旅に出たときに、雲の流れの速度だとか木漏れ日だとか、地面をついばむ雀だとか、日常でも見ているはずのものがみずみずしく感じられることがある。それは、たとえば広告や看板、さまざまな情報に囲まれ無防備にさらされているわたしたちの身体が、その数多の情報を無意識のうちにシャットダウンしながら生きているからだと、ある文献で読んだことがあります。
旅というのは、五感、もしかしたらそれ以上の感覚器官の扉を開放するスイッチのようなものなのだと思う。そしてそのスイッチをオンにするのは、「脳内だけ旅にでかける」という行為でもじゅうぶん可能です。
She isの8月特集「やすみやすみ、やろう」を飾ったガラス作家の和田朋子さんの作品には、天地左右、次元の感覚や並行感覚をゆさぶる新しい風景が広がります。そんな和田さんが作品にこめた想いについて、言葉をよせていただきました。
心のやすませ方は人によって色々な方法がある。大事にしているのが、刺激を受けるということ
・特集「やすみやすみ、やろう」のテーマをどのように解釈しましたか?
ざっくりですが身体をやすめることと心をやすめることに分けられると思いました。今回は心をやすめるということについて自分なりに考えてみました。
心のやすませ方は人によって色々な方法があると思います。例えば、ただただのんびりする、好きな人(友人、家族、恋人など)と過ごすなど安心感を得られるような方法もあるし、趣味や好きなことをする、旅行に行くというようなことは気分転換になったり心が満たされることでもあると思います。
私自身にももちろん色々なやすみ方があって、その中でも大事にしているのが、刺激を受けるということです。例えば、様々なものを見たり匂いを嗅いだり触ったりすることや、人と会って話を聞いたりすること、今まで知らなかったことを知ることなどは私の心の刺激となり活力をもたらしてくれると感じています。
脳内や気持ちがリフレッシュできるような作品になれば良い
・作品をつくるときに込めた思い。
最初の質問で述べているようにあくまで私は刺激を受けることが活力につながっているので、眺めてホッとできる作品というよりは脳内や気持ちがリフレッシュできるような作品になれば良いなと思いました。見る人の視線が動きガラスの箱の中に入ってみたいと思ったり、見ていて不思議な感覚になるような作品を目指しました。
明るい色の作品を作ってる時は私自身もとても楽しい
・つくっていておもしろかったところ、こだわりポイント。
夏らしい明るい色味とより透け感のある作品にしようと思いました。明るい色の作品を作ってる時は私自身もとても楽しいです。
これから出会う人たちからも少なからず影響を受けていく
・自分の作品に影響をあたえた/あたえているもの、こと、ひと
作家活動をしていくにつれて自分に関わってくれる人が増えていき、それに伴って作品のことに限らず色々な人の意見や考え方を聞ける機会が増えました。自分自身であれこれ考えることも以前より多くなったように思います。そうした人たちのおかげで今の自分や作品があると思いますし、これから出会う人たちからも少なからず影響を受けていくのだろうと思います。
和田朋子+カワイハルナ 2人展『Dimension Clash』
髙橋漠さんとともに立ち上げたガラスウェアブランド「TOUMEI」
私は母からこれやっちゃダメとか、こうしなさいとかほとんど言われたことがない
・あなたにとって大切なShe はだれですか?
母です。自分が大人になり母を1人の人として考えた時に、すごいなとか尊敬できるなと思うことが増えました。
親って子供に幸せになってほしいと思うがゆえに色々言いたくなってしまうものだと思うのですが、大人になってから思い返すと私は母からこれやっちゃダメとか、こうしなさいとかほとんど言われたことがないです。それって難しいことだと思いますが「自分の子供」ではなく1人の人間として尊重してくれているように思います。今は祖父母の介護などで大変みたいですが、その中でも自分の趣味や人生を楽しんでいます。そういう姿勢も見習いたいですね。