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様々な土地、時代を生きる女性たちの物語。かとうさおりが教える5冊

様々な土地、時代を生きる女性たちの物語。かとうさおりが教える5冊

きっとずっと続くことを疑いもしなかった平坦な日々を思う

2020年3・4月 特集:どこで生きる?
テキスト:かとうさおり イラスト:村本萌 編集:竹中万季
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一切が動き出さないような、気の遠くなるような、永遠とも思われるような時間にも、きっと意味があると信じて。

『なにもない』(著:カルメン・ラフォレット、訳:木村裕美、発行:河出書房新社)(Amazonで見る

「生を享受するために生まれる人がいる、働くために生まれる人がいる、
人生を見つめるために生まれる人もいる。私には傍観者という、ちっぽけで、けちな役割があった」

内戦直後のバルセロナ。18歳のアンドレアは祖母宅に身を寄せる。
薄汚れたアリバウ通りの住居には、それぞれに事情を抱えた人々が同居していた。人生に疲弊した家族たち。その悲しみや暴力や貧しさの連鎖、死や愛をアンドレアはただひたすらに傍観者として観察する。まるで小説や映画を眺めるように。初めての親友との友情を育み、大学に通いながらも、まだ彼女は自分の人生の主人公ではない。物語最大の事件の後、1年という短いアリバウ通りでの生活を終え、人生の様々を目撃したアンドレアは新しい世界に踏み出す。

彼女が自分の居場所にまるで無関心であり得たのは、自分の悲しみや、人生において手に入れたいと切望するものに、初めから折り合いをつけるため。それらは取るに足らないものなのだと。

タイトルにも使われている「なにもない」という言葉は、自分の人生に踏み出す前の助走の季節。一見なにもないように思える、ありふれた日々の連続の中にこそ、人生の喜怒哀楽や真理、そのほか全てが詰まっている。そのことに気づけた時、自分の人生を生き始めることが出来るだろう。

一切が動き出さないような、気の遠くなるような、永遠とも思われるような時間にも、きっと意味があると信じて。

PROFILE

かとうさおり
かとうさおり

色彩、記憶、物語をテーマに2014年にNINE STORIESとしてものづくりの活動を衝動的にスタートする。
活動名の由来は、たくさんの物語を作っていきたいという思いを込めて。
百貨店催事や個展を中心に大阪にて活動中。
自主企画として映画上映やトークイベントの企画に携わるほか、
映画館、配給とのコラボレーション企画も行っている。
読書好きが高じて、読書の楽しみを広める活動として古本市への出展、企画にも携わる。

村本萌

illustrator, textile designer

INFORMATION

イベント情報

5月以降のポップアップショップ・催事に向けて目下、新作を制作中。

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