「女の子の人生を応援する」というコンセプトを持つ下着ブランド、une nana coolが4月から新たに立ち上げたのが、女の子の人生を応援するコミュニティ「une nana cool commune(ウンナナクールコミューン)」。その第1回目の活動として、She isのGirlfriendsでもある作家の川上未映子さんと、une nana coolのブランドビジュアルを手がけたクリエイティブディレクター千原徹也さんのトークイベントが開催されました。今回は、その内容を特別にお届け。「わたし」と「わたしのからだ」を巡る問題について、リアリティを持って迫るお二人のトークは、きっと今まさに悩んでいる人にとって生きやすさのヒントになるはず。
女性の生き方については、言いたいことがいつもたくさんある。
川上:今日は女性限定のイベントということで、下着の話や女性の生き方の話などをしていければと思います。千原くんとは9年ぐらい前に知り合って、このune nana coolのお仕事でご一緒するのは今回で3期目ですね。
千原:une nana coolのブランド自体に「女の子の人生を応援する」というテーマがあったので、これは川上さんとやりたいと思って連絡して。
川上:私も「もちろん!」と即答して、すぐ決まったよね。女性の生き方については、言いたいことがいつもたくさんあるから声をかけてもらって嬉しかったです。例えば韓国で女性と社会を描いた文学がすごく売れていますが、世界的にも、女性の生き方に対して言葉にできないような違和感を持っていた人が多いのだと思います。
それは男性もそうですよね。自分で決めたわけでもない「男らしさ」や「男のルール」の中で生きている人が少なくない。そういうことを、ここ6、7年で見直していこうという時期になってきていると思うんですよね。だからこそ、une nana coolの「女の子、登場」という広告を2017年に作った時は、反響も大きくて、すごく手応えを感じたよね。
千原:そうやね。川上さんにテキストを書いてもらって、僕がアートディレクションしてね。
川上:説明っぽすぎるかなとか、広告としては直接的すぎるかな、と最初は少し思ったんですね。でも私は女の人の体のことを小説でもずっと書いてきているから、下着について何か伝えられるということであれば、凝縮した思いのようなものがあって。サイン会などをやると、「今でも大事にしてる」と言ってチラシを持ってきてくれる方もいますよ。
「私の胸が膨らんできて、初めて下着を着けなきゃいけなくなった時にこの広告があってくれたら、あんな惨めな気持ちで下着を買いに行かなくて済んだのに」って。
千原:それは嬉しいですね。あの広告は、une nana coolがリブランディングするタイミングで、僕たちがこれからこういうテーマでメッセージを発信していきますよっていうステートメントみたいなものだったから。今期は「わたしは、わたしの夢をみる」というコピーで、ビジュアルには女優ののんさんに出てもらいました。
川上:一緒に仕事をしている40歳ぐらいの女性の編集者が、1期と2期の伊藤万理華さんの広告を見てくれた時に、すごく印象的な感想を言ってくれて。「私の胸が膨らんできて、初めて下着を着けきゃいけなくなった時にこの広告があってくれたら、あんな惨めな気持ちで下着を買いに行かなくて済んだのに」って。
川上:そう言われて、私自身もいろんなこと思い出したんですよね。今もそうなのかわかりませんが、私が子どもの頃は、ブラジャーって体の成長に合わせて段階を踏んで選んでいくもので。ワイヤー入りのレース素材みたいなのはお姉さまの下着で、まずはタンクトップを半分にしたような、スポーツブラというのを着けるんです。売り場からしてわかれていて、「いきなりそっちへはいけへん」という感じがありましたね。男の子も白ブリーフからボクサーショーツみたいな移り変わりってありますよね?
千原:ありましたね。最初は白ブリーフで。
川上:あれめっちゃイケてると思うんやけど、あかんの(笑)? 白ブリーフは母親から買い与えられているというコンテクストが付いているから、あれを脱ぐということは自立だって説もありますよね。
千原:自立ですね。白ブリーフって、ゴムのところにめちゃめちゃ滲んだ母親の文字で「千原」とか名前が書いてあったりして、明らかに自分の意思で選んでいない感があるんですよ。
例えばTシャツとかズボンとかも、小学生ぐらいの頃は「テツヤこれ着ぃやぁ」って親に渡されて着てるやんか。でも中学生ぐらいになってくると、友達の中に自分で買う人が出てくるわけですよね。そうなってくると、だんだん体育の着替えの時に白いブリーフを着ているやつが減ってくるわけ。英字の柄とかが入ってるトランクスを履き始めるんです(笑)。
川上:女の子は、お母さんと下着を買いに行っている人が多かった気がするけど、うちは母親が忙しかったから、そういうことも相談できなかったな。姉がいたので、姉の下着を勝手に使って怒られたり。
そういえば、中学生の時に男性の先生から、「男子学生の気がそっちにいってしょうがないからブラジャーは目立たない色にしろ」って言われたことがありましたね。女の子もそれを「エローい」とか言って、受け入れるんですよ。そうやって女の子は、自分の下着や体が、男の人の目によって消費されるものだということを言われているんですね。自分の体が評価付けされて当たり前の中で生きている。
千原:普通に言われ続けているんですね。
川上:個人じゃなくて「女の体」というのがまずあって、その中にスイカの種みたいに自分らがいるっていう感じ。私らは何も変わってないのに、子どもの時から同じように同じ道を歩いているだけなのに、ある時になったら変な人がじっと見てくる。そういう恐怖を感じたことがある人が少なくない。男性でも経験したことがある人はいると思う。
千原:そういう経験は性別問わずあると思いますね。
- 1
- 2