックを頭文字で記憶しておいていつでも取り出せるようにしておくという人的ハードディスクのようなことをしていたり、ひとりごとをカセットテープで録音したりしていました……。
いま考えるとひとごとのような思い出ですが、そうやって自分の好きなものや面白いと感じるもの、そしてその逆を見極める感性の訓練をしていたのだと思います。

3.
私たちはたったひとつの世界を生きているのではなく、見る人の数だけ存在する「世界像」のなかで生きているのだと聞き、腑に落ちたことがあります。世界を見ているのは自分の心だという気持ちで、愛でも批評のまなざしでもいいから、自分をとりまくいろんなことを見る目を育てていくことが、いつかの自分を助けるのかもしれないなと思います。

正面から飛び込んでみる

灰色ハイジさん

1.
中学不登校だったことで、人と会話をすること、そして義務教育を数年受けていなかったことで学ばなかった英語にコンプレックスがありました。帰国子女が多くいる女子中学に受験をして入ったので、これまで田舎で暮らしていた私にはカルチャーショックが大きかったのだと思います。

2.
縁あって思いがけず暮らすことになったアメリカで、現地のデザイン学校に飛び込んだこと。日本にいたときは人と比べることで落ち込んだりもしましたが、自分が日々少しずつ英語話せるようになってきたことを実感することで自信が持てるようになってきました。自分に向き合えるようになってきたんだと思います。

3.
コンプレックスに正面から飛び込んでみると、いろんな発見があるもしれません。私は「分からない」ことが一番怖かった。すぐに受け入れるのは難しいし、もしかしたら一生そのコンプレックスは治らないかもしれないけれど、別のことで自信が持てたり、少しずつ克服できるかも。

「なりたい自分になること」や、そうなろうとする過程にこそ意味がある

はくるさん

1.
地方コンプレックス。物心が付く前後の年齢をよく言えば温泉地の田舎で過ごし、カルチャーや共通言語が存在せず、会いたい人も居なければ行きたいところもないドン詰まりで10年間まともに暮らすことはかなりギリギリでした。体育会系・コンサバコンプレックスと言い換えることもできるかも。

2.
自分の中に文化を持つこと。わかりやすいもので言えば本やファッションなど、カルチャー全般に愛せるものを探しまわりのめり込むことで風穴を開けて息をしていたように思います。そういったことに時間を割いたり、自己投資をすることには本気で取り組んでいました。

知識を得たり同じものを好きな人とコミュニケーションを取るためのツールとして命綱的にインターネットを使っていて、10代前半の頃にmixiで知り合った人たちと今でも交流があったりします。何かを自分の目で見に行く、興味のある人に会いに行くフットワークの軽さ(当時の感覚的には命からがら逃げ出していただけですが)があったので、もうその頃から毎月何度か週末は東京に出てきていました。

3.
「ありのままの自分を愛する」という自己肯定はどこか頭打ちのような気がしていて、「なりたい自分になること」や、そうなろうとする過程にこそ意味があるように思います。あなたの思うあなたらしさとはなんなのか、理想や自己認識をしっかりと持ち、そしてそれを諦めずにいられるように努めること。生まれ持った器に何を入れながら生きていくのかを能動的に選び取っていきましょう。

誰かのためのあなたじゃなく、あなたのためのあなた

秦レンナさん

1.
太っている、ということ(見た目というより体重にこだわってるみたい)。

2.
万年ダイエットみたいなところはあったけど、社会人になって一度拒食症みたいにぜんぜん食べられなくなってガクン! と痩せてから自分の体とかなり真剣に向き合うようになったかも。
その頃からヨガをはじめたことも大きかった。体重を体と切り離して見ていたけれど、精神、体、体重を、ワンセットとして考えるようにしています(だけどまた最近太りはじめている笑)。

3.
コンプレックスの力って本当に強いし、なくなりはしないもの。なくすというより、受け入れて付き合っていくってことなんだと思う。結局は、私は私。と思える力を高めていく、そう思える環境を大切にするとか。
ついつい相対的な見方、考え方になってしまうけれど、たとえば自然のなか、宇宙のなかに身を置く(と考えてみる)と、絶対的なものが見えてきて楽になることもある。

誰かのためのあなたじゃなく、あなたのためのあなた、でいいんじゃないかなぁ。

ダイナマイトを仕掛ける

はらだ有彩さん

1.
子どもの頃、男の子になりたかったのに運動が全然できなかったこと。

2.
レギュレーションを破壊すること。コンプレックスを抱くことでコンプレックスの対象を苦しめていないか考えること(運動ができないとかっこいい男の子じゃないって思っていること自体がナンセンスなのでは? と気づくこと)。

3.
自分の庭に穴が空いているのなら、土を運んできて埋めるのもいいけど、ダイナマイトを仕掛けて土地をまるごと均(なら)すのもいいですよね。発破の衝撃で温泉や石油や金塊が出てくるかもしれないし。

自分は自分以外の者にはなれないということを受け入れる

haru. さん

1.
高校生の頃ドイツに留学中に感じたことですが、周りの女の子が理想とする女の子像と自分がかけ離れ過ぎていてそれがすごく気になっていました(高校生らしい悩み……)。

2.
体の線も細いし、髪は男の子みたいに短いしみんなが思うセクシーな女の子からはかけ離れていたけど、自分ってレアなんだ! だったらその路線で突き抜けるわ、と思ったのが開放的な気持ちになれたきっかけでした。

3.
コンプレックスっていつでもどこでも生まれる可能性を秘めているものだと思います。でも自分は自分以外の者にはなれないということを受け入れることで、私は今心に余裕が持てているな、と思います。難しいけどなあ(笑)。

「克服」でも「妥協」でもない「選択」の物語

文月悠光さん

1.
同世代に比べて、未経験のことがたくさんあること。
いつまでも垢抜けないこと(She isに登場する女性たちが眩しすぎて……!)

2.
「克服する」と考えた瞬間に、無理に背伸びをして、つらくなってしまいがちです。
劣等感の存在を自分の中に認めて、苦しいけれど、心の隅にいつも置いておくのが大事だと思います。
落ち着いたら言葉にして、誰かに共有してみるのも良いかも(私の場合はエッセイを書くこと)。

3.
私はエイミー・ベンダーの小説が大好きです。彼女の作品の登場人物は、ある欠陥やコンプレックスを抱えながらも、それらを能力として生かし、世界との折り合いのつけ方を見つけていきます。それは「克服」でも「妥協」でもない「選択」の物語。すばらしい物語の力を通して、自分自身と向き合ってみてください。

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