2020年6月6日(土)
ナカコ 6月6日(土)18:30
私が監修した展覧会『写真とファッション 90年代以降の関係性を探る』を見て、友人の小林エリカさんがSNSで強い反応を見せてくれたので、メッセージを送り、言葉を交わした。彼女とのやりとりの中で、はっと思い出した。
90年代初頭に髙橋恭司さんが雑誌で日本人の女の子を撮ったファッション写真。90年代半ばごろからホンマタカシさんと私が国内外の様々な雑誌でつくった日本人モデルのファッションストーリー。それらは白人至上主義への反発であったということ。「美しくあるということは、白人であることにある」「だから、ファッションモデルは白人でなければならない」という、雑誌業界にはびこる既成概念との戦いだった。この問題を強く意識しているPUGMENTは、日本人にとっての「洋装としてのファッション」について考えることを、活動コンセプトの一つにすえている。
人生の中に美しさを見つけるアンダース・エドストロームは90年代、年配の女性や古着に美しさを見出したマルタン・マルジェラとコラボレーションしていた。エレン・フライスは常に、人や日常生活の中に美を見出してきたが、彼女が最近夢中になっているものの一つが、コズミックワンダーの活動や、その創設者である前田征紀さんの制作活動だ。展覧会では両者がコラボレーションをしている。
今回の展覧会では、ファッションや写真の何かを見に来た人が、別の何かを見つけるかもしれない。そこが面白いところだと思う。ファッションの世界には偏見が本当に多くみつかるけれど、もともと服を着るということは、日常生活の中で行われる人間的な行為だ。ファッションはもっと自由であってほしい、と私は常々思っている。
エレン 6月6日(土) 20:30
私は今日、一枚の小さな絵を買った。シンプルな風景をダンボールに描いたものだ。具象的な風景画を買うのは、私の受けてきた美術教育に反している。私の父はシュールレアリスムとダダ芸術運動の専門家で、具象的な絵を好まない。私が若い頃、友人のアーティストたちは皆、絵を描くことを好まず、アイデアだけを重要視していた。子供の頃も、現代美術にふれた時代も、美術との関係で「美」という言葉を聞くことは、ほとんどなかった。だから私にとって、風景を描いた絵を買うことは、革命的なことなのだ。けれども、私がこの絵を買ったのはそういう理由ではない。
数か月前、ロサンゼルスから私の村に一人の画家が引っ越してきた。私は毎週日曜日の朝、マーケットのあとに行く喫茶コーナーで彼をよく見かけていた。ある日曜日に立ち寄ったところ、彼の絵が壁に飾られていたのだが、驚いたことに、私はとても美しいと思ったのだ。彼は光に対する特別なセンスをもっていて、肖像画も印象的だったけれど、私は風景画の方に惹かれた。最初は視覚芸術を強く拒絶していた私が、シンプルで美しい風景画の価値がわかるようになるまでには、何年もかかったのだ。