国内の感染者数が増加しているカナダの新型コロナウイルスへの向き合い方
私はカナダのトロントで暮らしていますが、3月半ばに自宅待機が要請されて約1か月半が経ちます。カナダは日本と比較すると人口密度がずっと低く、満員電車のような人が密集する空間がありませんが、それでも確認された感染者累計は4月27日時点で4万8500人を超えています(*2)。
4月9日に、カナダ保健当局は初めてカナダ国内での新型コロナウイルスの被害想定を公表しましたが、その内容は「規制がない状態では死者数は30万人にも及び、例えソーシャルディスタンス(社会的距離)の対策が高度に守られたとしても死者数が1万千~1万2千人に上る」という試算でした。
しかし、4月20日にオンタリオ州は新型コロナウイルス感染はピークに達したと発表しました。また、カナダ保健当局は27日に新型コロナウイルス感染症による死者の増加ペースが鈍化し、8日連続で10%以下にとどまっていると発表し、前回予測した30万人という最悪のケース、もしくは8万人といった中間ケースの感染シナリオよりも大幅に低くなると予測し、2万人未満になるとしています。他国同様に高齢者や基礎疾患がある人にとっては注意が必要な状況には変わりませんが、全体的な感染者の推移は最悪のシナリオではなく、ベストケースのシナリオに向かっています。引き続き非常事態宣言の環境下にいるものの、一人一人の外出自粛や公衆衛生の徹底などが実を結んだ成果となっています。
*2:「新型コロナウイルス 日本国内の最新感染状況マップ・感染者数」では日本国内での累計感染者数、全国の感染者数の推移、感染事例が報告された場所の情報、都道府県別累計感染者数・死亡者数、年代別累計感染者数・死亡者数、世界各国の累計感染者数がまとめられている。
連日、全国生放送で自宅前で記者会見を開き、報道陣の質問に答えているトルドー首相。Canadian PM Justin Trudeau Gives a Coronavirus Update | LIVE | NowThis
カナダ政府の新型コロナウイルス対策の一貫性とスピード感
カナダ政府のウイルス対策には概ね多くの人が納得しているという印象を受けますが、その背景には政府のスピード感ある対応と発信する情報の一貫性があります。カナダは新型コロナウイルスの拡大が他国と比較して比較的後発であったことから、2月後半まではそこまで危機感が見られませんでしたが、状況は3月初めに一変しました。カナダ政府は新型コロナウイルスへの対策をスピーディーに行い、休校、帰国者の自主隔離、国境封鎖、ビジネスや集会の自粛など次々と対策を発表しました。
また、カナダ政府は新型コロナウイルス蔓延の渦中で様々な経済対策を発表しており、その規模は当初計画していた270億カナダドルを大幅に上回る520億カナダドル(約40兆円)となりました。トルドー首相は新型コロナの影響を受けた人へ月2,000カナダドル(約15万円)給付するほか、学生ローンの返済を3か月猶予すると説明し、550億カナダドル(約42兆円)規模の課税猶予措置も盛り込んでいます。4月22日に、トルドー首相が学生への月々1,250ドルもしくは1,750ドルの緊急支援金CESBを発表し、4月24日にはコマーシャル物件75%の家賃補助支援策を発表しました。政府が50%補助で州と合意し、家賃月5万ドル以下の中小企業は75%がカバーされる見込みとなります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてメンタルヘルスや依存症のケアに対する資金サポートも行われており、アルバータ州政府は新型コロナウイルス拡大に伴い、自身のメンタルヘルスで悩みや苦労を抱えている人や中毒や依存症に困っている人などを支えるために、既存のサポートからさらに5,300万ドルを資金提供することを決定しました。