あなたの気持ちは、あなたのもの。あなたのからだは、あなたのもの。
川上:他者からの視点という問題は現在も続いていて、例えば「この服は、デコルテが出てきれいだな」みたいに、自分の気持ちが上がる服ってあるでしょう。でも肌が露出した服を着ていくと、自分のために着てきてくれたと思う人がいるんですよ。「自分に気があるのかな?」って。
女性というのは男性が評価していい対象だと思われているということですよね。街頭でティッシュを配られて、断ったら「ブス!」と言われたりする。もちろん性別関係なく、いきなり罵倒語を言うことなんてあってはならない。でも、現実にそういうことがあるんです。
千原:すごいことですね……。
川上:だからこそ、身体が変わっていく思春期の女の子をはじめとしたすべての女性が、下着を買いにune nana coolのお店へ行った時に「あなたの気持ちは、あなたのもの。あなたのからだは、あなたのもの」という言葉に出会ってほしいなって思うんです。誰かに評価してもらうのではなく、胸を張って、自分を称えることできるようになるために。
千原:そうですね。僕自身「女の子、登場」のビジュアルとコピーについて打ち合わせしている時に、それまで自分を含めた男の人って、そういうことに対して鈍感すぎたって気がついたんですよ。考えるきっかけがなかったんですよね。
川上:身体も違うし、置かれてきた環境も異なるから、問題として見えにくいですよね。
自分が持っている違和感や問題と向き合っていくために、それに言葉を与えていくのはすごく大事なこと。
千原:「女の子、登場」にも書かれているけど、打ち合わせの時に、女の子が誰かと出会う物語の結末は、『シンデレラ』も『白雪姫』も、結局男性が成果を持っていくじゃないかっていう話をしましたよね。主役は女性だけど、最後に悪者を倒すのは男の人で、その人と結婚するというのが物語の終わりだっていう。
川上:これまでの主要なステレオタイプとして、女性の幸せや自己実現は女性一人では成立しにくく、最後はより強い男性や、結婚のような社会システムに寄りかかるというのがありますよね。最近の物語は、少しずつ変化してきているとは思いますが。
千原:そういうことに男性は気づいていない人が多いですよね。例えば大きな会社があって、役員が男性しかいないというようなことを、おかしいとも思っていなかったりする。それって結構不思議な社会なのに。今、労働時間が見直されたりしているけど、それまでの働き方は女性が家で生活を支えてくれるという前提のもと、男性に合わせてできたものという側面が大きいですしね。
川上:でもこうやって、下着一つをとっても、私が白ブリーフのことをよくわかっていないように、人というのはお互いにわからないことだらけです。大事なのは「私たちがその問題についてよく知らないのだ」という気持ちを持つことだと思います。
それから「これが問題なんです」と言っている人たちに対して、「その問題はどうでもいいよ」とか「めんどくさい」ということは言ったらいけないですよね。それを現状の問題だと受け止めて、話し合っていける柔軟さというのが大切だと思います。
千原:そういう声は、最近いろんなところで聞くようになってきたな。それこそSNSとか、She isのような場所も出てきたし。
川上:SNSのいいところは、一人一人の現状に対する違和感が可視化されるところ。違和感を言語化している人が誰かいて、それに対して意見を持つ誰かがいる。もちろん、心ない発言や不毛に思えるやりとりもあると思います。だけど一方で、すごく胸に残る意見や文章を書く人もいて。自分が持っている違和感や問題と向き合っていくために、それに言葉を与えていくこと。それがすごく大事なことだと思いますね。
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