She isの更新は停止しました。新たにリニューアルしたメディア「CINRA」をよろしくお願いいたします。 ※この画面を閉じることで、過去コンテンツは引き続きご覧いただけます。

くるしい/南沙良×ごめん

「頭の中の女の子」がテーマのショートショートを先行配信

連載:「頭の中の女の子たち」南沙良×ごめん
テキスト:南沙良 装画:ごめん 編集:上田智子、竹中万季
  • SHARE

電子書籍文芸誌『yom yom』で毎号エッセイ「届かない手紙を書きたい」を執筆する、女優でモデルの南沙良。『yom yom』2020年10月号で掲載予定の、イラストレーターで漫画家のごめんとコラボレーションした「頭の中の女の子」がテーマのショートショート全4話をShe isで順次先行公開。

私はここで息が出来ない。誰もいなくなった放課後の教室に。狭い水槽の中に。閉じ込められているよう。

私の入る余地はただの1ミリもないようだった。私はそうじゃない、みんなとは違うのだと、毎日血反吐を吐きながら叫んでいた。格子窓から射し込む光に照らされた、地面にまき散らされた赤銅色の澱を、私は冷徹に見つめていた。美しかった。

私は知っている。世界は白と黒だけではなく、その間に広がる色がどれも等しく美しいことを。そして同時に私は知っている。世界に広がるどんな色でも白と黒に見えてしまい、それも「普通」という枠に入ってしまうことを。私は覚えている。2時間目をさぼって季節外れの海に行くとか、17歳最後の日にアイスを食べながら涙を流すとか、ほんとはそんなことをしてみたかった「普通」の私がいたことを。

イケてるとかイケてないとか、勝ちとか負けとか。私はこの狭い水槽の中で定義された「普通」という枠からはみ出た存在なんだ、という現実を直視することしか出来ない。

昨夜まで降っていた雪はもう路面に溶け始めている。
いつも女の子がいる電話ボックスには誰もいない。

今は大きい酸素ボンベを背中に抱えているから息が続いている。白と黒の光り輝く「普通」の世界の中で。

※「yom yom」2020年10月号(9月18日[金]配信開始/希望小売価格 700 円[税別])は、各電子書店でお求めいただけます。

PROFILE

南沙良
南沙良

女優、モデル。2002年6月11日生まれ。映画『幼な子われらに生まれ』(2017年8月公開)で女優デビュー。初主演映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(2018年7月公開)で、報知映画賞、ブルーリボン賞他、数々の映画賞を受賞し、その演技力が高く評価される。本年度は、アーティスト・sumikaの新曲「エンドロール」のショートフィルムで主演を務め、その後も、ドラマ『ピンぼけの家族』(BSプレミアム)でヒロイン、映画『もみの家』で主演、ドラマ『これっきりサマー』(NHK大阪)で主演を務めるなど活躍する。11月下旬放送の特集ドラマ『うつ病九段』(BSプレミアム)、来年3月5日公開の映画『太陽は動かない』への出演を控える。江崎グリコ「ポッキー」イメージキャラクター。
©岩澤高雄(The VOICE MANAGEMENT)

ごめん
ごめん

イラストレーター、漫画家。「生活とさびしさ」をテーマに、イラストや漫画を描いている。2019年8月、初の書籍「たとえばいつかそれが愛じゃなくなったとして」を発売。

INFORMATION

連載:「頭の中の女の子たち」南沙良×ごめん
連載:「頭の中の女の子たち」南沙良×ごめん
南沙良とごめんによるショートショート。
頭の中に存在する女の子が浮かび上がる

第一回:この過ぎゆく一瞬を
第二回:手の中の約束
第三回:くるしい

書籍情報
書籍情報
『yom yom』

小説、コミック、エッセイ、ノンフィクションなど、あらゆるジャンルの注目作品をお届けするクロスオーバー文芸誌。毎奇数月第3金曜に電子書籍で配信しています。変化する時代の姿を捉えながら、そこに生きる私たちの「リアル」を追いかけたい――そうした願いを込めながら、最新カルチャーや国内外の社会情勢、思想・哲学の関連記事も充実させています。

2020年9月18日配信開始
価格:770円(税込)
発行:新潮社

yom yom | 新潮社
yomyom (@yomyomclub) / Twitter

くるしい/南沙良×ごめん

SHARE!

くるしい/南沙良×ごめん

She isの最新情報は
TwitterやFacebookをフォローして
チェック!

RECOMMENDED

LATEST

MORE

LIMITED ARTICLES

She isのMembersだけが読むことができる限定記事。ログイン後にお読みいただけます。

MEMBERSとは?