「P/M S」戸田真琴
折り重なる疑問符が 土砂崩れを起こしたように熱を出す
ズキズキと痛む頭の奥を注意深く歩く 裸足にくつしたを履く
床の凹凸
ちいさなひび割れ 唸るような音
滲み出た液
いつか治った怪我のあと
天井から下がる1本の糸が鼻先に触れる2秒前
ここまでこないと見えなかったね、あえかに光って
きみは、涙を見せない
「どうせ壊れてしまうくせに治そうとするの」
銀の彗星が壊れそうに脳内を、走る、走る
ここに着くまでにどれだけどれだけ身体から隕石をこぼしてきたの
石礫はどこか惑星に惑星に 何か重力に惹きつけられて引っかき傷を残していったかもしれないが
きみの方がずっと傷ついていた 剥がれ落としながら泳いでいた
きみは、涙をこぼさない
ここまでこないと見えなかったね、光ってしまって
折り重なる疑問符が土砂崩れを起こしたように熱を出す
きみの気づかぬ小さな傷から
どうか細菌もウィルスもひとつだって入り込んでは行きませんように
祈りとは結果をコントロールすること、を手放すということ
君と私をとコントロールすること、を手放すということ
少し遠くの川に行こう
見たことがない遊具を越えて 陽がひまわりの軸のままに落ちる
夏はいつも気がついたらすっかりそこにある
そしてまた潤ったまま
わずかに癒えていく
「生きているだけで君は許されているんだよ」と言ってしまえることがある
「腐った茎がしなだれ落ちる ふくよかなバラが咲き出でる
きみが傷ついていなかったら自分の怪我にも気づかなかったね
ドラマのように星は落ちない 強くない私たちがいる